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自民・世耕参院幹事長が公務員定年延長に異論 検察庁法改正の陰に隠れた議論の本質

AP

自民党の世耕弘成参院幹事長は19日の記者会見で、検察官を含む国家公務員の定年を延長する法案の今国会での成立が見送られたことについて、公務員の定年を延長すること自体に異論を唱えた。

世耕氏は、新型コロナウイルスの感染拡大で経済が疲弊し、雇用環境が厳しくなっている現状をふまえて、「国家公務員や地方公務員だけ給料も下がらないまま、5年も定年延長されて良いのか。それだけの仕事があるなら、いま雇用を失った若い人や就職氷河期のまま正社員に就業できていない人たちこそ、公務員として採用することも考えなければいけない」と発言。

人手不足の経済環境、雇用環境という前提が大きく変わったいま、公務員の定年を延長する議論が成り立つのか考え直す必要性を示した。

民主党政権時代も合わせて10年以上議論

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公務員の定年延長の議論は、2008年に当時の福田康夫政権のもと、行政改革の一環で「国家公務員制度改革基本法」が施行されたことに端を発する。同基本法の中で定年延長については、雇用と年金の接続の重要性に留意し、「定年を段階的に六十五歳に引き上げることについて検討する」とされた。年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられたことにともない、無収入期間が生じないよう配慮する措置だった。

同基本法にもとづき、公務員の定年延長は政権交代した民主党政権時代においても議論が続けられてきた。

定年延長の前に「公務員制度改革の徹底」

今回の騒動の1年前、平成31年3月に自民党行政改革推進本部は、公務員の定年引き上げの必要性について、本格的高齢社会を迎えるにあたり「ありうべき選択肢」としつつ、その前提として、能力・実績主義の徹底など公務員制度改革の中心課題解決が先決であることを指摘していた。

「公務員制度改革」の徹底について
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/policy_topics/gyoukaku/employee_system_reform.pdf

仮に、「公務員制度改革」の徹底を欠いたまま、定年引上げのみを安易に進めれば、政府・与党で推進してきた「働き方改革」の根本哲学とも整合性を欠く事となり、結果として高齢者の活躍できる環境づくりを阻害しかねない。従って、定年延長の法案準備を進める前に、公務員制度改革を徹底すべきと考える。
とりわけ幹部職員に係る改革が十分になされず、能力・実績主義の不徹底、年功序列などを引きずったまま、定年の引上げのみを進めれば、少子高齢社会における「官」、「民」を合わせたわが国労働市場全体の改革との整合性を欠くこととなることに加え、国民の血税によって賄われる公務員人件費の拡大をもたらすことは明らかである。

自民党の行革推進本部は、国の労働市場全体の改革と整合性を欠かず、公務員人件費の拡大をもたらすことがないように定年延長を進める必要があると説明。

〇能力・実績主義の徹底(人事評価の運用改善、給与への反映)
〇人材の流動性向上
〇幹部制度改革(役割の明確化、公募の目標設定、降任を含めた柔軟かつ公正・公平な制度への見直し)

先立って、以上3点について制度改正・運用改善を、まず確実に実施すべきだとしていた。

「官製ワーキングプア」の対応も必要

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世耕大臣の今回の発言は、新型コロナによる経済状況の激変を受けて、これまで高齢社会の労働市場のあるべき姿をめざして進めてきた公務員の定年延長について、その前提が変わったことを指摘したものだった。

一方で、今回の法案提出の前に、昨年の行革推進本部で挙げられた能力・実績主義の徹底、人材の流動性向上、幹部制度改革といった課題が解決されていたのかについては十分な説明が必要だ。

また、現在は年金受給年齢とのタイムラグについては再任用で対応しているが、「厳しい定員事情等もあって(略)勤務形態は短時間勤務の者が約8割となっており、再任用職員の多くが下位の官職に短時間勤務で就いている状況」(公務員人事管理に関する報告)だという。

状況が変化した中で徹底した議論の見直しが必要である一方、“官製ワーキングプア”で苦しむ人々が増えないよう、今後の対応に注目しなければならない。

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