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「事故物件」を取り扱う成仏不動産の狙いは何か? - 中西享(経済ジャーナリスト)

一戸建て住宅やマンションで、自殺や火災、孤独死などが発生した「事故物件」を中心にした、売りたい(貸したい)人と、買いたい(借りたい)人をマッチングさせるWEBサイトがある。「嫌われる物件」を仲介させて成約(成仏)させることから、「成仏不動産」と呼ばれている。サイトをオープンして約1年になる運営会社NIKKEI MARKS(横浜市中区)の花原浩二社長にその狙いは何かについて聞いた。

(Sundaemorning/gettyimages)

一戸建て住宅やマンションで、自殺や火災、孤独死などが発生した「事故物件」を中心にした、売りたい(貸したい)人と、買いたい(借りたい)人をマッチングさせるWEBサイトがある。「嫌われる物件」を仲介させて成約(成仏)させることから、「成仏不動産」と呼ばれている。サイトをオープンして約1年になる運営会社NIKKEI MARKS(横浜市中区)の花原浩二社長にその狙いは何かについて聞いた。

半数が条件次第では住みたい

同社の市場調査で「事故物件」に住みたいかどうかを聞いたところ、48%が「住みたくない」に対して43%が「条件次第では住みたい」で、比率はほぼ半々という割合。取引が成立した案件のアパート賃貸、マンション購入者に聞いてみると、「事故物件」に対する強いアレルギーのある人がいる反面、「殺人や自殺は不可だが、孤独死なら気にならない」という人も意外と多くいる。

中には人気のエリアだったことから、通常の相場が6500万円だったが4880万円で孤独死の「事故物件」を売り出してサイトに掲載すると、すぐに契約が成立した東京都稲城市の戸建てのケースもあるという。

年間3万件の孤独死

全国で発生する年間の孤独死は3万件、このうち2018年に東京23区内の自宅での孤独死が8000件を超えた。また自殺は全国で2万件。最近は高齢者が孤独死するケースが増える傾向にあり、25年には1人暮らし高齢者が700万人に達し、孤独死が社会問題になると予想されている。そうなると住んでいた住居は「事故物件」となりがちだ。物件のある場所にもよるが、殺人事件が起きた場合、相場は半分に下落、自殺は5割から3割、孤独死は2割から1割下がるという。

一般的に「事故物件」はいくらで売買できるか分からないため、「事故物件」と聞いただけで敬遠されることが多く、不動産業界では厄介者扱いされてきた。仲介業者も取り扱いをしたがらないようで、金融機関は「事故物件」の場合には査定しにくいことなどから、購入者への住宅ローンを認めないところもあるという。

「市場を作りたい」

花原社長は、阪神大震災の被害を目の当たりに見て地震に強い家作りの評判があった大手の住宅メーカーの大和ハウス工業に入社。優秀な営業マンだったが、8年半前に横浜の分譲住宅営業所に転勤になり、土地造成から住宅販売までを経験した。しかし、5年前に父親が亡くなったのがそれまでの生き方を見直すきっかけになり、不動産で小回りの利くことを思い切ってやってみようと、既存の会社を基に「NIKKEI MARKS」という会社を16年10月に創業した。

当初は土地を安く仕入れて販売したり、マンションを購入してリノベーションして販売していたが、売上が増えて実需が付いてきたので、20年先を見越して次の一手を考えたという。「スキマスペースの活用を目的としたバイクパーキング事業、中国・韓国・シンガポールへの日本の不動産販売を行うインバウンド事業、そして人が亡くなった不動産の流通を図ることを目的とした『事故物件総合取扱いサイト』の運営という3本柱を動かそうと考えた。もらい手が見つからない不動産が、もらい手が見つかるのが『成仏』になると思いこの名前を付けた」と話す。

そこで昨年の4月に「事故物件総合取扱いサイト 成仏不動産」をスタートして、これまでに32件の取引が成立したという。現在は約200件の物件を掲載し、その内訳は、賃貸が6~7割で、残りが売却。地域的には全国で取り扱っているが、関東地区が圧倒的だという。最近はメディアに紹介されたこともあって、サイトに物件を掲載したいという依頼が増えたそうだ。

「4月からは物件を掲載するプラットフォームを新しくして、ほかの不動産業者からの『事故物件』も掲載するようにして、サービスを拡大している」と手ごたえを感じている。

不透明な取引条件

「事故物件」の定義は、殺人から自殺、孤独死、火事などいくつかあり、不動産仲介業者は顧客にその内容を告知する義務がある。しかし「事故物件」の定義を巡ってはグレーな部分が多く、それが原因で、売買、貸し借りの双方で精神的負担になることがあり、裁判沙汰になることもあるという。

例えば、安くて良い物件だと思って問い合わせると「事故物件」だったという情報のミスマッチ。そもそも何年前の事件発生から「事故物件」に該当するのかも決まっていない。このため、国土交通省は今年2月から「不動産取引における心理的に関する検討会」を開催、どういう場合に「事故物件」に該当し、売主は買主に、貸主は借主に説明する義務があるのかなどについてガイドラインを決めようとしている。

花原社長は「これまでひと括りであった『事故物件』を精神的な負担に応じて、4月から7つの区分に分ける新基準を設けることにした。『事故物件』とは言っても、人によって許容範囲が異なるので、最も負担の重い殺人から、自殺、火事、発見までに72時間以上の孤独死・病死、同72時間以内の孤独死・病死、共用部分での事故、墓場や火葬場が見えるーの7分類にすることで、選べるようにしたい」と話す。

イメージアップ

「最近のケースでは、神奈川県にある相場400万円する孤独死があったマンションを成仏不動産のサイトに100万円で掲載し、間もなく成約できそうだ」という。そうなると、購入者は400万円と100万円の差額分をリフォームやDIYなどに使えるようになる。花原社長は「事故物件でも好立地、低価格の条件が良ければ住みたいという人や、価格の安い分、その差額を使ってDIYで自分の好みに合うようにリフォームするという人もいる」と指摘する。

同社が行った市場調査によると、「自殺だと悔いが残ってそうな感じがして嫌だが、病死なら最後まで慣れ親しんだ部屋で過ごせたのだと思える」として、それほど気にはしてない人もいる。

つまり、花原社長は「『事故物件』に対する心理的負担の度合いに応じて、選択肢を提供することが重要だ」とみており、今後は価格の安さだけでなく、リフォームなどを加えて付加価値をつけて「事故物件」のイメージアップを図りたいとしている。

「今後は高齢者や外国人など、住宅を探すのが難しい人たちのために、『事故物件』を提供できるようなマッチング事業も展開していきたい。アパートのオーナーなどは高齢者には孤独死リスクがあるため貸したくないので、高齢者は借りられるアパートが見つかりにくい。そこで、借主を探すのに困っている『事故物件』のアパートオーナーとマッチングさせることで両方がハッピーになれるのではないか。外国人の場合も同じようなことが言える」と話す。

花原 浩二(はなはら・こうじ)1995年に大和ハウス工業に入社、同期入社の中でトップの成績で2011年に横浜支社分譲住宅営業所所長、15年に同支社住宅事業部次長。16年10月からNIKKEI MARKSの社長。兵庫県豊岡市出身。43歳。

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