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休業要請を突っぱねて「店名公表」されたパチンコ店長が語る「それでも営業した理由」 コロナ時代にパチンコ業界がたどる道 - 清談社

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府による緊急事態宣言や、自治体による休業要請が行われたなかで、一部の店舗が営業を続けてやり玉にあがったのが「パチンコ店」だった。

 大阪府を皮切りに、東京都や神奈川県などでは新型コロナウイルス特措法45条に基づき、休業要請に応じない店舗名を公表。それでも営業を続けるパチンコ店が続出し、他県から越境してまで押し寄せた客が長い列をつくる光景が印象に残った人も多いだろう。

 パチンコ店も、そこに集う客も、もはや「社会悪」のような扱いを受けているが、ではなぜ、一部のパチンコ店は休業要請に従わずに営業を続けたのか。実際に、休業要請を受けても当初は営業を強行し、最終的に店名を公表された関東地方のパチンコ店で店長を務めている飯田公彦さん(仮名)に話を聞いた。(取材・文=素鞠清志郎/清談社)


※写真はイメージです ©iStock.com

自らの判断で営業継続を強行

「今回はあくまでも『要請』でしたからね。営業するかどうかは自主判断なので、お客さんや従業員のことを考えたら僕はやったほうがいいという判断をしました」(飯田さん)

 飯田さんはいわゆる「オーナー店長」で、経営者であり、現場でも指揮を執る立場。チェーン店ではなく、個人経営店だからこそ、自らの判断で営業継続を強行できたのだという。

「そもそもパチンコ店からクラスターは発生していません。それに、お客さんはそれぞれ台に向かって打つだけで、声を出さなければ『3密』にはあたらないと思います。最近のパチンコ店は嫌煙化の流れもあって、空気清浄や換気を以前からしっかりしていましたし、店内や台の清掃にも力を入れていました。さらに今回は入店時にお客さんの検温や手のアルコール消毒をお願いしたり、マスクを無料配布するなど、できるかぎりの対策は行ったつもりです」

「店名公表」で事態が一変した

 外出自粛要請期間中も営業を続けたところ、ツイッターなどで拡散され、ネットで非難を浴びるようになった。

「店に抗議の電話もかかってきたものの、まぁ数えるほどでした。基本的には問題なく営業させてもらっていました」

 警察からも、特に指導や要請などはなかったという。事態が一変したのは、自治体による休業要請に応じないパチンコ店の「店名公表」からだ。

「店名公表からお客さんが一気に増えた」

「公表前に、事前通知が送られてきました。こちらとしては悪いことはやっていないという意識なので、無視しました。ただ、店名公表からお客さんが一気に増えましたね。『この店はやってますよ』という宣伝のような形になりました。遠方からも、たくさん来店していただきました。ただこちらとしては、いつも通ってくれる地域の人たちに貢献したいという気持ちで営業していたんです。それで、当店の会員しか入場できないということにしたんですけど、その場で新規入会希望者が殺到して、用意していた会員カードがなくなってしまうくらいでした」

 実はパチンコというのは、商圏が非常に狭い。都市型なら近隣の駅周辺、郊外型店舗でも車で10分圏内に住んでいる人々が主なターゲットだ。そうした近辺のお客さんに細く長く通い続けてもらう、というビジネスモデルなのだ。

「そのうちテレビで報道されるようになって、さらにお客さんが増えたし、苦情も増えました。他の地域ですと、景品交換所を閉めるというケースもあったみたいですね。ウチの地域はそういった事態にはならなかったですが、仮に景品交換所が閉まっていても営業は続けたと思います」

パチンコのイメージ悪化がもたらす“影響”

 しかし、再三の休業要請があったこともあり、最後は臨時休業する判断をした。

「ウチはいいですけど、来るお客さんが悪く言われちゃうんでね。ただ、休業中も雇用は守らないといけないですから、従業員には出社してもらって、店内のメンテナンスとか、店舗周辺の清掃をやりました。これも地域貢献の一環ですね」

 地域貢献が目的だったとしても、今回のような強行営業でパチンコ店のイメージが悪くなってしまったことは否めない。

 コロナ終息後にも業界に影響を与えると指摘するのは、パチンコ店のコンサルタントとして活動している橋本敦也さん(仮名)だ。

「コロナ以前から、パチンコ業界はシュリンクしていました。そもそも若者のギャンブル離れなどで遊技人口が減っているなか、内規改定による射幸性の低下、人気パチスロ機の撤去などで客足が遠のき、さらにこの4月からの改正健康増進法で店内は原則禁煙になるなど、マイナス要素ばかり。そうした苦境に、コロナが襲いかかったという状況です」

自粛緩和後も厳しい現実

 とはいえ、今回の騒動では、非難を浴びても店に集う熱心なファンがまだたくさんいるように見え、自粛緩和後はすぐに以前のような賑わいが戻りそうに思える。

「確かに、一時的に客足が増えると思います。しかし、多くの店が休業でマイナスになった分を取り戻そうと、いわゆる『回収営業』をするので、思うように勝てないお客さんは資金が持たずに飛んでしまう。10万円の給付金も、今回ばかりはパチンコ業界に流れてこないかもしれないですね」

 客足が遠のくと、パチンコ店も追いつめられていく。

「大手チェーンは不動産収入などもあって持ちこたえられますが、中規模チェーンが苦しいでしょうね。夏ごろには資金繰りが悪化して倒産する店も出てくると思います。小規模店舗はそこでこぼれたお客さんを拾っていく戦略になるでしょうね」

新台の開発や製造もストップ

 ホールの景気が悪くなると、その余波はついにメーカーにまで到達する。

「いままでパチンコ機器のメーカーは、新台を開発して、それをホール側にどんどん売っていくことによって安定した収益を得ていました。しかし、今回のコロナでは国家公安委員会による新規のパチンコ・パチスロ機の検定も止まり、台の開発や製造がストップ、もしくは延期になっています。ホール側は、台の入れ替えをしなくてもそれなりに営業ができてしまえば、高価な新台を買う必要がないことに気づく。コロナによって、パチンコ業界のサイクルが変化する可能性はありますね」

働く人のモチベーション

 どんな状況もしぶとく生き抜いてきたパチンコ業界も、今回ばかりはダメージが深そうだと橋本さんは指摘する。

「今回のような事態が起こると、真っ先にやり玉にあがるのがパチンコ業界だという自覚はあります。東日本大震災の時は、パチンコ業界が無駄な電力を使っていると言われましたし、消費者金融が社会問題になったときもパチンコが元凶といわれた。それでも、パチンコ業界は反論せずに黙ってやりすごしました。もちろん、自浄努力はしています。暴力団も排除したし、税金だってきちんと納めている。最近は依存症問題にもキャンペーンを張って、本当になくそうとしている。ただ、どこまで努力をしても、何かが起こるたびにパチンコがやり玉にあがるので、業界で働く人たちのモチベーションが下がってきているなと感じます」

 前述の店長・飯田さんも「今回、家族からウチで働くことを止められたアルバイトがいました。パチンコ業界のイメージが悪くなると、優秀な人材が集まらなくなるというのはあると思います」と語る。

「メーカーも、ホールでも、最近は創業者が引退し、その地盤を引き継いだ2代目、3代目が経営に加わっている。こうした世代は、そこまでパチンコ業界に対する情熱はないですから、イメージが悪くなると経営意欲も下がってしまうのではないでしょうか。パチンコのいい時代を知っている世代は、世の中がどうなろうとまたブームが来ると思っていますけど、もうそんな波は来ないのかもしれませんね」(橋本さん)

 コロナ禍は、長年の顧客だけでなく、パチンコ業界で働く人々にも甚大な影響を及ぼすことになりそうだ。

(清談社)

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