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変わるのか? 変わらないのか?~「6月定時株主総会」に向けた様々な思惑。

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世界では500万人を突破し、なおも増え続けている新型コロナウイルス感染判明者だが、日本国内に目を移せば、本日、関西3府県の緊急事態宣言解除が決定されて残るは1都1道3県。

北海道に関しては気候的な面も含めてまだ微妙な面は残るものの、首都圏1都3県の解除は、ここ数日間の動向を見てもほぼ”秒読み”段階に差し掛かっているとみて間違いはないだろう。

GW前後は本当に静まり返っていた都心部の景色も、ここ1週間くらいの間にかなり変わった。さすがにどこの飲食店も”びっしり満席”という感じで営業しているわけではないし、のれんを下ろす時間も早いのだけれど、テイクアウトの弁当が大ヒット中の近所の大衆料理店の店主は日増しに顔色が良くなっているし、多くの個人経営のお店が一度下したシャッタ―を開けて、それぞれ工夫しながら趣向を凝らした営業を再開している。

さすがに、フライング気味にそれまでどおりの密集状況で営業している居酒屋に飛び込む勇気はまだないのだが、いずれそう遠くないうちに”自粛警察”もお役御免。

これからちょっとずつ日常が戻っていくのだろうな、という雰囲気を日に日に感じているところである。

もちろん、相手は目に見えないウイルス。

宇都宮で、緊急事態宣言解除後に、スーパーの従業員から一気にクラスタが生じた事例が起きてしまったこと*1に象徴されるように、ちょっとしたところから一気に10人、20人単位で突発的に感染判明者が出てくるような事態も十分考えられるとは思うが*2、”自主規制”で「感染爆発」の危機を一度乗り切った、という経験は社会の財産として刻まれているし、「緊急事態宣言発令」のBefore/Afterと、身近なところで出た感染事例等を通じて「何がリスクで、何がリスクでないか」という肌感覚を高めた人も多いはずだから、あえてリスクに抗うような暴挙を冒さず、普通の人々が普通の行動を取り続ける限り、「新しい生活様式」などというものに囚われることなく、普通の日常を取り戻せると自分は確信している。

メディアに目を移せば、様々な経済統計、景気指標が「過去最悪」レベルの数字を示した、というニュースばかり飛び込んでくるし、1か月前、2か月前の数字を見ればそりゃそうなのだが、観光、交通等の一部業界を除けば「需要が消えたわけではなく、先送りになっただけ」というのが今の状況だと思うわけで*3、しかもこの数か月の間、生活の糧を失って苦しい思いをした方々がいる一方で、それまでと変わらない給与を支給され、その一方で諸々の支出が浮いてさらに定額給付金まで・・・という人々の層も決して薄くはないわけだから、ひとたび「戻る」流れができてしまえば、浮いたお金は一気に様々な消費に流れ込み、新たな雇用も生まれる。

直近の各社の決算発表を見ても、スーパー、ドラッグストアが絶好調なのはもちろんだし、多くの会社が今期の決算予想を「未定」とする中で、あえて予想を公表している会社の中には、コロナ禍の影響を差し引いても(あるいはコロナ禍が追い風になって)「強気」の予測を立てられる会社がそれなりにある。

報道では、どうしても、インパクトのあるネガティブ業績発表、業績予想の方が大きく取り上げられがちなのけど、2月、3月にその手の「保守的な」予想を示していた会社の中には、決算発表の段階になって利益ベースで「上方修正」している会社も多いのであって*4、今出ているのが「最大限のネガティブ予想」だと思えば、そこまで悲観することもないだろう。

何より、エコノミストがこぞって口を揃えて「日本経済の立ち直りに時間」と言い出したことは、これまでその手の予想が散々外れてきたことを考えると、むしろ早期の景気回復の予兆ではないか、ともいえるわけで、夏が終わり、慌ただしい年の瀬が近付く頃には、「半年前の騒ぎは何だったのだろう?」と思えてしまうような世の中がまた訪れているはずである*5

続々と開示される招集通知が映し出すもの

さて、世の中が正常化に向かっていく、ということ自体は全く悪いことではないと思うのだが、ここしばらくの「急回復」の傾向は、在宅勤務がすっかり板についたホワイトカラーと、6月の定時株主総会の担当者にとっては、相当悩ましい事態を引き起こしているのではなかろうか。

特に後者に関しては、今週に入って続々と適時開示に上がってくる「招集通知」をざっと眺めるだけでも、各社の中の人々の様々な思いが伝わってくる。

これまで何度も取り上げてきたように、この「緊急事態宣言」下で、金融庁、経済産業省、法務省といった政策当局が、株主総会の開催に関して様々な考え方を示してきており、その多くは、3月をもって決算年度を終え、6月に定時株主総会の開催を予定していた会社に向けられたものだったから、多くの会社では、それをベースに様々な検討を行ってきたはずだ。

しかし、ここしばらくの状況を見る限り、「6月」は既に緊急事態宣言が明けた月となるはずで、いかに政府が「新しい生活様式」だの「ニューノーマル」だのと言ったところで、「正常化」に向けて動き始める流れは到底止まりそうになく、総会がピークを迎える6月下旬ともなれば、それはなおさら。

3月総会の会社は、日増しに感染拡大の脅威が高まり、緊迫感が強まりつつある中で、これまでと同じ感覚で来場しようとする株主に「今年はいつもと違う」という危機感をどう叩きこむか、ということに苦労させられることになったし、4月総会、5月総会はまさに「緊急事態」という状況の下、予定していた会場が使えなくなり、「プランB」の発動を余儀なくされる、という艱難辛苦を味わった会社も多かった*6

総会の中身を見ても、議事進行の簡略化だったり、質問時間を短縮して打ち切ったり、と、平時であれば異議が出ても不思議ではないような運営をした会社もあったようだが、全ては「今は非常時」という説明で正当化できる余地はあったし、現に3月、4月の状況であれば、それは当然に許容されてしかるべきものであった。

6月総会の会社も、こうした流れを受けて、招集通知に「出席自粛」文言を入れ、会場の座席のセッティングを変え、シナリオを修正して・・・という試みを行っているところは多いはずである。

だが、それは、逆方向に動き出した世の中の流れとは、決して相性の良いものではない。

自分は、6月総会の会社の招集通知が開示され始めて早々に登場した伊藤忠商事㈱の招集通知*7を眺め、そこに記された、

「当社大阪本社セミナールーム(21階)」

という開催場所と、

「株主のみなさまにご来場いただくことなく、当社役員のみで開催させていただきたく」
「株主のみなさまにおかれましては、本株主総会当日にご来場されないようお願い申しあげます」

という赤い文字で記された文言に思わず目を見張ってしまった。

昨年まで、名門総合商社らしくホテルニューオータニ大阪の大宴会場で開催されていた総会が、「セミナールーム」で、しかも「役員のみ」で開かれる、ということの衝撃。

そしてこの趣旨は英文の招集通知でも貫かれており*8

"without the attendance of shareholders"

だとか、

"We therefore ask all shareholders to refrain from attending this Ordinary General Meeting of Shareholders in person."

などといった、来年以降はもう二度と見ることはないであろうフレーズが登場する。

こういったスタンスは、まさに「緊急事態宣言下」での発想そのものであり、これぞ「株主総会2020」の真骨頂だな、と感心させられたものだった。

だが、これと前後して出てきた各社の招集通知を見ても、このレベルで追随している会社はほとんどない。

大手名門企業を中心に、表紙や、狭義の招集通知の中に、

「ご来場をお控えください」

というフレーズを書き込んでいる会社は多いものの、そういった会社の多くは開催場所を例年と変わらない一流ホテルの大宴会場に設定しているし、

・お土産の廃止
・株主との懇親会の中止
・会場までの送迎バスの運転中止

といった対応まではしているものの、それ以上に強い表現での「出席するな要請」はしていないように見受けられる会社も多い。

もちろん、ここまで手を打てば、お土産や、終了後の懇親会を目当てに参加していた株主の参加割合は下がるだろうが、6月下旬頃の雰囲気を考えると、「純粋に社長の説明を聞きたい」とか、「質問したい」という株主の足までは止められないだろうし、「こんな時だからこそ行ってみたい」という株主が出てきても不思議ではない。

そもそも、

「会社から『招集』されたから来たんだ。なんか文句あるか!」

と言われてしまえば何ら反論できない、というのが法制度上の建付けに由来する大前提である以上*9、例年どおり多数の株主が来場することも見越して、後々クレームを付けられない程度の穏便な記載に留めている会社も多いのではないか、というのが、自分の素朴な見立てである。

「開催方針」をめぐる瀬戸際の攻防

一方、現時点においても未だ3月期末の決算を行えておらず、刻一刻と迫るリミットと戦っている会社も少なからず存在する。

そして5月も下旬に差し掛かる中、そういった会社が、「延期」か「継続会」か、それとも他の方法によるか、といった「総会開催方針」を先行して示す事例も増えてきた*10

今月1日付のエントリー*11の中で、ほぼ連日更新しているのだが、改めて「方針」の類型ごとに整理すると、以下のようになる。

■延期(議決権行使基準日変更)での対応(33社)

・㈱東芝 7月以降 基準日5月15日(配当基準日変更なし)
・㈱スカパーJSATHD 7月30日 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱ナンシン 7月以降 基準日5月31日(配当基準日も変更)
・サンデンHD㈱ 7月以降
・㈱ジャパンディスプレイ 8月末 基準日6月30日 
・㈱サンリツ 7月以降 基準日5月31日(配当基準日も変更)
・ブロードメディア㈱ 7月下旬 基準日5月31日(株主優待制度は基準日変更なし)
・オリンパス㈱ 7月下旬 基準日5月31日(配当基準日も変更)
・日本板硝子㈱ 7月以降 基準日6月4日 (配当基準日は変更なし)
・㈱音通 7月下旬 基準日5月25日(配当基準日変更なし)
・㈱レオパレス21 7月以降 基準日5月28日(配当基準日への言及はないが、既に無配の予想が出ている)
・㈱三城HD 7月下旬 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱昭和HD 7月 基準日5月31日 (配当基準日への言及はなし)
・㈱リプロセル 7月1日以降に延期の方針のみ発表
・㈱プレステージ・インターナショナル 7月下旬 基準日6月10日(配当基準日変更なし)
・㈱フォーバルテレコム 基準日5月31日 (配当基準日変更なし)
・㈱フォーバル 基準日5月31日 (配当基準日変更なし)
・凸版印刷㈱ 7月21日 基準日5月31日 (配当基準日変更なし) 
・日本電波工業㈱ 未定 基準日5月31日 本社事務所会議室で開催予定(配当基準日変更なし)
・㈱日立製作所 7月下旬以降 基準日5月28日(配当基準日変更なし)
・日立建機㈱ 7月以降 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・東洋エンジニアリング㈱ 未定 基準日5月31日(無配)
・㈱アールスティ 7月以降 基準日5月31日(無配)
・相模ゴム工業㈱ 7月以降 基準日5月31日(配当基準日変更なし) 
・玉井商船㈱ 7月29日 基準日5月31日(無配)
・クオールHD㈱ 7月21日 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱ケーヒン 7月以降 基準日6月12日(無配)
・岩崎通信機㈱ 7月下旬 基準日5月31日(無配)
・チムニー㈱ 7月下旬 基準日6月8日(無配)
・北日本紡績㈱ 7月下旬 基準日6月5日
・燦キャピタルマーケット㈱ 7月下旬 基準日6月5日(無配予定)
・㈱やまや 7月下旬 基準日6月15日(配当基準日変更なし)
・㈱ショーワ 7月以降 基準日6月8日(配当基準日変更なし)

■継続会での対応(19社)

・NKKスイッチズ㈱ 6月26日→継続会予定 ※6月総会初の継続会リリース
・アネスト岩田㈱ 6月25日→継続会予定
・㈱パイオラックス 6月24日→継続会予定
・日本農薬㈱ 6月26日→継続会予定
・芦森工業㈱ 6月19日→継続会予定
・㈱ADEKA 6月29日→継続会予定
・㈱ナカノフドー建設 6月26日→継続会予定
・国際計測器㈱ 6月29日→継続会予定 7月下旬
・㈱三栄コーポレーション 6月26日→継続会予定
・中央ビルト工業㈱ 6月19日→継続会予定
・㈱フェローテックHD 6月26日→継続会予定(7月31日) 
・Fringe81㈱ 7月22日 基準日6月10日
・ユニプレス㈱ 7月下旬 基準日6月11日
・鴻池運輸㈱ 7月下旬以降 基準日6月18日(配当基準日変更なし)
・㈱リケン 6月26日→継続会予定
・㈱アイフリークモバイル 6月25日→継続会予定(無配の方針に言及)
・大和自動車交通㈱ 6月26日→継続会予定
・㈱ミクニ 6月26日→継続会予定
・大同工業㈱ 6月26日→継続会予定

■定時+臨時の2回開催による対応(2社)

・㈱ダイセル 6月19日 → 臨時株主総会で報告予定
・オンキョー㈱ 6月25日 → 臨時株主総会で報告予定

■当初基準日から3か月以内での日時変更による対応(2社)

・㈱ぱど 6月18日→6月30日に延期を発表
・高砂熱学工業㈱ 6月23日→6月29日に延期を発表

こちらで確認できたものだけでも50社以上、選択肢としては、「延期」>「継続会」>「その他」の順に選ばれる形となっている。

興味深いのは、早い時期に「延期」を発表した会社の中には「配当基準日の変更」もセットで行った会社がそれなりにあったのに対し、最近は、「取締役会決議だけで剰余金処分が可能」「もともと配当の予定がない」というパターンの会社しか「延期」という手段を選択していないように見えることだろうか。

また、当初は少なかった「継続会」方針を公表する会社がここに来て増加傾向にあるように思われ、もしかすると、先週の会社法施行規則の期間限定改正により、「計算書類」の確定がギリギリまで遅れても「郵送」する招集通知の準備を前々で行えるようになったことで、

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