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「アベノネクタイ」安倍首相の迷走ぶりは首元に表れている

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安倍首相はここぞというときに黄色のネクタイを締める。一方、アメリカのトランプ大統領は赤色だ。これにはどんな違いがあるのか。印象戦略コンサルタントの乳原佳代氏は「黄色には親近感を持たせ、コミュニケーションを円滑にする心理的な効果がある。しかし、コロナ対応の中でも重要な会見では赤色を選んだほうがよかった」という——。

左から4月7日、5月4日、5月14日、5月25日の記者会見で話す安倍首相。

左から4月7日、5月4日、5月14日、5月25日の記者会見で話す安倍首相。 - 写真=首相ホームぺージをもとにプレジデントオンライン編集部が作成

政治家の印象を左右するネクタイの底知れぬ力

皆さんは、毎朝ネクタイをどのような基準で選ぶのだろうか。今、ステイホームでネクタイを締めない生活を送っている方も多い中、政治家は連日、ネクタイを締めてテレビに映る。

われわれの生活を大きく左右する政治家の一語一句にクリティカルに耳を傾けると同時に、その政治家の表情や服装も視界に入り、ネクタイもその人の印象を左右する。今回は安倍晋三首相が、いかに戦略を立ててネクタイを締めているかを分析してみたい。

たかがネクタイごときが政権に影響を及ぼすのだろうか? 答えはYesである。

われわれは人の顔を見る時、必ず首元が視界に入る。ネクタイもまたしかり。ネクタイの色や形を情報としてインプットする視覚(目)は、非常に精巧な器官であり、瞬時に色や形といった膨大な情報を脳に伝達する。

色には、重さや軽さ、スピード、温度まで感じさせる力がある。また、他の色と組み合わせることで、より心地よく感じたり、不快感をも印象づけることができる。それだけ色には心理的に訴求するパワーがあるのだ。

アメリカではメッセージを効果的に伝えるため、ネクタイをも戦力としてうまく使いこなすのが、ケネディとニクソンが争った1960年の大統領選挙以来、常識となっている。

「XLサイズ、プラス2センチ」赤を多用するトランプ大統領

トランプ大統領を例に見てみよう。彼のネクタイといえば、鮮やかな赤のイメージが強い。人は赤い色を見た時、そこから連想される炎や戦いのイメージが浮かび、視床下部からの命令でアドレナリンが出てくる。すると、血圧が上がり、瞳孔が開き、発汗が始まり、その度を超すと戦闘態勢となる。

2018年9月24日にインスタグラムに投稿された安倍首相とトランプ大統領の写真。(写真=首相官邸Instagram)

2018年9月24日にインスタグラムに投稿された安倍首相とトランプ大統領の写真。(写真=首相官邸Instagram)

しかも、トランプ大統領のネクタイの長さは、アメリカのエクストララージサイズより、さらに2インチ長い特別サイズである。演説中のオーバーアクションと相まって、その姿はまるで旗をはためかし、民衆を煽動するかのように見えてくる。白人労働者階級の支持を得るのに成功したのも、ネクタイ込みのパフォーマンスがあったからに他ならない。

その一方で、対照的な青いネクタイを着用したこともある。今年3月11日に欧州の入国禁止を発令した時、4月5日にニューヨークでの感染拡大のペースが落ちた時、15日にピークを過ぎたと述べた際には、珍しく青のネクタイを締めていた。

青は、澄んだ空や水を想起させ、人をリラックスした状態へと導く。赤とは逆に、体を休めるホルモンを分泌させ、安心感を与えるのだ。国民に安らぎや安心感を与えると同時に、暴動や買い占めを避けるため、国民を「鎮静化」させる狙いがあったと見られる。

大統領と青いネクタイといえば、オバマ大統領もその恩恵に預かっている。彼が青ネクタイを締めていたのは、リベラルな印象を与えて国民を鎮静化させるためと言われており、最後には見事、ノーベル平和賞を受賞するに至った。

普段は安倍イエローで親しみやすさをアピール

話を安倍首相に戻そう。彼のネクタイといえば、黄色のイメージが強い。安倍首相のものまねをする芸人も黄色いネクタイを締めている。

実は、黄色には親近感を持たせ、人とのコミュニケーションを円滑にする心理的効果がある。私は安倍首相の長期政権に、この黄色ネクタイの効果は欠かせないと思うほどだ。

彼がよく用いる黄色は、色彩心理学的に明るく、気持ちを前向きにわくわくさせる効果がある。オリンピック招致出陣式もこの黄色ネクタイを締め、見事に東京開催を勝ち取った。ザギトワ選手に秋田犬のマサルを贈呈する時やG20大阪で関ジャニ∞と一緒のシーンでも、黄色ネクタイでカジュアル且つ親しみやすい雰囲気づくりに成功した。

また、黄色はゴールドを連想させて気品もあることから、各国首脳会談に選ばれることも多く、海外に広く発信されている。加えて、黄色はメラニン色素が多い日本人になじみやすい色のため、日本人に似合う色と言われている。

我々日本人は、「イエロー」と揶揄(やゆ)されてきた。そこで、かつて「黄禍」と恐れられたプライドとともに黄色ネクタイを締めることで、一定の年齢層や保守層に向けた一種の暗号のような絆を生じさせ、支持を得られているとも考えられる。

最重要会見で裏目に出た「紺に黄色のストライプ」

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発出後は、安倍首相が所有する数ある黄色ネクタイの中から、ソリッド(無地)のものと、紺地に黄色の斜めストライプのものがよく締められている。

黄色は進出色でもあるため、他の色より前に突出して見える。よって、この黄色から迫力を生み出し、より説得力を増そうとしているわけだ。同時に、信号にも使われる注意喚起の色でもあるため、人々の注目を集めるのにも効果的な色ともいえる。

4月7日に開かれた安倍首相の記者会見。

4月7日に開かれた安倍首相の記者会見。 - 写真=首相官邸ホームページ

しかしながら、4月7日の緊急事態宣言発出のような最重要級の会見では、この紺地に黄色のストライプでは、ビジネスマンのような印象や、2色の組み合わせから生じる人それぞれの感情など、視覚的に余計な情報が伴うと見受けた。

5月4日に開かれた安倍首相の記者会見。(写真=首相官邸ホームページ)

5月4日に開かれた安倍首相の記者会見。(写真=首相官邸ホームページ)

5月4日の緊急事態宣言延長に伴う会見では、薄い水色のソリッドなネクタイを着用していた。沈んだ寒色で、国民の苦悩を鎮静化させる狙いがあったのだろう。しかし、緊急事態を解除できないという深刻な状況を伝えるにはソフトな印象かつ落ち着き過ぎで、国民の逼迫(ひっぱく)した状況とは乖離(かいり)が見受けられた。

首相のお願いベースの外出自粛呼びかけに、国民はかえって憤りを感じたのではないだろうか? ネクタイの色は、両者の温度差を静かに、しかし確かに語っていたのだ。

国民は、アフターコロナ以降も共に戦う強いリーダーシップを求めている。首相の権威とパワーを最大限発揮するには、戦闘態勢を示す鮮やかな赤のソリッド、例えばトランプ大統領のようなネクタイがふさわしいのかもしれない。

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