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ロムニー/ライアンという選択肢

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●勝負手のプラス面とマイナス面

大統領選挙に話を戻すと、ロムニー陣営が副大統領候補を発表したのは8月11日であった。ロンドン五輪の閉会を翌日に控え、8月27日からの共和党大会へはまだ2週間以上あるという微妙なタイミングで、従来の感覚からいえばややフライング気味である。が、事前に情報が外に洩れたらアウトであるし、結果的にはメディアの関心をうまくオリンピックから選挙モードへ切り替えることに成功したと言えよう。

副大統領候補として、事前の下馬評に上がっていたのは、ロブ・ポートマン上院議員(オハイオ州)やティム・ポーレンティ元知事(ミネソタ州)などである。これらは無難な選択であり、楽勝ムードの選挙であればそれでも良かったであろう。が、普通の戦い方ではあと一歩届きそうにないロムニー陣営としては、ここで勝負手を放つ必要があった。おそらく以下のような要素を考慮したのではないかと思う。

 (1)無難な選択よりはサプライズを (ロムニーはいつも「無難」を選ぶ印象あり)
 (2)富裕層or大金持ちでない人を  (ロムニーは反感を買うほどの金持ち)
 (3)年齢的にはなるべく若く    (ロムニーはすでに65歳と若くない)
 (4)保守派の支持を集められる人  (ロムニーは党内右派の支援が弱い)
 (5)できれば激戦州の出身者    (特に中西部州出身者が望ましい)
 (6)ワシントン政治に詳しい人   (ロムニーはワシントン経験が少ない)
 (7)主役を食わない程度のキャラ立ち(2008年、ペイリン候補の失敗は避けたい)

ポール・ライアン下院議員は、この7条件を全部クリアしている。(1)抜擢人事だし、(2)普通の家の出身だし、(3)まだ42歳だし、(4)財政タカ派の星であり、(5)ウィスコンシン州は「やや民主党寄りの激戦区」だし、(6)下院議員として7期務めて予算委員長であり、(7)も十分に有資格者といえよう。 もっとも勝負手には、マイナス材料もつきものである。特に気になるのは、ライアンがメディケア改革を標榜していることで、共和党が高齢者票に逃げられるという懸念である。特に共和党が、高齢者の多いフロリダ州やアリゾナ州で苦戦するかもしれない。その意味でも、来週、フロリダ州タンパで行われる共和党大会の地元での反響が注目される。

いずれにせよ、2012年選挙は今まで「オバマ対それ以外」の構図であり、「どちらを選んでも中道派、穏健路線」であった。それがライアン副大統領候補の登場により、「大きな政府か、小さな政府か」を選択する選挙となった。仮に今回、ロムニーがあっけなく敗れ去ったとしても、若きライアンには「次のチャンス」が回ってくるだろう(ウィスコンシン州の法律では、副大統領と下院議員の重複立候補が可能である)。そして2016年には、高齢化問題はさらに深刻になっているはずである。 

伝統的に共和党は、いくつもの勢力の連合体であった。冷戦時代には、「反共産主義」を全体の旗頭としていた。ところが冷戦終了とともに、共和党は党全体を集約するテーマに事欠くようになる。「中絶反対」や「反同性婚」、あるいは「プロビジネス」などでは、党全体をまとめることはできないのである。ブッシュ時代には、テロとの戦いでの「強いアメリカ」が有力視されたものの、それも長く維持することはできなかった。

つまるところ、今の共和党では「小さな政府」という経済保守思想こそが党を挙げて一致できるテーマであり、そのことはおそらく2016年にも続いていることだろう。

●日本へのインプリケーション

あらためて秋に向けての日米の政治日程をまとめてみた。

野田首相は既に「近いうち」に国民の信を問うことを明言している。そこで解散・総選挙の時期を考えるときに、最大の焦点は10月12~14日に予定されている世銀IMF総会であると筆者は考えている。東京開催は1964年以来のことであり、それは3/11震災直後に決まったことである。従って日本政府としては、全世界から集まってくる関係者に向けて、「震災時の協力へのお礼」を言わねばならない。このときに「総理大臣不在」の政争を繰り広げていては、さすがにまずいのではないだろうか。 そうであれば、10月下旬に臨時国会を召集し、定数是正や特例公債の問題を片づけた上で、冒頭解散というのがもっとも自然な選択になるだろう。この場合、11月の中旬から下旬が総選挙ということになる。

その際には、11月6日の米大統領選挙の結果が、日本における投票行動にも影響するのではないかと思う。なにしろ2012年米大統領選挙は「雇用か財政か」が大テーマであり、その結論に対して無関心であることはできないはずだからだ。

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