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被災者中心型の支援のかたちとは(2/2) 荻上チキ×永松伸吾×駒崎弘樹

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荻上 傾聴ボランティアの活動も話題になっています。被災地地域で、孤立死を出さないように、あるいは思い出や苦しみを共有するために、一軒一軒訪ねて話を聞き、加えてニーズを探すといったアイデアです。

震災以降、様々なNPOが、様々なアイデアを練り、ニーズに応じられる方法を模索してきました。駒崎さんは、内閣府の非常勤研究委員として、NPOをバックアップする体制づくりにも関わられていますが、こうしたNPOの横の動き、仕組み上の問題について、どのような印象を持たれていますか。

駒崎 私は半年間、内閣府で非常勤をやっていました。今回特筆すべきなのは、アメリカでは回転ドアと呼ばれるような、民間と官の人材交流があったことです。これまでですと、官の世界と市民セクターが分断されていたため、国でいい補助金制度をつくっても、誰もそれを知らなくて困ることもよくありました。今回、民間で活動していた人が、復興庁の官僚になるといった民間雇用が行われたので、民間の人が被災地にいって「こういう補助金があるよ」と営業してくれたこともありました。こういう動きは今までにみられませんでした。

荻上 ボランティア担当大臣というポジションも作られましたが、あれは効果があったと思いますか。

駒崎 辻本さんは市民セクター出身の方なので、NPOのことはよくお分かりでした。ですから、情報を発信していく雰囲気を作ってくれたと思います。でも、これだけ未曾有の震災に国が迅速に動けたかといったそうではないし、それは誰がやっても同じでしょう。もう国単位で迅速に動くのは不可能だと思います。だからこそ中間集団をきちんと育成し、なにか問題が発生したときにぱっと動けるようにしなくてはいけない。国が悪い!と言っているだけでは駄目だと思います。

万全に迎え撃てるようになるためには官もNPOも必要ですし、あるいは地元の住民が、ある種の支援リテラシーを身につけて、迅速に動けるようになることも必要だと思います。幾重にもネットを張って、次なる震災、災害に備えなくてはいけません。

NPOを組織化する

荻上 被災地で取材していると、元官僚によく会いました。官僚の限界を感じ、震災後に辞めた方もいました。本人には忸怩たる思いもあると思いますが、思わぬかたちで回転ドアが機能した面もあるかもしれません。

NPOとして、制度上やノウハウ、バックアップとの協力など、今回の震災で感じた課題や後世に残すべき教訓をお聞かせください。

駒崎 課題がありすぎて整理がついていないのですが、一つはやはりさっきもお話した支援金、義捐金についてです。僕は、NHKの番組審議会の委員もやっているので、次は絶対に言ってやろうと思っていますが、NHKが義捐金の窓口はこちら、支援金の窓口はこちらですと言っているだけでも違っただろうと思います。最初に、たくさんのお金が市民セクターに流れていたら、もっと迅速に動けたはずです。それで救えた命、生活もあったと思います。

もう一つは、さっきのボランティア行くか、行かないかという話ですが、現地の状況がわからない場合は、戦争と似ているように思いますが、まず少人数の先遣隊を派遣して、そこで得た情報を即座にネットにあげて、どこになにが足りていないのかオープンしていく。そしてその後に情報を参考に支援体制を東京側で組み、一気にどん!と支援する方法が出来ればと思います。現地の情報がわからないがゆえに、無駄になってしまった支援も多々ありました。オープンガバメント的な取り組みがもっとあって良かったのかもしれません。

またNPOも、それぞれ個別に被災地に入ってはいましたが、平時に、こういうときにはこうしようといった打ち合わせがされてこなかった。これは僕らが平和ぼけしていたからでしょう。NPOは基本的に、例えばフローレンスなら、子育ての問題についてはプロフェッショナルですが、震災や災害が起きたときに対応など、長期的な目を持っていませんでした。そうしたことを話し合う協議会はあるべきでした。NPOもきちと組織化されていれば、もっと無駄なく動けたと思います。

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駒崎弘樹氏




4つの防災サイクル

荻上 お二人はご存じだと思いますが、NPO同士の縄張り意識でもめているケースというのはよく耳にしますね。それから、平時からどこまで備えられるのかという問題があって、いつもやっていることの延長線じゃないと対応できないことも明らかになりました。

防災の研究のなかには、災害サイクルの話がありますが、永松さん、今回の震災対応を防災サイクルに照らし合わせれば、我々はなにを学べたのでしょうか。

永松 そうですね、まず、災害サイクルについて説明しましょう。

まず災害が発生します。その事態に対応する「レスポンス」(対応)、そして被害からの回復である「リカバリー」(復興)、その次には二度と被害をおこさないための予防として「ミティゲーション」(被害軽減)を、最後にことが起きたときにすぐ動けるように準備する「プリペアドネス」(事前準備)と呼ばれる段階があります。これが4つのサイクルです。

これは災害に限った話ではないのですが、危機は繰り返しやってきます。それを一回のイベントとして終わらせないで、4つのサイクルとして循環させることで、次の教訓として繋げていこうという考え方です。

先ほど駒崎さんがおっしゃられていたことは、その通りだと思う反面、災害救援系のボランティアやNPOは、毎年、東海地震に備えて静岡で訓練を行ったり、横のネットワークと作ったりしています。こうした組織化は、阪神・淡路大震災以降とても進みましたが、今回はそれだけではカバーできるような規模ではなかった。それこそ駒崎さんのような、もともと災害とは関係ない活動をされてきた人たちが、復興支援に携わらなければ、とてもじゃないが回らない状況だったわけです。ただし、そこまでは横のネットワークが出来ていなかった。

ですから、ぜひ今回の震災を教訓として、普段は災害や防災と関係のない人たちが、少しだけその意識をもって横の繋がりに参加してもらえたら防災を研究している人間として喜ばしく思います。

NPOのノウハウを共有するために

荻上 NPOという話題になると、ついぞ人材育成や資金集めの話になりがちですが、バックヤードのアウトリーチって、非常に重要だと感じています。今回、いろいろな意味で、バックヤードが不可視化されていた。つまり、NPOの最前線ではなく、その後ろにある体制への想像力が通じていなかった。

まさに支援金の話がそれです。NPOが活動するためには、お金で支える必要がある。しかし、NPO=非営利だから、お金は取らないのだろう、稼がなくていいのだろうと思っている人さえいる。

あるいは、瓦礫処理ボランティアとして参加したつもりが、倉庫の管理やら電話対応をやらされて、一週間くらいで拗ねて帰ってしまうみたいな話もやはりありました。人気なのは、被災者の人と直接触れ合ったり泥かきなどをする「花形ボランティア」なのだけれど、そうでないものは露骨に避けられたり。しかし、いろいろな「バックヤードを支える」「バックヤードで支える」活動が本当に必要なんだということの理解、そしてなにより支援の方法論がシェアされていなかったと思います。

ご存知な方もいらっしゃると思いますが、僕は、震災以降、ネット上で流言検証情報のまとめページを作っていました。今回の震災で特徴的だと思ったことは、「支援呼びかけ流言」を多く見かけたということ。「どこそこに物資が足りない」とか「ここに送ってください」と流言を流すケースが多々みられました。

みんな、なにかしたかったんだと思います。だからこそ、そのアウトプットが間違っていると、本当にもったないない。物資の送り方ひとつとっても、業務用ホッチキスで箱をとめると開封のときに結構手間取ることとか、「おかんの仕送り型」で食べ物からぬいぐるみまでなんでもかんでもごっちゃに入れられると仕分けに時間がかかることとか、各地で共通の余った物資(例えば古着の下着とか、ホテルの備え付けの歯ブラシとか)があったこととか、そういう情報が事前にあると、事前に正解がわかるわけではないけれど、「今回はどうか」というヒントを得ることができると思うんですね。

現場では常識的なことが、外部では共有されていないことは、本当に多々あると思います。そうした情報の共有といった面での「失敗学」を、お二人に聞いてみたいと思います。

駒崎 今日、僕はこの場を、懺悔の場だと思っています。実は今までNPOの価値観や業界のことを、一般の人たちにはわかってもらわなくていいといったメンタリティを持っていました。そして、NPOにはそういう考え方の人は多いです。

ですから、NPOで当たり前のノウハウがシェアされていないのは、僕らに原因があるようにも思います。そういったメンタリティがうまれてしまったのは、例えば支援金の話ですと、バックヤードにこそお金がかかるという話を説明するのに、手間も時間もかかってしまうので、それでなんやかんや言われるくらいなら、やらなくちゃいけないことをやるよ!となってしまっていたんですね。これはとても反省しました。

荻上 ただ、実際は忙しいですよね。NPOの方々と話をしたときには、「そういうのはメディアとかあなたみたいな人がやってくれ、がんばって欲しい」と、逆に激を飛ばされたりもしました。NPOが自ら「こんなに仕事をしているのだから寄付してくれ」と発言すると、それはやはり自分のNPOのひとつの物語になってしまい、NPO全体の話になりにくくなる面もあるかもしれない。

駒崎 それでも、僕は「メディアがやってくれ!」では駄目だと思います。僕らが、メディアに取り上げられるようなかたちで発信する必要もあるし、一般の方々とノウハウを共有するための活動もかかわらなくてはいけないと思います。

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