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虎ノ門ヒルズ駅開業で乗り換え活用の「新しい生活様式」も

東京メトロの日比谷線新駅「虎ノ門ヒルズ」の駅名看板(提供:東京メトロ、時事通信フォト)

改札外乗り換えの時間拡大を周知するために、東京メトロが配布しているチラシ

虎ノ門ヒルズに直結した日比谷線駅「虎ノ門ヒルズ駅」が誕生する(時事通信フォト/朝日航洋)

1964年8月、全線開通して間もない地下鉄日比谷線銀座駅のホーム(時事通信フォト)

 前回の東京五輪が開催された1964年に開業した東京メトロ日比谷線に、新駅「虎ノ門ヒルズ駅」が開業する。この開業と同時に東武伊勢崎線久喜と恵比寿を結ぶ「THライナー」が話題だが、利用者にとっては都内の地下鉄乗り換え時間が長くなることのほうが、地味だが影響が大きいだろう。ライターの小川裕夫氏が、虎ノ門ヒルズ駅開業に伴う変化についてレポートする。

【写真】改札外乗り換えが30分→60分へ

 * * *

 今年3月14日、山手線では約半世紀ぶりの新駅となる高輪ゲートウェイ駅が誕生した。新型コロナウイルスの影響から開業式典は取り止めになり、駅前広場の整備も完了していない。そうした中途半端な状態ではあるものの、高輪ゲートウェイ駅には多くの注目が集まった。

 高輪ゲートウェイ駅に関する話題は多岐にわたる。山手線という日本を代表する路線なのに斬新すぎる駅名は、駅名決定の発表時から賛否を呼んだ。また、報道公開時には駅名標が明朝体で描かれていることが判明。それらも耳目を集めた。

 高輪ゲートウェイ駅のほかにも、今年に開業予定の注目すべき駅がある。それが、東京地下鉄道(東京メトロ)が6月6日に新規開業させる虎ノ門ヒルズ駅だ。

 虎ノ門ヒルズ駅は高輪ゲートウェイ駅と似たようなネーミング意図を感じさせる。それでも、高輪ゲートウェイ駅ほどの非難の声は目立っていない。裏を返せば、それだけ高輪ゲートウェイ駅への関心が高かったということでもある。

 高輪ゲートウェイ駅に比べると話題性に劣る虎ノ門ヒルズ駅だが、東京の交通全般を劇的に変える、これまでの鉄道利用の概念を覆す可能性を秘めた駅でもある。

 2006年に竣工した六本木ヒルズをはじめ1990年代後半から現在にかけて、森ビルは東京の一等地に高層ビルを次々と竣工してきた。そのため、森ビルはあたかも高層ビルの代名詞のような存在にもなった。そして、本拠地でもある虎ノ門に森ビルは念願だった虎ノ門ヒルズを完成させた。

 単に都心に立つシンボリックな高層ビルというだけではない。虎ノ門ヒルズは立体道路制度を活用し、東京都が長年の悲願としてきた環状2号線全通の道筋をつけた。

 2014年に開業した虎ノ門ヒルズは、隣接するビジネスタワーにバスのターミナルを整備。このターミナルは2020年に開催予定だった東京五輪をにらみ、中央区晴海などへとアクセスするBRT(バス高速輸送システム)や空港のリムジンバスが発着する。新型コロナウイルスによって延期が決まったが、本来なら五輪を支える交通のハブになる施設だった。

 つまり、虎ノ門ヒルズ駅は東京メトロ日比谷線に新駅が開業するというだけの影響にとどまらず、バスターミナルの整備、そして環状2号線の開通といった東京の交通網全般を大改造する触媒になるものだった。

 虎ノ門ヒルズ駅が果たす役割は、目に見える交通網体型の変化だけではない。虎ノ門ヒルズ駅の開業日と同じ6月6日から、東京メトロが定めていた改札外での乗り換えルールが変更される。これも、地味に大きな変化だ。

 東京メトロは、東京都の中心部に9路線、全長で約195キロメートルを有する。これだけ大規模な路線を有しているので、電車一本でたいていの目的地まで行くことができる。仮に一本で行くことができなくても、他路線に乗り換えれば大抵の場所まで行くことが可能だ。東京メトロの路線ならば、電車を乗り換えても運賃は通算の距離で算出される。他路線に乗り換えても、初乗り運賃を払う必要はなく、きっぷを買い直す手間もない。

 通常、東京メトロの路線を乗り換える場合は改札内の通路を使ってホームを行き来する。しかし、東京メトロには、構造上の理由から改札内でホームをつなぐことができなかった駅もある。そのため、乗り換えのために改札をいったん出なければならない駅がいくつかある。いったん改札を出る乗り換えは、改札外乗り換えと呼ばれる。

 新たに開業する日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅は、銀座線の虎ノ門駅と約400メートル離れている。駅名も異なっているが、東京メトロは虎ノ門ヒルズ駅と虎ノ門駅を乗換駅に設定した。両駅間は地下通路で結ばれているが、乗り換えるには改札外へいったん出る。つまり、改札外乗換駅になっている。

 虎ノ門ヒルズ駅と虎ノ門駅は約400メートル離れている。これで乗換駅なのか?という疑問もあるだろうが、東京メトロにはそれを上回る改札外乗換駅がある。

 半蔵門線の水天宮駅と日比谷線の人形町駅、有楽町線の新富町駅と日比谷線の築地駅などは、通路でつながってさえいない。両駅間で乗り換えるには、いったん地上に出る必要がある。改札外乗り換えは、慣れていないと大いに戸惑う。特に、いったん地上に出る乗り換えは混乱必至だ。

 東京メトロのほか、札幌市営地下鉄、OsakaMetro、神戸市営地下鉄、福岡市営地下鉄にも改札外乗り換え駅はある。福岡は改札外乗り換えの適用時間を120分に設定するなど、乗り換えというよりも途中下車のような設定をしている。

 東京メトロの改札外乗換駅はいたるところにある。他都市の地下鉄と比べ、その数は桁違いに多い。

 そして、東京メトロは虎ノ門駅ヒルズ駅の開業と同時に、改札外乗り換えの時間を30分から60分へと拡大することを発表した。

「改札外乗り換えの時間を60分に拡大することに決めたのは、お客様の利便性を向上することを目的にしているからです」と拡大の背景について話すのは、東京メトロ広報部広報課の担当者だ。

 東京メトロと歩調を合わせるように、都営地下鉄も改札外乗り換え時間を60分に拡大させる。改札外乗り換えを60分に拡大するのと同時に、東京メトロは有楽町線の銀座一丁目駅と銀座線・丸ノ内線・日比谷線の銀座駅を乗換駅に追加設定した。

 銀座一丁目駅と銀座駅は、いったん地上に出る改札外乗り換えだ。銀座一丁目駅と銀座駅が乗換駅になったことで、乗り換えの際に銀座の街に寄り道することもできるようになった。

「従来の30分から60分へと拡大したことで、駅周辺の立ち食いそば屋やファストフード店に寄って食事をすることができるほか、時間的に百貨店やコンビニに寄ってちょっとした買い物をすることが可能になりました。東京メトロは改札外乗り換えの途中で食事や買い物を推奨しているわけではありませんが、禁止しているわけでもありません。とにかく、利用者の利便性を向上するための措置です」(同)

 改札外乗り換えの時間が30分から60分に拡大したことは、虎ノ門ヒルズ駅開業だけを意識したものではない。しかし、これまで東京メトロが頑なに守ってきた改札外乗り換え30分というルールを、虎ノ門ヒルズ駅開業と同じ日に変更することを踏まえると、虎ノ門ヒルズ駅がきっかけになったことは否定できない。そこには東京メトロが虎ノ門ヒルズ駅に並々ならぬ思いを込めていることを感じさせる。

 虎ノ門ヒルズ駅の開業によって、バス・道路・鉄道といった東京の陸上交通全般は大きく変貌するだろう。そして、改札外乗り換えの有効活用という、”新しい生活様式”が生まれる可能性も秘めている。

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