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新型コロナ報道の罪【その2】恐怖の増幅|オオカミ少女に気をつけろ! - 泉美木蘭

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緊急事態宣言が解除されても、「ソーシャル・ディスタンス」が推奨されていることがあり、営業再開した店舗も簡単には客足が戻らず、苦しい状況にある。加えて、夏の風物詩である甲子園まで中止するという。

「新型コロナ報道の罪【その1】ステイホーム圧力と自粛要請」でも述べたが、それほどのウイルスなのだろうか。

「感染の恐怖」に支配されてしまったことで、人々がみずから活力を殺し、自縛行為へと向かってゆくように見えて、とても心配だ。

(写真:iStock.com/ArminStautBerlin)

私も最初から楽観視していたわけではなかった。新型コロナの発生源とされる中国・武漢市が封鎖されたというニュースを対岸の火事として眺めていた1月末、その武漢市からの観光客を乗せた日本のバス運転手やバスガイドが感染したと報道され、なぜ政府は入国制限をしないのかと苛立った。

その後、ダイヤモンド・プリンセス号での感染蔓延を見て、これが市中に広がったら大変なことになるんじゃないかと不安に思いはじめた。

2月27日には、政府が全国一斉に臨時休校するように要請を出し、店頭からはマスクが消え、デマによってトイレットペーパー騒動が起きた。にわかに非常事態感が出てきた。マスクの残数を数えて、身構える心境があった。

「8割は感染させず、8割は軽症」の公式見解は、いつの間にか蒸発

3月1日、厚労省から公式見解が発表された。「日本国内で感染が確認された人のうち、重症・軽症に関わらず約80%は他人に感染させていない」「症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっているが、重症化した人も約半数は回復している」という。

[画像をブログで見る]

私はこれを聞いて気が抜けた。「感染力が弱いんだな。たまに肺炎になるインフルエンザみたいなものかな」と解釈して、安心したのだ。

喘息の気があるので注意しようとは思ったものの、「感染したら死ぬ」という凶暴なウイルスではないようだ。手洗いとうがいを心掛け、しっかり栄養と睡眠をとっておこうと思った。

ところが、この「8割は感染させず、8割は軽症」という情報は、たちまち蒸発した。

マスコミは連日、各地の新規感染者数を速報し、「〇〇市でクラスターが発生」「重症者は急速に悪化」といった具合に、「脅威がどんどん近づいて来る」というような不安を煽る報道をくり返しはじめたのだ。周囲にも怖がる人が増えた。

会食の席で「日本では、毎年インフルエンザに1000万人が感染して、1万人が死亡している」という話を聞いたのはこの頃だ。驚いたが、医学の世界では常識だという。

まだ新型コロナの感染者数は300名程度、死者は数名の頃だったので、「インフルエンザでも学級閉鎖で済むのに、なぜ新型コロナは一斉休校なんでしょうね」など話し、政府の対応とマスコミに違和感を持った。

もし、インフルエンザの感染者数、死者数をテレビで毎日速報すれば、新型コロナの比ではない脅威に日本列島が震撼するのではないだろうか。だが、マスコミにはそのように相対化する視点がないようで、ひたすら「新型コロナの恐ろしい部分」にのみ注目が注がれはじめた。

「海外の惨状」と「日本の状況」をごちゃ混ぜに報道

3月13日、改正新型インフル特措法が成立し、少なくない人々が「早く緊急事態宣言を出して自由を制限しろ」と強権支配を望みはじめた。

この頃のマスコミは、イタリアの医療崩壊の話題で持ちきりだった。1日数百名単位の死者が出て、野戦病院のようになった医療施設の映像が紹介される。苦しそうな患者の映像も取り上げられて、「イタリアは日本と同じ高齢化社会」「明日は我が身」というイメージが強く打ち出される。

もちろん実際に起きていることだし、私も日本のICUベッド数は足りるだろうかと心配になったが、一方で「日本も同時期にウイルスが上陸しているのに、どうしてイタリアだけがこんなことになったのだろう」という強い疑問があった。この頃の日本の1日の死者数は2~3名ほどだったからだ。

調べてみると、イタリアはもともとEUから緊縮財政を強いられており、過去数年で758もの医療機関を閉鎖していたらしい。優秀な学生は他国へ流出してしまい、コロナ以前から、医師が5万6千人、看護師が5万人不足という医療崩壊寸前状態だったという。

日本も公立病院の再編統合や、医療機関の人手不足が長らく語られているが、イタリアはもはや自国で医師を調達できない地域があり、貧しい他国から医師を呼び寄せる状態になっていた。

日本とイタリアは、似た点もあるが、状況が違う。同じウイルスが上陸しても、国ごとに情勢も医療制度も地理条件も国民性も違うのだから、どこでも同じようになると考えるのは短絡的だろう。

インターネットで世界中の情報が瞬時に手に入るために、「地球はひとつ」と錯覚しがちかもしれないが、ここは踏まえておかなければ見誤ってしまう。

マスコミは、国ごとの違いは無視していた。時がたつにつれ、欧米では千人、万人の単位で死者数が膨れ上がる一方、日本では、圧倒的に死者が抑えられているという状況が如実になっていったのだが、ひたすら海外の惨状を報じては「新型コロナ恐怖症」をばら撒いたのだった。

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