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李明博韓国大統領と野田佳彦日本国首相の「言葉」から見えてくるものとは?

前回に続き「竹島の問題」について考えたい。
韓国の李明博大統領は竹島に上陸したり、そこに石碑を建てたり、外交慣習を無視して親書の受け取りを拒否したりした。
李大統領のこうした言動には、実はそれなりの背景がある。

今年の7月、李大統領の実兄である李相得前国会議員が不正疑惑で逮捕された。
さらに側近の崔時仲前放送通信委員長も4月にスキャンダルで逮捕されている。
一方、国内政治はというと、サムスン電子など大企業の業績はいいが、中小企業の景気は悪化。
所得格差も拡大する一方で、公式の雇用統計には表れないものの潜在失業率もきわめて高いとされ、いま李大統領の人気はガタ落ちしている。
韓国国内で追いつめられているのだ。
韓国には、日本の嫌がることをすれば人気が高まるという伝統がある。
李大統領も伝統にのっとって、今回のような嫌がらせをしているのだろう。

ここで、もう少し考えてみたい。
もし今年12月の大統領選挙に出馬するのなら、李大統領のこれらの行為は、自分の人気を回復するためといえるだろう。
だが彼は大統領選に出ない。
韓国大統領の任期は5年、1期かぎりと決まっているからだ。
では、李大統領は何をしようとしているのか。

彼は大統領を退いた後のことを考えているのだ、と僕は思う。
それというのも、韓国の歴代大統領は不幸な運命をたどっているからだ。
たとえば初代大統領の李承晩さんだ。
彼の政権末期には大統領退陣を求める全国的なデモが起き、結局ハワイへ亡命し、客死している。
次の朴正煕大統領は、韓国の奇跡的な経済発展である「漢江の奇跡」を実現させたが、在任中に暗殺されている。
朴大統領から1代おいて大統領になった全斗煥さんは、任期をまっとうした。
しかし、退任後に逮捕され、死刑判決を受けている。(後に減刑され、特赦された)
次の盧泰愚大統領も、やはり退任後に懲役刑を受けている。
次の金泳三大統領の後を継いだのが、南北首脳会談を実現してノーベル平和賞を受賞した金大中大統領だ。
彼は逮捕こそされなかったが、北朝鮮への違法送金の疑惑を取り沙汰された。
その後、関わったとされる財界人が自殺している。
その次を継いだのが、前大統領の盧武鉉さんだ。
彼の場合も、退任するや親族や側近が相次いで贈賄容疑などで逮捕された。
そして自身は、事情聴取の1カ月後に自殺したのだ。

このように歴代の大統領の行く末をみると、李大統領の実兄や側近の逮捕は、彼への包囲網が狭まっていると考えても不思議ではない。

僕はかつて、岸信介元首相にこんな話を聞いたことがある。
朴正煕さんが大統領になる前に、韓国で軍事クーデターを起こして国家再建最高会議議長になったときのことだ。
朴さんは来日して、岸さんにあるお願いをしてきたそうだ。
そのお願いとは、スイスの銀行を紹介してほしいということだった。

初代大統領の李承晩さんが亡命したのを、朴さんは目の当たりにしている。
だから、もし失脚することがあったら、自分も身を守るために亡命するしかない。
そのためにはお金が必要だから、スイスの銀行にお金を貯めておこうと考えたのだ。
その話を聞いて岸さんは、「日本では首相を辞めた後に逮捕された例はない。暗殺もない。韓国で大統領になるのは命がけだ」といっていた。
韓国では、大統領になるのに決死の覚悟が必要らしい。

李明博大統領がソウル市長だったときに僕は会って話をしたことがある。
そのとき彼はしきりに次のように語っていた。
「韓国と日本は仲よく手を結んでいかなければならない。そうしなければ日韓の未来はない」
その李大統領が「懸命」に日本の嫌がることをたて続けにやっている。
人気取りなどといった理由ではない。そうとう身の危険を感じているからだ。

一方、日本の政治家はどうだろうか。
李大統領が退任すれば日韓の緊張関係は改善されると考えている政治家が多いようだ。だからその発言に真剣味が感じられない。
また、「毅然とした態度で臨む」と口では勇ましいことをいっているが、本気でそう考えているのか。
「国際司法裁判所に提訴する」というのもパフォーマンスにすぎないのではないか。
なによりも、野田首相自身の発言に真剣さが感じられないのだ。
語気は強いが、言葉自体は軽く、空虚にさえ思える。
外交問題にかぎった話ではない。消費税増税のときもそうだった。
いまの政治家の言葉からは迫力が失われてしまった。

言葉は、政治家にとってもっとも大切なものである。
政治家の仕事は、言葉によって国民の信頼を得て、それを支えに政治を動かしていくことだ。
だから、その言葉には力が宿っていなくてはならない。

言葉をもてあそぶ政治家が、国民から信頼を得ることができるだろうか。
僕はそうは思わない。
深まるばかりの政治への不信感を信頼に変えるものがあるとしたら、政治家の迫力ある言葉だけだと思うのである。

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