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「キャリアのため」未婚女性の卵子凍結はありなのか?産婦人科医に聞いた

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「とりあえず、卵子凍結しておくわ」

新卒入社した会社の同期の結婚式で、隣の席にたまたま座った未婚の女友達と今後のキャリアプランについて話していたとき、彼女がこの言葉を発した。

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28歳で転職を決意し、これから新しい職場で自分のやりたかった仕事にチャレンジする彼女は、「今は子どものことは考えられない」と私に笑顔で伝え、新しい仕事の情熱に溢れている。

あと約1年で30歳になる私達。

今は結婚や出産の予定はないけれど「いつかは子どもが欲しい」と思う女性は少なからず卵子凍結に興味を持つだろう。そして「卵子凍結しておけば、いつでも妊娠できるのでは」と思う方も少なくないはず。

私もこれまでずっと「すぐに妊娠する予定がないなら、卵子凍結しておけば大丈夫だろう」と漠然と感じていた。

だが先日、自分の身体をチェックしようと卵子の年齢をチェックする検査を行ったところ、「卵巣年齢43歳」という思いもよらない結果が出たのだ。

【関連記事】28歳独身女性の卵巣年齢が43歳。これからどうするべき?

今でも「20代のうちに妊娠しておけ!」と、どこかの偉い方や育ててくれた両親らに口酸っぱくいわれても、私は私が構築したスケジュールで人生を進むしかないと思っている。

しかしそれでも、妊娠には「タイムリミット」が存在しており、しかもそのタイムリミットは人によって違うということを実感することになった。そこで頭に浮かんだのが卵子凍結だ。つまり卵子を今のうちに凍らせておき、その後「子どもが欲しい」と思った際に使用するということだった。

産婦人科医で栄賢会梅ヶ丘産婦人科の齊藤英和先生に、「キャリアのために卵子凍結をすることの是非」について話を聞いた。

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卵子は若くても身体は老化する

まず大前提として「私は、健康的な未婚女性が卵子凍結することは勧めません」と齊藤先生はキッパリと答えた。

卵子凍結を勧めない理由としては、大まかに3つあるという。

【1】身体への負担
【2】経済的な負担
【3】高齢出産後の子育て事情

以下のグラフは体外受精など生殖補助医療を行った場合のデータで、年齢別の妊娠率・生産率(出産まで至った割合)・流産率を表したものだ。

妊娠率、生産率は年齢とともに低下していくのがひと目でみてわかる。

出典:日本産科婦人科学会ARTデータブック2017

妊娠率、生産率と相反して、年齢に応じて上がっていく紫の線が「流産率」だ。年齢が上がれば上がるほど、流産率も高くなる傾向にある。

流産のうち約8割は妊娠初期に集中しており、その原因の半数以上が染色体異常といわれている。そして、その染色体異常の大きな原因は、高齢化による「卵子の老化」だという。

齊藤先生によると、妊娠・出産・育児の適齢年齢は20代で、さらに卵子の質が一番良いのは23、24歳。30代前半から徐々に老化がはじまってくるそうだ。

では、老化を防ぐためにも、結婚の予定がない20代女性は、若いうちに卵子を凍結して残した方が妊娠の可能性が高くなるのではないだろうか。

齊藤先生にそんな疑問を投げかけたところ、「卵子の老化という点だけを考えれば、例えば40歳のとき、その時点の卵子を使い体外受精をするよりも、20代で凍結していた卵子を使った方が妊娠率は高くなります」としたうえで、こう答えた。

「しかし身体は40代です。いくら卵子の質が良くても、身体が40代になれば妊娠中の合併症のリスクや疾患も増えていきます。そういう意味で、年齢が高くなればなるほど、リスクが増すと思いますよ」

卵子凍結で卵子の老化を止めることができても、結局、身体自体の老化を止めることはできないのだ。

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卵子を10年間保存した場合、数百万円かかることも

また、卵子凍結に必要な費用も決して安くない。

年齢が上がるにつれ卵子の質が低下するため、その分体外受精で使用する卵子の「数」を確保しなければ妊娠の確率を高めることはできない。そのため、年齢が上がれば上がるほど採卵しておいた方が良い卵子の個数は増える。

齊藤先生は「20代であれば、20個くらいの卵子凍結で良いかもしれませんが、40代で凍結する場合は、100個くらいないと安心はできません」と答えた。

病院にもよるが、採卵1回にかかる金額は約30万〜40万円ほどで、卵子誘発剤を使ったとしても1回の採卵で約10個ほどの卵子を採ることが可能だ。

単純計算で、例えば20代で20個凍結した場合は、2回採卵で約60万〜80万円がかかる。さらに40代で100個凍結しようと思うと約10回採卵が必要なため費用は約300万〜400万円にのぼる。加えて、それぞれ1個あたり毎年約1万円の凍結更新料がかかる。

さらに、凍結した卵子を使って体外受精をする場合は、1回につき約30万〜50万円の費用がかかる。顕微授精をする場合はもっと費用がかさむだろう。

例えば28歳の私が今年卵子20個を凍結し、10年後の38歳で妊活をはじめるとすると、

採卵費用2回分:約60万〜80万円
凍結保存費用10年分:約200万円
体外受精を1回実施:約30万〜50万円

つまり、38歳で体外受精を行い1回目で妊娠した場合でも、それまでにトータルで約290万円の出費があるのだ。パートナーと子どもと一緒に豪華な海外旅行に行けそうな金額である。病院によって費用は大きく異なってくるが、少なくとも安い金額ではないことは確かだ。

なお、齊藤先生によると、高い費用をかけて卵子凍結を実施したのにもかかわらず、その卵子が使われないというケースも非常に多いという。30代で妊娠する確率は約70%なので、「保険」として卵子を凍結するものの、実際には卵子凍結をしたとしてもその卵子を使わずにずっと保管している人が多いそうだ。

使用する可能性が低くとも、もし不安であれば念のために卵子を凍結しても良いかもしれない。しかし、決して安くない金額なので、20代のうちに妊娠できるキャリアを選択できないか再度検討することも大切だろう。

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