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緊急事態宣言解除後も介護現場は課題つづき――感染症にもろい介護現場 - 結城康博 / 社会保障論

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5.今、求められる介護施策

・介護スタッフへの「特別支給」

現場で働く介護従事者に、「今後、最優先で求める介護施策を1つ選ぶとしたら?」と問うてみた。結果は、やはり「介護スタッフなどの特別支給助成金」「介護報酬アップ」といった声が一定の割合を占めている(図1)。

医療現場で医師や看護師などは献身的に従事しているが、介護スタッフも同様に重要な役割を果たしている。しかし、医療現場に比べれば、介護スタッフの世間での関心度は低いといった現状が窺える。「2020年度第1次補正予算」においても、介護分野への財源措置は医療分野と比べてかなり少ない。

具体的には、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(仮称)の創設1,490億円」に対して、「福祉施設における感染症拡大防止策 272億円」「福祉サービス提供体制の確保157億円」である。しかも、診療報酬については大幅にアップすることが、政府見解として打ち出されているが、今のところ介護報酬アップの動きはない。


「在宅介護現場における介護従事者の意識調査報告(2020年5月21日)」4頁より

やはり、医療や介護分野においては予算措置も重要な財源確保手段ではあるが、診療報酬や介護報酬の大幅なアップがなければ、医療・介護スタッフへの確固たる「賃金アップ・特別支給」は限定的になる。

・介護スタッフ離れの懸念

この間、筆者は電話インタビューを通して、介護スタッフなどの現状を聞いたのだが、「外食禁止」「私的時間であっても友人らとの接触を控えるよう」「毎日の検温」など、勤務以外の時間でも制約されている生活を送っている。当然、感染予防という視点で致し方ないが、数ヶ月、このような現状がつづけば、介護スタッフらの心身の疲労はピークに来ており、何らかの措置が求められる。早急に新たな介護スタッフの確保や賃金の上乗せなどをしないと、介護スタッフ離れに拍車がかかるのではないかと懸念される。

調査結果の自由意見においても、「安い報酬で感染のリスク不安を感じながら働かせるのはおかしい。医療と同様とまではいわないが、もっと報酬を上げてくれないと介護業界で働く人はいなくなってしまいます」「現在、登録ヘルパーさんたちも高齢化になり、自身の感染への心配で、業務をお休みする方も数名います。人手不足の中、緊急事態宣言が発出しても、感染の恐怖を感じなから通常通り在宅サービスを実施しています。介護報酬の引き上げをお願いしたい。

医療と同じように在宅サービスも命を守る職種です」「今回の影響により、更に介護職離れが進んでいく可能性も考えられます」「元々施設等は人手不足なのにコロナ感染者が出ると職員への負担がかなり厳しいと思います。海外のように、有資格者や引退した人へ 、 施設への臨時派遣等を検討して欲しい」といった声が多数寄せられている。

介護サービスは「介護職」あって成り立つものであり、「人」が辞めてしまうと充分にサービスを提供できなくなる。しかも、サービスの質も介護スタッフが減少していけば、それだけ悪くなっていく。

調査報告で、デイサービス、ヘルパー(訪問介護)、介護施設も含め、介護職はギリギリのところで踏ん張っていることが浮き彫りになった。早急な対策が求められると考える。

6.収束後も課題がつづく介護現場

「2020年第二次補正予算」も検討されているが、依然として介護分野への大幅な財源確保は難しいのではないだろうか。たしかに、医療分野を優先することはもちろんだが、介護分野にも注目していかないと社会問題となってくるはずだ。新型コロナ問題は高齢者にとって、より危険性が高く、介護現場では深刻な事態を招いている。

今後、収束が見えてくると、医療分野は退院患者も増え新たな患者が少なければ、一定の落ち着きを見せるかもしれない。しかし、収束しても介護分野は、ワクチンの実用化や特効薬の存在によってインフルエンザと同等の「病」とならなければ、新型コロナ問題は真の意味で収束しない。なぜなら、日々、感染との戦いはつづくからである。

今後、社会全体では秋にかけての第二波、第三波に備える議論も出始めている。しかし、介護分野は一人でも関係者に感染者が生じれば、もしくはその疑いがあれば、介護事業の休止もしくは介護スタッフの出勤停止などが継続する。

今後も、一時、世間では収束したとしても、要介護者やその家族、介護スタッフらの新型コロナ対策への戦いは息がつけなく、継続していくといえる。そのためにも、繰り返すが、早期に大幅な介護分野への財源措置が急がれる。 

結城康博(ゆうき・やすひろ)
社会保障論 / 社会福祉学

淑徳大学総合福祉学部教授。淑徳大学社会福祉学部社会福祉学科卒業。法政大学大学院修士課程修了(経済学修士)。法政大学大学院博士課程修了(政治学博士)。社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー。地域包括支援センター及び民間居宅介護支援事業所勤務経験をもつ。専門は、社会保障論、社会福祉学。著書に『日本の介護システム-政策決定過程と現場ニーズの分析(岩波書店2011年)』『国民健康保険(岩波ブックレットNo.787)』(岩波書店、2010年)、『介護入門―親の老後にいくらかかるか?』(ちくま新書、2010年)、『介護の値段―老後を生き抜くコスト』(毎日新聞社、2009年)、『介護―現場からの検証』(岩波新書、2008年)など多数。

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