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「財政の見える化」で公会計制度改革! これからのお金の使い方は国民みんなで考えよう 竹谷とし子議員インタビュー

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公明党・竹谷とし子議員(左)と、One Voice Campaign原田謙介さん(右) / 写真:野原誠治
公明党・竹谷とし子議員(左)と、One Voice Campaign原田謙介さん(右) / 写真:野原誠治 写真一覧
「国の会計制度は民間企業の会計と違い、無駄遣いを防ぐチェック機能が弱すぎる」と話す竹谷とし子議員は、日本および海外で企業や公的組織などの経営改善を推進してきた公認会計士。2010年に参議院に初当選して以来、公会計制度改革の必要性を訴え、国や地方自治体の会計に複式簿記・発生主義会計を導入して「財政の見える化」をはかろうと主張しています。会計のプロの視点から、国の会計制度の問題点とこれからの社会保障制度について語っていただきました。(編集部:濱田敦子・大谷広太)

現金の出入りのみを予算・決算の中心にしている日本


原田謙介(以下、原田):竹谷さんは議員になる前、公認会計士のお仕事をされていたということで、今回は「国の会計制度」のお話しです。竹谷さんのホームページを見ると「民間企業のように、国も複式簿記・発生主義会計へ」と主張されていますね。日本は「単式簿記」を採用しているとのことですが、これは何が問題なんですか?

竹谷とし子(以下、竹谷):現金の入金や出金を記録する単式簿記は、家計簿やお小遣い帳をイメージするとわかりやすいと思います。それはそれで、お金の収支を把握する意味で必要ですが、それだけでは不十分なのです。企業の会計でいえば、これは、現金出納帳にあたるのですが、現場で使う補助的な帳簿のひとつに過ぎません。経営者が財務状況を判断するために使うのは、補助的な帳簿ではなくて、財政や経営状況の全体を見るためのバランスシート(貸借対照表)や損益計算書です。財政が良好ではない状態なのに、日本政府は、バランスシートをあまり見ないで、現金の出入りのみを予算・決算の中心にしていることが問題なんです。

今の日本の財政状態は、平成24年度の一般会計でいうと、出ていくお金(歳出)が約92兆円に対し、入ってくるお金(税収)が約42兆円。支出に対して収入が半分以下で、足りていません。その足りない分は主に国債を発行して借金でまかなっていますが、単式簿記の記録形式だけでは、1度お金が入ってくると、税収だろうが借金だろうが見分けがつきにくいのです。

原田:ん? どういうことですか?

竹谷:これを理解していただくために、ちょっと詳しくお話しますね。簿記って、お金の出入りの記録なんです。このお金の出入りの結果だけを記録するのが単式簿記、それに加えて、お金が増えたり、減ったりする原因も記録するのが複式簿記です。

単式簿記だと現金が増えたか減ったかという結果だけが記録されますから、借金をしての10万円と、お給料の10万円とが同じように「10万円現金が増えた」という記録になります。もちろん借金は借金として管理するんですけれども、お金に色はついていないので、残ったら使い切ってしまおうという発想につながりやすいんです。

これが複式簿記だとお金の出入りの結果だけでなく、原因も一緒に記録します。だから、10万円現金が増えました。でもその10万円は、借金して増えた場合は借金の10万円、お給料が入ってきた場合はお給料の10万円とすぐ分かるんですね。だからお金が残った時に、これは元々借金だから早めに返してしまおうとか、単純に残ったから使うのではなく、同じ10万円でも、もともとの原因が分かるので、使い方が変わってきます。

そのためのツールとして使うのが、先ほどお話した貸借対照表(バランスシート)という1枚の紙です。これを見ると、現金と借金(資産と負債)の現状が分かるんですね。

図1:バランスシートの例

これは左側が資産で、現金とか預金や不動産などの額を書きます。(図1参照)。 右側には反対に負債としていずれ返さなければいけない借金を書きます。
※本当はこれ以外に資本金などの純資産も入るのですが、分かりやすくするために説明を割愛します。




次に図2のバランスシートを見てみましょう。

図2:バランスシートの例

右側と左側を見比べてみて、左側に現金が20万円あったとしても、右側に借金が10万円あったら、今、手元に現金20万円あるけれども、将来、10万円借金を返さなくてはならないことが分かります。そうしたら、今使うのは10万円までにしておこう、とか、お金の使い方が変わりますよね。

原田:そうですね。借金ならできる限り使いたくないです。

竹谷:でしょう? 早く返そう、使うなら有意義に使おうってなりますよね。私が企業経営者の方に、「国は複式簿記をやっていない」というと、大変驚かれます。そして、あきれられます。それはそうですよね、国民には、税金の申告のために、間違いや不正を見つけやすい複式簿記・発生主義会計を採用することを要求しているのに、肝心の国がやっていないのですから、本当におかしな話です。

今の会計システムのままでも困っていない?


原田:なぜこれまで、ずっと単式簿記形式が続いてきたんですか?

竹谷:う~ん、明治以来ずっとそうなんですが、議員の多くが、国の単式簿記の問題点や、複式簿記の必要性を感じなかった、そして、それ以上に、官僚が感じてなかった、ということだと思います。公明党の先輩でもある若松謙維さんや、谷口隆義さんが、公認会計士として初めて国会議員になったのが平成5年。自公政権になり、お二人の取り組みもあり、平成15年度から、本来の複式簿記とは違う方法ではありますが、単式簿記の決算情報から組み替えで国のバランスシートが作成されるようになりました。これはホームページでも開示されています。その意味では、以前よりは前進してはいます。

表:平成22年度 国の財務書類 一般会計 バランスシート(貸借対照表)

原田:企業では当たり前のことなのに、国会に入ってみたら全くやっていなかったと。専門家が入って初めて疑問に思ったんですね。

竹谷:そうですね。しかし、まだまだの部分もあります。例えばこのバランスシートは年度が終わってから1年以上経ってからでないと、出来ないんですね。情報って、古いとあまり役に立たないですよね。

原田:決算情報はタイムリーじゃないと、使ってしまった後に「損しているなあ」って見るだけになってしまいますね。しかも、1年後……。

竹谷:一般的な企業の場合、月に1度は決算情報を出します。競争が激しいところは、もっと頻繁にチェックして厳しくやっていますよ。それが国家予算ともなれば、規模の大きな話なのですから、官僚の方にはしっかりコスト意識をもってもらわなくてはなりません。それには、事業単位でバランスシートを作って、常にチェックしておいてもらわないと。一方で国民も、自分が受けている行政サービスがいくらかかって成り立っているかを知る権利があります。国民にコスト情報を開示するためにも、複式簿記で管理する必要があると主張しているのです。

今の日本の財政法・会計法はドイツを手本に作ったと言われていますが、そのドイツが単式簿記なんです。でも、先進国で単式簿記を採用しているのは、ドイツと日本だけで、そのドイツも複式簿記を検討しているそうなんです。このままだと日本だけが取り残されてしまいますね。

原田:お話をうかがうと、なんですぐにやらないだろう?と素直に思ってしまうんですけど(笑)、実際に進まないのはどうしてですか?

竹谷:やはり、財務省はじめ官僚の認識不足が大きいと思います。私よりも前から公会計改革を推進していた前述の若松謙維さんが、2002年11月、当時の小泉総理に、「財政会計制度改革基本法案」を説明したところ、小泉総理は「非常に大事な視点だ。自分も同じ問題意識を持っている」と述べられたそうなんですね。そして、それを受けて、財務省主導の特殊法人等改革推進本部参与会議で説明をおこなった。でも、財務省主導のその会議の反応は冷ややかだったそうです。

10年前のことですから、その当時は、ここまで財政悪化が進むとは思わず楽観していたのかもしれません。財務省に公会計室ができて、今はその頃よりも、変えていかなければという意識が少し出てきているのでしょう、先ほどのバランスシートも以前より早く出るようになるなど、少しずつ変わって来てはいます。でも、実際に事業別に会計管理をしっかりやろうとすると、会計システムそのものを変える必要があります。私も民間企業の会計システムを刷新する仕事をやってきたので大変さがわかるんですけど、それが国ともなると、かなり大がかりなシステムの更新になるわけです。そして、業務のやり方も変えなくちゃならない。

原田:あと、新しいシステムの導入にコストもかかりそうですね。

竹谷:はい。しかし、今もメンテナンスだけで毎年莫大な費用がかかっています。新規システムの開発と、今のシステムのメンテナンス費を比べると、やり方によってはむしろ安くなる場合があります。東京都の会計システムがそうです。それよりも大きな問題は、100年続いた業務のやり方を変えなければいけないことで、国の会計業務をやっている人たちの多くが複式簿記をご存じないということですね。

原田:知らないというのは、官僚の方たちですか?

竹谷:官僚だけでなく役所で庶務業務を担当する方もです。導入するとなったら複式簿記・発生主義という会計のやり方を、たくさんの方に勉強してもらう必要がありますから。それと、行政に関わる人は法律に基づいて仕事をしているので、関係する法律も変えなければなりません。そして、その法律を変えるためには、議会制民主主義ですから、国会議員の過半数に賛同していただく必要があるので、理解して下さる議員を増やしていかなければなりません。

原田:少し話を聞いただけでも変えるべきだと思ったんですが、納得してもらえないんですか?

竹谷:私が委員をさせていただいている財政金融委員会で、この2年間、財務大臣に委員会質疑を通じて訴えてきました。必要性は理解していないわけではないのですが、官僚が用意した答弁で、「今のやり方でいい」と言ってしまうんですね。東京都は全国に先駆けて、既に複式簿記に切り替えているのですが、石原都知事の強いリーダーシップがあったというのが大きい。都の職員から抵抗する声が出ても「やる」と強い姿勢を示した。国でやるには、財務大臣と総理大臣のリーダーシップが必要です。

原田:トップダウンでガツンとやらないと進まないと。

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