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食品添加物についての補足

前回のエントリにおいて、説明不足のために誤解を生じている部分があるようでしたので、あらためて食品添加物や無添加について補足を行います。


食品添加物とは

「消毒に使われる塩素は食品添加物ではないのでは?」という意見を頂戴しました。たしかに、一般的に認識されている食品添加物といえば保存料や着色料、pH調整剤などになるでしょう。それらは食品表示にも記載されています。しかし、食品添加物とはそれらばかりではありません。食品添加物の定義について、食品添加物協会のQ&Aでは次のように解説があります。*1

Q1 食品添加物とはどういうものですか?

A 食品衛生法では、食品添加物とは、食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するものと定義されています。


これだけではちょっとわかりにくいかもしれませんが、食品を製造する際に使われる食品以外のものは全て食品添加物とも言えるでしょう。日本では、使用できる食品添加物は厚生労働省が指定したものしか使用することができません。*2 *3 それ以外の食品添加物を使用することは違反です。そして、それらの添加物の中には消毒に用いられる次亜塩素酸ナトリウムなども指定されています。他にも、ろ過助剤やイオン交換樹脂なども指定されています。それらは当然製造途中で取り除かれるなどして食品に残ることはありません。それでも、食品の製造に使用するものは所定の手続きを経て認められたものでしか使用できないのです。例えば、最近では食品の殺菌に次亜塩素酸ナトリウムの替わりに、電解水が使用される場合があります。電解水は成分としては次亜塩素酸ナトリウムと同じと言えます(正確にはいくつか種類があるので違うものもある)。しかし、それでも申請から実際に認められるまで数年を要しています。*4 次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物以外にも漂白剤などとしても使われています。それでも、食品向けには食品添加物としての基準を満たしたものを使用する必要があります。それだけの管理を行うのは、飲食において人の健康をそこなうことが無いようにするためです。食品添加物以外のものでは主成分以外の成分や不純物などが健康被害を起さないとも限りません。それだけの管理を行うことには意味があるのです。


無添加とはなにか

消費者庁の加工食品品質表示Q&Aには、無添加の表示について次のように記載があります。*5

問31 食品添加物に対する消費者の関心に応えるため「食品添加物は一切使用し ていません」「無添加」などと表示をすることはできますか。

  1. 通常同種の製品が一般的に食品添加物が使用されているものであって、当該製品について食品添加物を使用していない場合に、食品添加物を使用していない旨の表示をしても差し支えないと考えます。ただし、加工助剤やキャリーオーバー等のように食品衛生法第19条第1項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令の規定 により表示が免除される食品添加物を使用している場合には、食品添加物を使用していない旨の表示をすることはできません。また、「無添加」とだけ記載することは、何を加えていないかが不明確なので、 具体的に記載することが望ましいと考えます。
  2. また、同種の製品が一般的に食品添加物が使用されることがないものである場合、 食品添加物を使用していない旨の表示をすることは適切ではないと考えます。

また、食品添加物協会は無添加の表示について、次のような見解を示しています。*6

2.「無添加」表示食品に対する懸念

食品添加物を使用しない食品を望む一部消費者向けの商品として開発、販売されている経過があると考えられるが、その表示の多くは、

1)その食品の加工工程全てで食品添加物を使用していないのか、必ずしも明確でない場合が多く、消費者に不正確な情報を与えて正しい選択を損なう

2)食品添加物使用の意義、有用性あるいは安全性に対する誤解をまねくとともに、食品添加物を用いた加工食品全般に対する信頼性を低下させるおそれがある。

表示は事実を、誤解を招かない様に記載しなければならないが、国際食品規格(Codex) においても、同様のことが求められている。


そもそも、一般家庭においても完全な無添加で食事を作ることは困難です。砂糖や油を料理に使った時点で食品添加物の恩恵をうけているのです。しかし、無添加や不使用というのは都合の良い部分だけを強調しています。もちろん、安全性をそこなわずに食品添加物を使用しないことが可能であればそうすればいいと思います。しかし、それを過度に強調することで、食品添加物を適切に使用したほうが良い食品に使うことを躊躇わせているとしたらどうでしょうか。


食品の危害管理と食品添加物

「昔の食品には食品添加物など使われていなかった」といった声を耳にすることがあります。では、昔の食品と今の食品の違いはなんでしょうか?食品の安全性のことに限定して考えると、安全性の確保する手段の豊富さといえると思います。

食品を保存するには、いくつかの方法があります。例えば、乾燥させる、塩漬けにする、酢につける、発酵させる、密封して加熱する、冷蔵するなどです。それらの手段を複数使用することも可能ですが、昔の食品は、どれか1つの手段で保存性を持たせることがほとんどでした。例えば、乾燥や塩蔵です。乾燥して保存性を高めていたのは例えば棒鱈です。微生物の増殖には水分が必要ですが、極端に乾燥させることで腐りやすい食品を長期保存させることが可能です。しかし、棒鱈を食べるためには長い時間をかけて水戻しする必要があります。高野豆腐や豆なども乾燥状態から食べるまでには時間を要します。同じことは塩蔵品にも言えます。昔の保存食は、再調理せずにすぐ食べることは難しいものが多くありました。しかし、現代では複数の方法を組み合わせて保存性を持たせることを可能にしています。味付けによる水分活性、pH調整、冷蔵による温度管理などです。組み合わせることで、一つ一つの効かせ方は弱くできます。しかし、家庭で調理する食品に近い状態で、そのまま食べられるように提供することを可能にしています。これは一般には「ハードル理論」と呼ばれるものです。ハードルをいくつも用意することで微生物の増殖を抑えるという考え方です。しかし、そのハードルの列に綻びが生じると、その防護をすり抜けて食中毒の発生を許してしまいます。

どのようなハードルを用意するか、それぞれのハードルの高さをどのように設定するかは食品によっても異なります。また、同じような食品でも複数の企業があれば複数の考え方があり得ます。

そのなかで食品添加物はどのように働くのでしょうか?例えばpH調整剤は食品を「薄い酢漬け」にするような役目があります。それだけでは食品の危害を防止することはできませんが、他の手段と合わせて保存性を向上させます。

食中毒の防止には「食中毒菌をつけない、増やさない、殺す」の3つが重要だと言われています。しかし、食中毒菌が原料の時点で付着している可能性がある場合は、はじめの「つけない」ではコントロールできません。そこで、「増やさない、殺す」が重要になります。「増やさない」では、先ほどのpH調整剤などが重要になります。そして「殺す」です。加熱する食品では加熱工程こそ殺すための重要な工程なのです。しかし、非加熱の食品では原料の洗浄・殺菌が唯一の「殺す」工程であることもありえます。その場合には洗浄殺菌工程で使用される食品添加物こそが食品の安全性を左右する最大の鍵となりうるのです。

*1:日本食品添加物協会 添加物Q&A http://www.jafa.gr.jp/qa/index.html

*2:指定添加物リスト(規則別表第1) http://www.ffcr.or.jp/Zaidan/mhwinfo.nsf/0/407593771b8750e94925690d0004c83e?OpenDocument

*3:既存添加物名簿収載品目リスト http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/c3f4c591005986d949256fa900252700

*4:酸性電解水(「次亜塩素酸水」)の食品添加物指定までの経緯 http://kyoden.fwf-aew.jp/shokutenn/keii.htm

*5:加工食品品質表示基準Q&A (第1集) http://www.caa.go.jp/jas/hyoji/pdf/0717_3qa.pdf

*6:「無添加」表示に対する見解 http://www.jafa.gr.jp/kyokai/images/kyoukai12_mutenka.pdf

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