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コロナパンデミック中間総括

日経平均株価、NYダウ工業株は、2~3日でそれぞれ1000円、1000ドルという急騰を繰り返す局面に入ってきた。すでにコロナショック後ほぼ4割の暴落から、半値戻しを達成しており、半値戻しは全値戻しの格言通り、本格的上昇場面に入った可能性が濃厚である。武者リサーチは、コロナパンデミックによる暴落は、日本株式長期上昇のステップボードになる可能性が大きいと考えてきた。その根拠は6月10日に発売される、『アフターコロナ、V字回復する世界経済』(ビジネス社)に詳述している。以下はそのはしがきである。

武漢だけだと思っていたコロナ感染が瞬く間に全世界に蔓延し、医療崩壊はイタリア、米ニューヨーク州など先進国を直撃した。全世界の被害は感染者数500万人、死者数30万人と発生源の中国の70倍に達し、最悪シナリオをはるかに超えたパンデミックの展開であった。世界的に経済活動がほぼ停止状態になり、あらゆる経済指標は戦後最悪、失業率は大恐慌以来最高になった。この新型コロナは感染力が著しく強く、ワクチンの完成、集団免疫獲得までは、Withコロナの時代が続く。あと半年から最長で3年、この間経済の完全回復は困難である。人的接触を回避しながら恐る恐る経済活動が再開されても、第二波、第三波の流行が起きその都度活動は圧迫される。

世界株価はコロナ感染勃発後に4週間で4割という史上最速ペースの暴落となった。しかしその後2週間で下落の半値戻しを達成、これまた史上最速の戻りであった。フィナンシャルタイムズ等経済ジャーナリズムは、この株価の急回復はユーフォリア(多幸感)で持続性がないとキャンペーンを張っている。エコノミスト誌は「ウォールストリート(株価)とメインストリート(現実の経済社会)の危険な断絶」という特集(5/9-15日号)で、楽観を戒めている。

先進国の感染者数は3月末でピークを打ち、経済は戦後最悪の低水準から上向いて来ている。米国はじめ各国政府・中央銀行は禁じ手を連発して財政・金融救済策を打ち出し、経済金融の崩壊を防いでいる。これが市場に安心感をもたらしているのである。手放しに楽観できる状況にないのは言うまでもないが、当局も報道も専門家も、ことさらに楽観しないようにバイアスをかけていることも事実である。経済と市場はもっと合理的であるはずである。

リーマンショック後しばらく鳴りを潜めていた悲観論者が、「だから見たことか」とばかりに登場し、憂鬱なムードを更に暗くしている。悲観論の根底には、リーマンショック後の経済成長は禁じ手政策の連発による砂上の楼閣であり持続性はない、という大局観がある。コロナパンデミックは、いずれ下されるべき審判を速めたに過ぎない、というわけである。

これに対して武者リサーチははっきりと、長期経済ブームの波は終わってはいない、コロナの後は再度上昇の波に戻ると主張したい。理由はコロナが歴史の流れを押し進めると考えられるからである。コロナパンデミックという世界的惨事が歴史の流れをせき止めていた障害物を一気に押し流し、長期的に経済成長率を高め、株価を押し上げると考える。

誰しも一番知りたいのは、今まで続いていた経済繁栄が終わったのか、それとも一時的に遮断されただけなのか、であろう。コロナが起きる直前までは世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、株価はリーマンショック後10年間で4倍になった。この長期的経済ブームが続くとすれば、株価の鋭角的戻りは必ずしもユーフォリアとは言えない。むしろ大きく下落したところは絶好の仕込み時ともいえる。

米国株式を100年単位で振り返ると、20年間で10倍になるという長期ブームとその後の10年間の調整が繰り返されてきた。1950~60代年NYダウは100ドルから1000ドルへと10倍になったが、1970年代の10年間は1000ドルと全くの横ばいであった。1980~90年代の20年間には1000ドルから10,000ドルへと10倍になったが、2000年代の10年間はITバブル崩壊、リーマンショックという二つの暴落があり、ならしてみれば10,000ドルで横ばいであった。2010年代に入り再度20年10倍の勢いで上昇相場が始まっていた。この戦後3回目の大波が終わったのかどうかが問われる。

コロナ以前から3つの歴史的趨勢が起きていた。①ビジネス、生活、金融、政治のすべてを覆いつくすIT・ネット・デジタル化、②財政と金融の肥大化による大きな政府の時代、③中国の孤立化と国際秩序・国際分業の再構築、である。しかしこうした歴史的趨勢は、牢固な障害物により展開を阻まれ、それがここ10年近く世界経済の桎梏となっていた。障害物とは、ネット化に対しては既存の慣習・制度・変わりたくない抵抗勢力、大きな政府に対しては、健全財政信仰、緊縮金融信仰、中国抑制に関しては中国経済力の脅威、中国の横車・恫喝、等である。

これらの阻害要因が歴史の流れを押しとどめ、澱みができ、政治・制度・経済・社会・生活等で大きなひずみが起こっていた。ここ数年顕在化していた世界経済の病、デフレ(=供給力余剰)、ゼロ金利(=資本余剰)、は変化を押しとどめる障害物が引き起こしたものと理解することができる。あと一つの病、格差拡大も上述の阻害要因が是正の邪魔をしていた。コロナパンデミックはこれらの阻害要因をことごとく壊し、歴史的趨勢を加速させるだろう。コロナ感染が沈静化した時、世界経済はより活力を高めているはずである。本来なら何年もかけ多くの失敗の後にようやくたどり着くであろうこれらの結論に、コロナパンデミックにより瞬時に到達できた、このことの意義は大きい。

コロナでインターネット活用の障害物、古い制度・習慣・変わりたくない抵抗勢力が吹き飛んだ。人と人との直接接触を避ける切り札としてのネット化が、有無を言わせない至上命令となった。なかでもテレワークの普及は、働き方を劇的に変え新しいライフスタイルとビジネスモデルを巻き起こしている。企業の外部閉鎖性の改革、労働時間の短縮・フレックス化、兼業・副業の常態化、テレワークの障害物であったハンコ文化の一掃、ドキュメントの紙からデータへの転換も一気に進んでいる。アリバイ作りで出社し、会議に出席しているだけの社員はあぶりだされるだろう。年功序列雇用が色濃い日本は、ネット導入に大きく立ち遅れていたが、ここで一気に遅れが取り戻されるだろう。多様な方向で労働編成改革が断行される。業務の外部委託がさらに進み、コスト削減と新たな商品開発の両方が進展する。

MMT、シムズ理論(FTPL)等、財政を有効活用する経済理論と政策は、大多数のエコノミストの反対にあい、実現は困難であった。しかし、奇しくもコロナパンデミックにより財政のけた外れの拡大は不可避となった。また、金融システムを守るために中央銀行はこれまで以上にバランスシートを大膨張させ、信用を緩和している。緊縮財政の縛りがなくなったことで、その後の景気回復は速まるが、だからと言ってインフレも金利急騰も起きない、株価が上昇するだけだろう。

そもそもコロナ感染が発生する前の世界経済は、物価低下圧力=需要不足、と金利低下圧力=金余りという二つの問題を抱えていた。需要不足はインターネット・AI・ロボットによる技術革命が生産性を押上げ、供給力が高まっていたために引き起こされた。金利低下は企業の高利潤が遊んでいるために引き起こされた。よって財政と金融双方の拡張政策で余っている資金を活用し、需要を喚起することが必要であった。遊んでいた資本と供給力が活用されることで景気はコロナ感染前より良くなる。

財政節度という今の時代に全く適合していない呪文から解き放たれることは、本来最も必要なことであった。大恐慌が「ゆりかごから墓場まで」の近代的社会保障制度の起点になったように、コロナパンデミックが社会的セーフティーネットの飛躍的拡充、ユニバーサル・ヘルスシステムの登場、ユニバーサル・ベーシックインカムの時代を開くかもしれない。

現在の国際秩序において中国のオーバープレゼンスが問題であることはわかっていたが、中国の圧倒的経済力、執拗な圧力・恫喝により、国際社会のベクトルはそろわなかった。しかしコロナで国際社会は脱中国で腹が決まった。中国からの生産拠点のシフト、国際機関などでの中国の横暴の抑制、国際秩序再構築などは、有無を言わせない流れとなるだろう。

腹が決まったことで、不確実性も消えた。各国、各企業は中国の外に供給源を見出さないと競争に負ける。各国は中国依存のサプライチェーンの危険性を認識し、生産拠点をアセアン・台湾、米国、日本へ移す可能性が高まっている。中国に宥和的でファーウェイ製品の採用を決めていた欧州諸国も、それを見直すかもしれない。脱中国により、多くの地域・国で投資が活発化するだろう。しかし米中対決の当事者中国も覇権争いのさなかの景気後退は容認できず、景気テコ入れをし続けるだろう。コロナパンデミックがいつ終わるかはわからない。しかし終息の後には肥沃の広野が待っているだろう。

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