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新型コロナで家族が帰国 不安と寂しさからコカインに手を出した外国人ラグビー選手の悲哀

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回、傍聴したのはラグビートップリーグ・日野自動車ラグビー部(チーム名:日野レッドドルフィンズ)のLO(ロック)ジョエル・エバーソン被告(30)が、違法薬物使用容疑により逮捕された事件の初公判。罪名は麻薬及び向精神薬取締法違反です。

ジョエル・エバーソン被告(Getty Images)


被告人は保釈されていたため弁護人と1人の女性と共に法廷にやって来ました。ラグビー選手だけあって立派な体格です。証言台より10cmくらい高い位置に被告人のお尻があり、証言台と証言席がミニチュアのよう。

さらに同時通訳用のイヤホンと発信器が入ったウエストポーチを渡されると、ウエストポーチが腰に巻けないというハプニング。ベルトを最長に延ばしてなんとか装着していました。さすがラグビー選手という感じです。

検察官の冒頭陳述によると、ニュージーランドで生まれ、地元の大学を卒業後、プロラグビー選手として現地で活動していました。4年前の2016年に日本へ活動の場を移し、日野自動車ラグビー部でプレイをしていました。しかし本件逮捕後、会社に離職届けを提出しているため現在は無職です。

被告人はコロナウイルスで仕事と家族を失った


事件当日の3月4日。飲酒をする目的で被告人は1人で六本木を歩いていたところ、外国人の呼び込みに誘われてバーに入ったといいます。店内でコカインを購入し、その場で使用。午前4時7分頃、その店を出たところで警察官に職務質問を受け、財布の中から出てきたのが白い粉が付着した千円札。それも筒状に丸めてありました。ちなみに警察官が被告人に声を掛けた理由が、鼻に白い粉が付いていたため。

違法行為をしているのにうっかり過ぎるでしょ。お店の人も教えてくれないなんて。

コカインの入手ルートについて被告人は取り調べで「3月4日、六本木のクラブに外国人と一緒に入店した際、黒人から7000円で購入した。テレビで知った知識から、コカインは筒状にした紙幣で吸えるのかなと思い試したところ上手く吸えなかったため歯茎に塗って使用した」と述べているそうです。上手く吸えなかったから鼻に白い粉が付いていたんですね。

続いて弁護側の立証。被告人には妻子がいますが、現在はニュージーランドに住んでいるそうです。奥さんは被告人のために情状証人として法廷に立ちたかったらしいですが、新型コロナウイルスの影響で来日できず。ということで、奥さんが書いた陳述書が提出されました。あと、ニュージーランドにいる被告人の主治医が書いた証拠も提出されました。内容としては、2018年2月にうつ病に罹患して帰国の度に受診していたと。現在はオンラインでカウンセリングをしているというものです。オンライン受診というのが時代を映していますよね。

このあと、傍聴席に座っていた女性への証人尋問です。奥さんは来日できないため、この女性は何者なのかと思ったら、被告人を担当しているエージェント。ビザや住居の手配など被告人の身の周りの世話を行う仕事の人でした。これは珍しい。情状証人がエージェントと言うのは世界レベルのスポーツ選手ならではです。現在被告人が住んでいる保釈中の住居もこの人が探したようで「日本にいる間は身の周りのサポートをします」と国内のプライベートを監督すると約束していました。

弁護人による被告人質問です。

弁護人「コカインを使ったのは3月4日が初めてですか?」
被告人「はい」
弁護人「あなたの気持ちは?」
被告人「とても孤独で寂しかったです」
弁護人「3月ですが、ラグビーのプレイは出来ていましたか?」
被告人「出来ていません」
弁護人「なぜですか?」
被告人「新型コロナウイルスの影響です」

ジャパンラグビーのトップリーグは2月末の段階で、3月上旬の試合の延期を発表していました。そして日本で一緒に生活してた妻子が3月上旬にニュージーランドに帰国したそうです。新型コロナウイルスによって、仕事と家族が生活の中からなくなってしまった訳です。

弁護人「あなたの健康状態は?」
被告人「私のうつ病もあって悲しい気持ちが増していきました」
弁護人「寂しい気持ちを紛らわすためにどうしましたか?」
被告人「深酒をするようになりました」
弁護人「そういう悩みとかを誰かに話したりしましたか?」
被告人「家族や友人に心の内を話すことがなかなか出来ませんでした」
弁護人「仕事がなくなり家族が帰国してからは外出しましたか?」
被告人「1人で深酒をするために外出していました」

このあと話題はうつ病の話になりました。

弁護人「あなたにはうつ病の診断書が出ていますけどいつからですか?」
被告人「2年前からです」

ニュージーランドでは薬を処方されていて、シーズンオフに帰国した際、診てもらっていたようです。カウンセリングを受ける中で現在の心の状況や、子ども時代のトラウマについて医師に相談していました。保釈されてからは再犯しないための話し合いをしています。オンライン化が進んだことによるメリットですね。

弁護人の質問は続きます。

弁護人「会社に離職届けを出していますけど…」
被告人「会社に多大なダメージを与えたので私はここにいる資格がないと思いました」
弁護人「あなたの逮捕によって一部リーグの試合がなくなってしまいました」
被告人「彼らの仕事に影響を与えたことを非常に申し訳なく思っています」
弁護人「今後ですけど職業としてラグビーを続けていくんですか?」
被告人「思っていません」

ラグビーは卒業する意向のようです。ただ調べてみると昨シーズンもそこまでレギュラーで出場していた訳ではなかったようで、現役としては下り坂だったのかもしれません。でも大学卒業後からずっとプロでやってきたなら指導者の道もありそうですけどね。被告人なりのケジメなのでしょう。

弁護人「次の仕事は?」
被告人「姉がニュージーランドで仕事をしているため、その会社で働こうと思っています」
弁護人「なぜ法を犯したんですか?」
被告人「孤独でうつ状態にあったためアルコールでごまかそうとしていました。そんな時、六本木のクラブで誘われました。弱い立場に自分を追い込んでしまったのがよくなかったです。今後、帰国したら薬物の回復センターに入所します」

と、ニュージーランドに帰ることを約束して、質問終了です。次は検察官から。

検察官「(コカインを)どうやって入手したんですか?」
被告人「お酒を飲んでいた時、黒人の男が『他にも欲しいか?』と聞いてきました」
検察官「それであなたは?」
被告人「OKと言ってしまいました」
検察官「『他にも欲しいか?』と聞いた黒人は何を持ってきましたか?」
被告人「小さな袋です。そこにはパウダーが入っていました」
検察官「その黒人は何と言っていたんですか?」
被告人「『パーティーのエネルギーが出るんだ』と」
検察官「あなたはそのパウダーを使うとどうなると思いましたか?」
被告人「悲しい気持ちから抜け出してハッピーになれると思いました。そのお店に入ったのは今回が初めてです」
検察官「初めて行くバーで、怪しい白いパウダーを購入することに抵抗なかったですか?」
被告人「向こう見ずで考えていませんでした」

過去に違法薬物に手を出した事も前科もなく、この時が初めてのコカインだったそうです。普通の判断が出来ないくらいに落ち込んでいたんでしょうかね。

検察官「あなたはプロのスポーツ選手として、ルール違反をするのは良くないと会社から言われていなかったんですか?」
被告人「(大きなため息をついて)本当に私はランダムでやってしまった。試合がキャンセルになって偶然出かけた時でした。私は自分を脆弱な立場に追い込んでしまったんです」

大きな体から吐き出されるため息の強さで後悔しているのが伝わってくる感じです。ため息だけで通訳いらずと言うか。

検察官「うつ病になったきっかけはなんですか?」
被告人「仕事上のストレスじゃないかと聞いています」
検察官「お医者さんからは薬を処方されていたんですか?」
被告人「薬を飲んで少し良くなっていましたが、医者がニュージーランドにいたため、なかなか薬が手に入りませんでした」
検察官「薬が手に入らないのとコカインは関係があるんですか?」
被告人「それは関係ありません」
検察官「じゃあコカインとうつ病は関係ありますか?」
被告人「それもないと思います」
検察官「言い訳にはならないですよね」

全く理由になってないぞという検察官の追及ですね。ちょっと意地悪な感じもするけど。

検察官「今回の直接の原因は家族がニュージーランドに帰って寂しかったということですか?」
被告人「うつ病と孤独。この2つです」

どちらもきっかけは新型コロナウイルスでしょう。検察官の質問はここまで。このあとは裁判官の質問になります。

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