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元慰安婦団体が内部分裂したのはなぜか?「韓国の聖域を“操縦”する女性活動家たちの実像」研究者現地インタビュー - 「文春オンライン」特集班

 元慰安婦たちは運動家に“操縦”されていたのです――。そう語るのは、日韓でベストセラーとなった『反日種族主義』の共著者で、韓国近現代史が専門の研究者、朱益鍾(チュ・イクチョン)氏だ。

【画像】尹美香氏を批判した元慰安婦の手を引く文在寅大統領

 韓国社会を揺るがしている、元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の寄付金などをめぐる一連の不正疑惑。5月29日には、正義連前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏が会見で疑惑を全面的に否定したが、検察の捜査は続いている。


疑惑について会見する「正義連」前理事長の尹美香氏(5月29日) ©AFLO

 韓国で不可侵の“聖域”とまで言われた元慰安婦支援団体で何が起きているのか。同書で挺対協についてのパートを執筆した朱氏に聞いた。

◆◆◆

「日本からお金をもらったら公娼と同じだ」

――今回の正義連をめぐる騒動をどう見ていますか?

 正義連とその前身の「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)の本当の姿が、人々に伝わる重要な局面だと思います。数々の疑惑から、韓国国民が「正義連は本当に元慰安婦の名誉を回復し、傷を癒すことが目的の団体なのか」と疑問を抱く機会になりました。それまで韓国では、彼女たちに疑問を持つ機会すらありませんでしたから。

――一連の疑惑は、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏の告発から始まりました。元慰安婦たちと正義連は一心同体ではなかったのでしょうか?

 1990年11月に挺対協が設立された時点では、元慰安婦のハルモニ(おばあさん)たちと、女性活動家たちの関心事は一致していたように外部からは見えました。

 とはいえ、両者の背景は大きく異なっていました。挺対協に集まった支援者は、社会学者や女性活動家などのエリートで、名門の梨花女子大出身者が主導していた。高齢のハルモニたちの意見より、活発なエリート運動家たちの要求が優先されるようになっていったのは当然の成り行きでしょう。

 会社に例えるなら、元慰安婦が「株主」で、女性運動家は雇われた「経営者」。本当の会社なら株主総会で株主が経営者を選ぶ機会がありますが、挺対協にはそんな機会はない。そうなると、経営者は株主の利益を追求しなくなっていきますよね。いつの間にか運動家が、元慰安婦を率いていく形に逆転してしまったのです。

――李容洙氏も会見で「挺対協が30年間、自分を利用してきた」と発言しています。

 ハルモニの中でも、李容洙氏はとても政治性の強い方なんです。「彼女は運動家になった」と言う人もいたほどで、元慰安婦のハルモニの中でも積極的に活動していた。ですから、「李容洙氏が善で、尹美香氏が悪」という簡単な話ではありません。李容洙氏は挺対協と一緒に最前線で慰安婦運動に参加して、アメリカの議会で演説までした尹氏の同志です。

 ただそんな彼女ですら、尹氏に対して「利用された」と発言せざるを得ない状況だったとも言えます。

 過去にこんなことがありました。「アジア女性基金」が1995年に作られたとき、日本側が元慰安婦のハルモニたちにお金を受け取ってもらえるように説得していました。その結果、97年1月には7人のハルモニがお金を受け取った。ハルモニたちは高齢で、この問題に恨みを持っていても「ある程度の線で自分の要求が解決されればいい」という思いもあったのです。ところが挺対協は、彼女たちを非難した。「そのお金を受け取れば日本政府に免罪符を与える」というのが理由です。

 そのとき、当時の挺対協の共同代表だった尹貞玉(ユン・ジョンオク)・梨花女子大教授の言葉が忘れられません。

「アジア女性基金のお金をもらう人(ハルモニ)は、自ら進んで出かけた公娼であることを認めることと同様だ」

 そこまで侮辱的な発言をしたのです。そんな風に糾弾をされたら、ハルモニたちは、慰安婦運動家たちの論理に合わせて動かざるを得ないですよね。97年の時点で、すでに元慰安婦と女性活動家の関係が主客転倒していたのです。

 その20年後にも同じ事態が起きました。2015年に朴槿恵大統領と安倍首相との間で交わされた慰安婦問題についての日韓合意のときです。この合意でも当時生存していていたハルモニたち47人中34人がお金を受け取っていました。支給を担当した「和解・癒やし財団」は慎重に作業をしていて、ハルモニたちに個別に接触し、一人一人の意思を確認して支給しました。

 しかし、挺対協はこのときもまた、お金を受け取った人を「罪人」のように扱った。メディアも、少数でも声の大きい挺対協に同調するハルモニを取り上げるので、あたかも合意反対派が多数派のように報じました。結果として、挺対協という一民間団体が拒否したことで、合意そのものも無力化されてしまいます。

 そうやって元慰安婦たちは、運動家の主張を代弁させられていった。いわば、挺対協の活動のために“操縦”されることになったのです。 

正義連は文在寅政権の“大株主”

――文在寅大統領と正義連は、どのような関係ですか? 

 正義連は、文大統領と与党「共に民主党」を支えている利益集団、もしくは圧力団体の一つです。韓国の最大の労働組合である全国民主労働組合総連盟(民主労総)、日本の日教組に相当する全国教職員労働組合(全教組)などと並んで、政権の“大株主”とも言えます。

 慰安婦や韓日関係についても、挺対協と文在寅政権の問題意識は同じだと思います。つまり、慰安婦問題を拡大させて韓日関係を危うくしたいのです。

 先に触れた2015年の日韓合意は、朴槿恵政権下で行われましたが、合意後の実務を担う「和解・癒やし財団」を解散させたのは、文在寅政権です。挺対協が無力化した日韓合意への“最後の一撃”でした。この解散によって、合意は事実上破棄されたことになりました。

 国家の姿勢として大きな問題なのは、「事実上」の破棄であって、公式には破棄していないことです。破棄を宣言もしないし、再交渉の要求もしない。慰安婦問題を元の状態に戻して、問題が悪化すればいいと思っているのでしょう。

――文在寅政権で、慰安婦問題が前進することはあるのでしょうか?

 そもそも慰安婦問題の解決は、左派政権下ではできないと考えます。左派の盧武鉉政権でも金大中政権でも、日本と慰安婦問題を解決するための交渉はしなかった。交渉を放置して、解決されていない状態を継続することで、国民を「反日」に駆り立ててきたのです。

 本来、文在寅政権は4月の総選挙で圧勝し、やりたいことは全部できる政治情勢なのです。にもかかわらず、正義連も一連の疑惑前に政府に「慰安婦問題を解決せよ」と強く要求する様子もなかった。これまでの左派政権と同じです。実際に慰安婦問題が動くとしたら、やはり政権が変わらなければならないと思います。

正義連は「慰安婦問題の解決に関心がない」

――正義連の最大の罪は何だと思いますか?

 いま挺対協の資金横領について社会が沸き立っていますが、私はこの団体の本当の害悪はお金のことではなく、慰安婦問題を掲げて韓日関係を麻痺させ、危機に追い込んだことだと思います。韓国人が持つ「反日」感情の大きな部分が、この慰安婦問題を通じて形作られていますから。

 1995年の「アジア女性基金」、2015年の「日韓合意」と2度にわたって韓日政府が苦労をして作った合意を「反日」扇動を通じて無効にし、韓国国民に日本が過去の歴史に対して謝罪しないかのような認識を植えつけました。この経緯をみれば、正義連はすでに「慰安婦問題の解決に関心を持っている団体ではない」と分かると思います。

――韓国メディアの責任については、どのように考えますか?

 ある韓国紙が、正義連は「神聖な権力集団」になったと指摘したことがありましたが、正義連にも尹氏自身にも、「誰も私たちには手をつけられない」という驕りがあったのでしょう。戦時中に受難を経験して、やっと告発者として立ち上がったハルモニたちを前面に出している運動に対して、誰でも異議を唱えにくい。その状態が長く続いてしまい、誰も批判できない団体になっていたのです。 

 本来はメディアが監視すべきでしたが、もし問題点を指摘したら社会全体から非難の“じゅうたん爆撃”を受けることになる。正義連が持っている権力は、そんな「世論の権力」でもあったのです。

韓国人の意識は変わるのか?

――今回の疑惑で韓国人の慰安婦問題への意識は変わっていくのでしょうか?

 いま韓国社会は、正義連の会計の透明性を高め、運営を改善すれば、全ては解決するだろうというムードです。しかし、それは間違いです。会計だけ透明化しても、慰安婦運動が正当性を持つわけではないからです。

 韓国メディアは、いまだに挺対協を恐れて、運動自体を批判することは躊躇しています。しかし、彼女たちの慰安婦運動が本当に慰安婦のためのものではなく、韓日関係を仲違いさせるための政治運動である点を追及して、韓国国民にしっかりと知らせてもらいたいです。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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