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福島っ子の保養の夏 ハンセン病療養所が福島の家族を招待

長かった夏休みも終わり、新学期が始まった。この夏休みの期間中、原発震災の影響で好きなだけ外遊びができない福島の子どもたちに、のびのびと過ごす時間を提供しようと、市民グループやボランティア団体などによる市民レベルの保養受け入れ事業が国内外で行われた。

 北海道では、市民グループや学習塾により、中学生を対象にした高校受験対策と保養をセットにした「学習支援付き保養」を実施。広島では、8月6日の原爆の日に合わせた社会学習を取り入れた企画や、海外ではロシア側の支援によるサハリン滞在など、各地の草の根ネットワークを基盤に、福島の子どもを支える活動が広がった。

 香川県高松市の大島にある国立ハンセン病療養所「大島青松園」では、福島の3家族・10人を6日間受け入れる保養事業が行われた。

 同園の回復者の支援に当たる真宗大谷派の僧侶らが、原発事故の影響で被曝問題に晒される福島の子どもたちに、「夏休みの短い間だけでも安心して過ごせる場を提供できないか」と同園での夏休み保養受け入れを打診した。

 厚労省は震災直後、全国の国立ハンセン病療養所に対して、「面会人宿泊所」など、宿泊可能で空いている施設を被災者に提供できないかと打診したが、大島青松園には被災者からの避難滞在の申し込みはなかった。このような経緯を知る同園の回復者の中には、被災者の支援をしたいと考える人が多く、福島の子どもたちへの支援募金を実施して約30万円を集めたほか、自治会が現地での受け入れ窓口となることを了承。夏休み保養事業が決定した。全国では、真宗大谷派の僧侶らが支援する岡山県の邑久光明園、熊本県の菊池恵楓園でも子どもたちの保養事業が実施された。

 大島青松園の回復者は現在約80人、平均年齢も80歳を超え、年々高齢化している。「らい予防法」による差別的な隔離、断種、堕胎政策により、長年にわたり社会との接点を持つことを許されず、自らの子どもを持つ権利や自由も奪われた。法律が廃止された現在も、死亡後に親族に遺骨の引き取りを拒否される場合があるなど、人権の回復がなされたとは言い難い現状が続いている。それでも被差別の経験を持つ回復者が、「社会と何らかの接点を持ちたい」「自分たちは子どもは持てなかったが、子どもの将来のために少しでも力になりたい」との思いから、僧侶、ボランティアのメンバーとともに、3家族の交通費、滞在費を含めた無料招待を実現させた。

 事務局がインターネットで募集したところ、すぐに定員を超える応募があった。参加した3家族は、「福島にはハンセン病の国立療養所がないので知識がなかったが、ネットで調べて、もっと知りたいと思い申し込んだ」「今後、福島の子どもたちが差別を受けることも考えられる。それは回復者の方と同じ。良い機会だと思った」「小さな子どもがいても大丈夫で、家族全員で参加できる数少ない貴重な機会」など、積極的に申し込んだ。

 大島に着いた当初、ゲーム機を手放せなかった男の子は、海で遊んだり、園内を走り回るようになると、みるみる活動的になった。最初は緊張した面持ちだった女の子も、友達ができると、笑顔でおしゃべりをしたり、園内の花や草木を見て歩いたり、表情が明るくなるなど、思い思いに楽しい夏休みを過ごした。

 原発事故による放射性物質の被災者と、国策により人権を奪われたハンセン病回復者を結んだ今年の夏休みの保養事業。保養受け入れに当たった回復者、僧侶、参加した福島の家族や子どもたちの声や表情を医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。

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