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  • 2020年05月29日 06:00 (配信日時 05月29日 06:00)

劣勢の大統領選、トランプの生命線は中国叩き - 海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

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鍵を握る高齢者の票

第4に65歳以上の高齢者です。この年齢層はトランプ大統領とバイデン前副大統領の支持層です。しかも、若者層と比較して投票に出向く割合が高いという特徴があります。

16年の大統領選挙では、65歳以上の高齢者においてトランプ大統領が52%、クリントン元国務長官が45%を獲得しました。ところが今、高齢者層に異変が起きています。「トランプ離れ」です。

退職した高齢者が多く移住している激戦州の南部フロリダ州では、新型コロナにより2200人以上の感染者が死亡しています。うち83%が65歳以上の高齢者です。高齢者の間にトランプ大統領のコロナ対応に不満の声が上がっており、それが数字に現れています。

例えば、クイニピアック大学が4月22日に発表したフロリダ州を対象にした世論調査によれば、同州の65歳以上の有権者における支持率はバイデン前副大統領が52%、トランプ大統領が42%で、同前副大統領が10ポイントリードしました。

全州を対象に行った同大学の調査(20年5月14-18日実施)でも、65歳以上の高齢者においてバイデン氏がトランプ氏を10ポイント上回りました。コロナ感染のこの年齢層に対する影響は看過できません。

仮にバイデン氏がフロリダ州で高齢者の票をトランプ大統領から奪い、中西部ミシガン州とウィスコンシン州並びに東部ペンシルべニア州でバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)を支持する若者を投票所に動員できれば、勝機が見えてくるかもしれません。

さて、トランプ大統領はバイデン前副大統領を「寝ぼけたジョー」とレッテルを貼って揶揄しています。トランプ氏には「よろめている老人」「頭の切れが悪い老人」というイメージを有権者に植え付ける思惑があります。

トランプ氏はバイデン前副大統領が多数の州で同時に党員集会・予備選挙を火曜日に開催する「スーパー・チューズデー」を「スーパー・サーズデー(木曜日)」と呼んだと述べて、同前副大統領を小馬鹿にしました。

加えて、南部ジョージア州はスーパー・チューズデーに含まれていないのですが、トランプ氏はバイデン氏が同州を入れたと指摘し、「頭が混乱している」というメッセージを発信しました。ただ、バイデン氏の老化現象を大きく見せて攻撃を加えるトランプ氏の選挙戦略に不快感を示す高齢者も少なくないでしょう。

「リンカーン・プロジェクト」

第5に「リンカーン・プロジェクト」です。『ついに身内から、しかも得意技で“攻撃”を受け始めたトランプ』で紹介しましたが、リンカーン・プロジェクトはトランプ大統領とトランプ主義を選挙で打ち負かすために、故ジョン・マケイン上院議員やジョン・ケーシック元オハイオ州知事(共に共和党)の元選挙参謀らが立ち上げたプロジェクトです。

リンカーン・プロジェクトはネットビデオの中で、バイデン前副大統領を国家を再び統一する「超党派のリーダー」として描いています。

さらに、「2つの米国」と題するビデオでは、新型コロナの世界的大流行の中で、米国人の命を救うために最前線で戦う医療従事者と、ロックダウン(都市封鎖)に反対する抗議活動家を鮮明に対比しています。このビデオは前者は自己を犠牲にして他者のために、後者は自分だけのために戦っていると訴えています。

そのうえで、「我々はトランプがどちらの側の米国人か、すでに分かっている。あなたはどちらの側か」と問いかけて締めくくっています。

リンカーン・プロジェクトのネットビデオには、トランプ陣営の選対本部長ブラッド・パスケール氏の裕福な生活を暴露するものがあります。パスケール氏はフロリダ州にある240万ドル(約2億5800万円)の豪邸に住み、100万ドル(約1億790万円)のマンションを2つ所有しているというのです。しかも、ヨットとフェラーリに乗っていると暴いています。

4年前の本選では、共和党内にトランプ氏及び同陣営の選対本部長をこれほどまで激しく批判し、クリントン氏を応援するプロジェクトは存在しませんでした。前回の選挙で民主党支持者でありながらトランプ大統領に投票をした「隠れトランプ」に対して、今回の選挙では共和党支持者でバイデン氏に票を投じる「隠れバイデン」の芽が確実に出てきています。リンカーン・プロジェクトは、その芽を大きく成長させる可能性を秘めています。

以上、5つの相違点を挙げました。その中で、新型コロナの影響を受けた失業率の高さ及び、高齢者の支持率はバイデン前副大統領に有利に働いています。好感度においても、バイデン氏はトランプ大統領をリードしています。加えて、リンカーン・プロジェクトの援護射撃も受けています。

従って、トランプ大統領はこれらの不利な状況を打開するために、「中国叩き」に一層力を注ぐでしょう。

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