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元NHK司法キャップが明かす取材の実態 賭けマージャン問題で浮かび上がった記者と検察の「微妙な距離感」


 22日、渦中の黒川弘務検事長の辞職が閣議決定された。検察庁法改正案と黒川氏の定年延長の関係が激しく議論される中、浮上した緊急事態宣言下の賭け麻雀問題。黒川氏は賭け麻雀を認め、さらに新聞社側が用意したハイヤーに同乗し、費用を支払っていなかったことも判明した。

・【映像】黒川検事長と記者の"密すぎる距離感、"ズブズブな関係"は必要悪?

 朝日新聞の社内調査では、4人は5年ほど前からの付き合いで、この3年間で月2、3回の頻度で賭け麻雀をし、1回の勝ち負けは1人当たり数千円から2万円くらいだったという。

 そこで気になるのが記者と検察の関係だ。22日の『ABEMA Prime』では、NHK時代には検察取材を取り仕切る司法キャップや解説副委員長を務めた経験もあるジャーナリストの鎌田靖氏に話を聞いた。

 司法関係者によれば、黒川氏は法務省勤務が長い“赤レンガ派”。特捜部にもいたが、いわゆる“事件屋”ではなく、「共謀罪」や「刑事訴訟法」改正に尽力した政策畑の人物だ。

 検察組織内では「政治的調整に長けている人」と評価されていたという。一方、記者対応もきちんとするタイプだが、口は堅かったという。

 鎌田氏は「私が接してきた検察官たちは杓子定規で、記者に対してもつっけんどんな対応をする人たちがほとんどだった。私も黒川氏とは何度かお話したことがあるが、非常にソフトで人あたりが良い印象だった。

 情報をどんどん話すということはないだろうが、現役の記者に聞いてみても、やはり好かれるタイプのようだ。今回、思想的には相容れないというか、対照的な論調の産経新聞と朝日新聞が一緒にいたということも、黒川氏のキャラクターによるところが大きいのかもしれない。

 おそらく、いつもの“インナーサークル”のメンバーで黒川さんを労っていた、というようなことだったのではないか」と話す。

 「“3密”を避けるようにと言われている状況下で検察幹部がこういうことをしたというのは言語道断で、報道を聞いた時に、“これは辞めるしかないな”と思った。同席した記者についても問題にされるだろうと直感したが、平時であれば、この記者たちは新聞社内で“よく仕事をしている”“よく食い込んでいる”と評価されていたのではないか。

公務員には守秘義務があり、特に事件に関係する内容を裁判前に公にしてはならないという規定もあるので、検察官は基本的に口が堅い。やはり、“こいつには話してやろうか”と思ってもらえるような信頼関係を築いておかなければ情報が取れないということも日常的にある。

そこで相手と関係性を持つことを否定してしまえば、取材をしないということにつながってしまう。手法が問われているということは皆ももちろん分かっているが、誰かが一次情報を取って来なければ、議論になっていかない。非常に恥ずかしい話だが、こういったやり方で情報を取ろうとすることもあるということだ」。


 鎌田氏自身、現役時代には検察官と麻雀をしたことがあるといい、「1000円、2000円くらいのお金を賭けていた。一番負けた時で数千円くらいだったが…」と振り返る。

 「懇親会でカラオケに行くこともあったし、山歩きが好きな検察幹部がいて、疲れるのは嫌だったが各社が行くので付いて行ったこともある。それで山歩きが好きになったが(笑)。

私が無能だったせいもあるが、検察担当の頃には、1年のうち休んだのが1週間くらいという時期もあった。そういう中で、普通では話をしてもらえないようなことを話してもらったこともある」。

 その上で「例えば“検察からの情報を垂れ流す日本のメディアはけしからん”とカルロス・ゴーン被告が批判したが、確かに検察側が事件について“漏らす”“匂わす”ということはある。

 逆に“持ち込み”といって、例えば暴力団関係者や経済関係者に取材する中で、“これは犯罪の端緒になるのではないか”、“これは摘発して然るべき問題ではないか”と情報提供することはあるし、それは検察側も喜ぶ。そういう関係もある。だからこそ、ある種の友人関係のようになってしまうことはリスクになる。

綺麗事に聞こえるかもしれないが、権力をチェックし、国民の知る権利に応えるのが記者たちの義務だ。しかし政治家も検察も、ものすごく強い権力を持っているので、好かれようとするあまり、取り込まれてしまって取材ができなくなる危険性が必ず付いて回る。

取材した結果を国民に伝えなければならないところ、“相手が嫌がるかもしれないからこれは書くのは止めよう”と思ってしまう。そして取材すること自体が目的化し、書くことを忘れ、“楽しければいい”となってしまう危険性もある。

私が司法クラブにいた時にも、“あの社には負けたくない”“今度はスクープを取りたい”という思いが日常になってしまい、目的化してしまっていたことがあった」と明かした。

 最後に鎌田氏は「今回のように問題になった以上、取材のあり方、記者と取材先の関係が問われるのは当然だ。しかし、そもそも今回の問題が生じた背景には、官邸が検察側の独立性を揺るがすような人事上の介入をしたというところがまずある。

 それに対して、ネット上で非常に大きなうねりが生じた。この点についても報道していかなければならない」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:黒川検事長と記者の"密すぎる距離感" "ズブズブな関係"は必要悪?

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