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「東京五輪の中止、理解できる」とIOC会長 BBCインタビュー

ダン・ローアン、BBCスポーツ編集長

国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、延期された2020年東京五輪が来夏開催できない場合、中止せざるを得ないのは理解できると述べた。

日本の大会組織委員会は、新型コロナウイルスの影響で1年延期された大会について、代替案はないとしている。

「組織委員会が3000から5000人の人をいつまでも雇うことはできない」とバッハ氏は20日、BBCスポーツに述べた。「選手たちを不安定な状態に置いておけない」

バッハ氏は幅広い話題に及んだインタビューで、以下の点を述べた。

  • 大会を再組織するのは「とてつもない仕事」だと認めた
  • 大会は「不可欠なもの」に集中し、「明らかに違う」ものになると予告した
  • 大会開催に新型ウイルスの感染症COVID-19のワクチンが必要となるかは答えなかった
  • 無観客での大会開催は「望むものではない」が、現実性を検討する時間が必要と訴えた

大会は来年7月23日~8月8日に開催予定。バッハ氏は、史上初めて延期となった大会が「他に類を見ない」ものとなり、「全世界が再び始めて集い、コロナウイルスへの勝利を祝う、連帯のメッセージ」を発するものとなるよう期待すると述べた。

「青写真はないので日々、対策を新たに考え出さなくてはならない。非常に困難だがやりがいを感じている」

ワクチンは開催にどう関係?

安倍晋三首相は、日本が新型ウイルスを抑え込めないと大会開催は「難しい」と認めている。一方、日本医師会の会長は、ワクチン開発にかかっているとの見方を示している。

この見解に同意するか問われると、バッハ会長は、「この質問については、世界保健機関(WHO)の助言を頼りにしている」と述べた。

「私たちは1つの原則を確立している。それは、大会を全参加者にとって安全な環境で開催することだ。世界が1年後、2カ月後にどうなっているのか誰もわからない」

「そのため私たちは(専門家に)頼り、その助言をもとに適切な時期に適切な決定をしなくてはならない」

2022年北京冬季五輪は、東京五輪のわずか半年後の開催となる。バッハ氏は自身に対して安倍氏が、日本にとっては来夏が「最後の選択肢」であることを明確にしたと述べた。

「率直に言って、これはそれなりに理解できる。組織委員会が3000から5000人の人をいつまでも雇うことはできない」とバッハ氏は述べた。

「主要な団体のすべてのスポーツ競技予定を毎年変えるわけにはいかない。選手たちを不安定な状態に置いておけない」

「将来の五輪大会とあまり重複させられないので、日本のパートナー(組織委員会)による今回のアプローチはそれなりに理解できる」

東京五輪の開催にどれくらい自信があるかと聞かれると、バッハ氏は、「私たちは異なるシナリオに備えなくてはならない。来年7月に開催できるようしっかり取り組んでいく」と答えた。

「同時に、保健衛生の面から突きつけられるかもしれないシナリオを考慮すると、選手全員または選手の一部、他の参加者の隔離が必要になる可能性がある」

「選手村などでの生活はどうなるのか? これらさまざまなシナリオを検討しており、私がとてつもない仕事だというのは、そのためだ。とても多くの異なる選択肢があり、それらに(今すぐ)取り組むのは簡単ではない。2021年7月23日に世界がどのようになっているかがはっきり見えたら、適切な決定をする」

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、200以上の国・地域から1万1000人の選手が東京に集結するのは、不可能ではないが「簡単ではない」と述べている。

日本は新型ウイルスの感染者が1万7100人を超え、死者は797人となっている。感染者数は急激に減少しており、世界的流行(パンデミック)の影響は他の国々よりかなり小さい。

無観客で開催できるのか

来年夏に日本で社会的距離の制限が実施されている場合は、大会を無観客で開催せざるを得ないとの意見も出ている。

バッハ氏はそうしたシナリオについて、「臆測」にとどまっていると述べた。

「私たちが望んでいることではない」とバッハ氏は発言。「なぜならオリンピック精神はファンが一体になることでもあり、これが大会を唯一のものにしている。オリンピックスタジアムで世界中からファンたちが一堂に集う」

「ただ決断となると(中略)選手たちやWHO、日本のパートナーたちと相談する時間を与えてほしい」

IOCは東京2020大会の延期でかかる費用のため、8億ドル(約860億円)を準備している。日本の追加負担は20億~60億ドル(2150億~6460億円)とみられている。

バッハ氏は、大会費用の削減も必要だろうと述べた。

「大会は明らかに違ったものになるし、違ったものでなくてはならない」とバッハ氏は話した。「今回の危機で私たちみんなが何かを学んだとしたら、不可欠なものに目を向け、あったらいいというものはそれほどかまわないことだ」。

「不可欠なものへの集中は大会の関係組織にも言えることだ(中略)何事もタブー視すべきではない」

延期はもっと早く決められなかった?

2カ月前、バッハ氏は大会の延期をもっと早く決めなかったことに対して、選手たちから異例の批判を浴びた。

今なら違った対応をするかと問われると、バッハ氏は、「展開が速すぎて、明日どうなっているかもわからなかった」と説明した。

「楽観的な専門家の『待て、まだ時間はある。まだ数カ月先だ。様子を見よう』という意見と、別の人たちの『大惨事になる。今すぐ決定すべきだ』という見方の間でバランスを取る。その困難に日々向き合っていた」

「しかもこれを日本のパートナーたちと協議してやらなくてはならなかった。彼らを抜きにして一方的に大会を中止することもできたし、ある意味それは簡単な決断だっただろう」

「私たちは『オーケー、これまでだ』と言うこともできた。私たちの負担は保険でカバーできた。そうしてパリ(2024大会)の準備を始めることはできた。だが現実的な選択肢ではなかった。選手たちから唯一無二のオリンピック体験を奪うことになるからだ」

バッハ氏は母国ドイツで先週、サッカーのブンデスリーガが無観客ながら再開されたことは「喜ばしい」と述べた。

「他のすべてのスポーツが再開されることを願っている」とバッハ氏は話した。「一方で、選手たちに同情する気持ちもある。広大なスタジアムで(無観客で)プレーするのは変な感じに違いない」

「これが第一歩であることを望んでいる。スポーツはルールを尊重しなければならず、それは他のすべての組織や社会と同じだ。だがゆっくりと、元に戻って責任ある方法で制限を解除することができるのではないか」

バッハ氏は各国政府に対し、パンデミックで経済危機に直面しているスポーツを、できる限り支援するよう求めた。

「まず何より、スポーツは健康に貢献している。そして今後はもっと健康に気を使う必要があると、誰もが認識している」とバッハ氏は述べた。

「それに、スポーツはいろんな人を受け入れる社会づくりに大きく貢献している(中略)スポーツは社会における最良の接着剤だ」

「さらに、スポーツは経済の重要な要素でもある。ヨーロッパに存在する仕事全体の約3%はスポーツ関連だとの調査があった」

「各政府にスポーツの役割を認めるよう強く求めるのは、このためだ。復興計画にはスポーツを含めてもらいたい」

(英語記事 Bach 'would understand Tokyo cancellation'

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