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パチンコ店幹部に先行きが心配かと聞くと、笑って首を振った

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新型コロナウイルスの感染拡大防止に配慮しつつ営業するパチンコ店(時事通信フォト)

パチンコ店を訪れる客も新型コロナウイルス対策でマスク姿(Sipa USA/時事通信フォト)

1995年、阪神大震災の被災を免れたパチンコ店は大盛況(時事通信フォト)

1980年代のブームで全国にパチンコ店が激増。高知市には女性専用パチンコ店もできた(時事通信フォト

 全国で緊急事態宣言が解除され、様々な店舗が営業を再開し始めた。密閉、密接、密集の「3密」が起きやすい場所のひとつとして、営業自粛を求められていたパチンコ店も、自治体や規模によって少しずつ時期は異なるが営業が始まっている。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた俳人で著作家の日野百草氏が、休業を選び「私たちの勝ちですよ」と言った47歳パチンコチェーン店幹部が考えるコロナ後についてレポートする。

 * * *

「私が言った通り、日常が戻ります。首都圏も時間の問題です。パチンコの自粛話なんて、やがて誰もしなくなるでしょう」

 39県で緊急事態宣言が解除され、明るい兆しがほんの少し見え始めた5月中旬、千葉県柏市。柏駅周辺も以前よりは人出が戻りつつあった。私の実家の野田市から東武線で20分ほど、私の10代はこの柏とともにあった。四半世紀も前、柏駅前の柏マルイと、その地下のゲーセン、通称「マル地下」。そこに集まるイケてない高校生、私たちオタク集団の中に、西口真ニさん(仮名・47歳)もいた。彼は関東の地場のパチンコチェーン幹部。ようやくつながった電話、待ち合わせはもちろん柏。西口さんも私も柏の人ではないが、やはり東葛地域に生まれたからには「集まるのは柏」なのだ。

「うちのホールは大丈夫ですけど、地域によるみたいですね、営業再開しても駄目なとこはとことん駄目と聞きます」

 にぎやかなはずのマル地下はシャッター街となっていたが、かつての馴染みのそば屋はこのコロナ禍にあっても頑張って営業を続けていた。金持ちの家の子だった西口さんにこの店でよくおごってもらった。渋い高校生だ。昔も今も、同い年なのにオタクにあるまじき貫禄だ。

「でもね日野さん、大手以外、ホールがどこも厳しいのは今に始まったことじゃない。それは日本のエンタメすべてに言えることですが、淘汰は加速するでしょう。でもパチンコ業界の場合は少し違う」

 西口さんはそこまで話すと、さてどこからどこまで話そうか?と尋ねてきた。私がパチンコのことを全然知らないし打ったこともないので、突っ込んだ話をしていいかということだ。読者は詳しい人が多いから単語はきっちり拾うだろうし、気にしなくていいと答えた。もちろん専門誌ではないので噛み砕いたり一般的な言葉に置き換える、とも付け加えた。

「パチンコやパチスロってのは、私たちホール経営の側がいっぱい出してあげよう、お客さんを大当たりにしてあげようと思っても自由にはならない決まりです。日本のギャンブルは全部そうですが、とくにお上はパチンコには厳しい」

【写真】パチンコ入店時にマスクが必須に

 西口さんによれば、2000年代のパチンコ市場の売上は30兆円くらいあったそうだ。ちょうどコロナによる国の緊急経済対策が30兆円、日銀の資金供給策も30兆円、世界のトヨタ自動車も2020年3月期決算の売上高が30兆円くらい、市場規模だけ見れば、アミューズメント産業としてはとんでもない優等生だったことがわかる。ちなみに日本のアニメ市場は2兆円産業、ゲーム市場は1兆円産業と言われるが、アニメはもちろん、ゲーム業界すら、任天堂やソニーはもちろん、あらゆるソシャゲ、ゲーセンが束になってもこのくらいである(2018年は1兆4000億円)。アニメもかつては1兆円程度だったが海外展開で倍増した。外需こそが低迷し続ける日本の景気を支えてきた。

「パチンコも30兆円を誇ったのが、いまでは20兆円産業です。全盛期の3分の2ですが、実質的にはもっと少ないんです。だって日野さんが挙げたトヨタやアニメやゲームというのは売れたら売れたで純粋に売上ですが、パチンコって当たり前ですけどお客さんに返さなきゃいけない分があるんです。ホールの粗利ってみなさんが思うよりずっと低い。意外と戻してるんです。よく言われる市場規模ほどには裕福じゃないんです」

 なるほど、実質的にはギャンブルなわけで、全部ホールの売上というわけにはいかないだろう。現在のパチンコホールの粗利率は、「遊技場データブック2019」によると2018年平均で16.3%。業種別にみると、製造業がおおよそ50%、コンビニが30%で、パチンコホールと同程度の粗利率となると卸売業がそれに近い(約15%)。一般的なイメージよりも、パチンコホールはぼろ儲けしているわけではないことが分かる。当たった分は戻す、当たり前の話だが、仮にそうだとしてもなんだかんだ他の内需産業に比べれば儲かっているのだから凄い話だ。「レジャー白書2019」によれば、日本の余暇市場でパチンコ産業はいまだに全体の3割近くを占めている。またこれは意外と知られていないが、パチンコ産業の雇用数は22万人で日本の自動車産業主要10社国内単体でのそれを上回る。好き嫌いはともかく一筋縄ではいかないほどの巨大産業だ。しかし西口さんによれば個々のホールはそんなことを誇っていられない事情があるという。

「パチンコもパチスロもそうですが、ずっと同じ機種を置くことは出来ません。これは人気があるとかないとか関わらず、一企業が莫大な設備投資で導入した遊技機を、使えようが人気があろうが捨てなきゃならんのです。みなし機と言うんですが、だいたい3年、粘って6年かな、撤去しなければならない。もちろん厳密に守ってるとこなんて大手や大都市のホールはともかく少ないですけどね、千葉の田舎じゃまあ、のらりくらりです。かといって完全無視というわけにはいかないわけで」

 パチンコ台には設置期限がある。ましてそれには射幸性の高いみなし機、低いみなし機で差がついているという。大枠以外はあくまで自主規制なので多少の無視は可能らしい。たとえば甘デジ(当たりやすいデジパチ)はいまだに稼げる台のため、西口さんのホールも本音では撤去したくないという。そんな台でも昔に比べればかつての一撃大当たりの夢もなく、ギャンブルとしての魅力は以前ほどではないそうだ。出玉の確率も上限も、がんじがらめの規制下にあるのが現状だ。

「その他にも行政による広告出稿の規制や改正健康増進法の全面禁煙とか、コロナ関係なく厳しいわけです。まして来年の1月にはさっきお話した旧規則機の撤去をしなくちゃいけない。これはコロナのおかげで1年延期になりましたが、そもそも入れ替えようにも台のほとんどは部品を海外に頼ってますから、供給という点でも無理な話でした」

 西口さんは経営幹部とはいえ地方の一企業の役員でしかない。彼の言葉が業界すべてを語っているわけでもないし語れるはずもない、それは西口さんも前もって断りを入れている。が、私が思っていた以上に、パチンコ業界というのがネット界隈での評判のみならず、コロナ以前から四面楚歌だったことは確かだろう。

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