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アングル:コロナで文化の伝承失う恐怖、中南米の先住民が村を閉鎖


Cassandra Garrison Marina Lammertyn Anthony Boadle

[ブエノスアイレス/ブラジリア 11日 ロイター] - 中南米各地の先住民族は、自らのコミュニティを外部の世界から切り離しつつある。伝統の守り手である部族の長老たちが新型コロナウイルスの感染リスクにさらされると、自らの文化に重大な脅威になると懸念しているからだ。

岩場の広がるアルゼンチンのパタゴニア地域、樹木の生い茂るブラジルのアマゾン川流域、コロンビアのアンデス山脈の村落に至るまで、先住民族たちは自らの村を封鎖して外部の人間を近づけず、隔離のルールに違反した村民を厳しく罰している。

世界銀行のデータによれば、ラテンアメリカには先住民族4200万人が暮らしており、人口の約8%を占めている。だが、鉱業、石油採掘、森林伐採の急速な発展により、彼らの生活様式はただでさえ脅かされている。

そして、新たに壊滅的な影響を及ぼしかねないリスクとなっているのがウイルス感染である。新型コロナウイルス感染による合併症にかかりやすい高齢者は、消滅の恐れのある多くの伝統・言語の守り手なのだ。

アルゼンチン北西部、アマイチャ・デル・バレ先住民居留区のコミュニティ指導者であるエデュアルド・ニエバ氏は、「長老たちが根本的に重要なのは、特に私たちのアイデンティティに関して様々な記憶を保持しているからだ」と語る。

ラテンアメリカの先住民族は無文字文化であることが多く、その歴史が文書の形で記録されていない場合がある。長老たちの口承によって、世代から世代へ伝達されているのだ。

「先住民族の智恵はすべて口承により世代から世代へと伝えられていく。つまり、長老たちは蓄積された経験をすべて保持している」とニエバ氏は言う。「そうやって彼らが保持している経験こそ、私たちが守ろうとしているものなのだ」

アマゾン流域、ブラジル国内で最も古い先住民族保護地区のシングでは、このコミュニティに属する16の部族が毎年集まり、生と死、再生を祝う儀式クアルプダンスを営むうえで、長老たちによる指導が不可欠となっている。

「非常に懸念している。もし長老たちを失えば、文化的伝統、宗教儀式だけでなく、伝統医療の知識も失うことになる」と語るのは、アマゾンの先住民族の生活を記録している映像作家ジャイル・クイクロさん(32)。

クイクロさんの祖母は、「ヤムリクマ」と呼ばれる、多産を願う女性だけの儀式に向けた聖歌の伝承者である。

「祖母がウイルスに感染し亡くなってしまえば、彼女の歌は後継者もなく失われてしまう」とクイクロさんは言う。

ラテンアメリカの農村地域は、世界のなかでも新型コロナウイルスのまん延から最も離れた地域の1つであり、こうした辺境の地域では検査の機会も限られている。だが公式データによれば、ウイルスはこうした地域にも広がりはじめている。

複数の先住民指導者によれば、彼らのコミュニティでは、高齢者が自らの生活領域から出なくても食糧や日用品が行き渡るよう、特別な配慮を払っているという。

<数百万人死亡の歴史>

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのキャロライン・スティーブンス教授(グローバル医療)によれば、ラテンアメリカの先住民グループのなかには、人口わずか数百人規模のものもあり、新たな感染症に対して特に脆弱であるという。同教授はこれまで、世界各地の先住民コミュニティを研究してきた。

スティーブンス教授は、新たなウイルスによって生じかねない事態の例として、ラテンアメリカに入植した欧州人の第1波が持ち込んだ天然痘などの疾病により、現地住民が数百万人も死亡する結果となったことを挙げる。

少なくとも35の先住民コミュニティが公式に認定されているアルゼンチンでは、高齢者への脅威を懸念するあまり、いくつかの先住民グループが、外部の世界からの孤立という極端な措置に訴えている。

マプチェ族の指導者の1人、レルム・ニャムク氏によれば、アルゼンチン北部のトゥクマン、サルタ両州では、いくつかの先住民コミュニティが自らの村に続く道にバリケードを築いているという。

別の例では、これまでは麻薬密売など他の犯罪を取り締まっていた地元の警備員が、外部の人間を排除するために展開されている。

ブラジルのシング居留区の住民は、1950年代に流行した麻疹(はしか)により、カラパロ族の村民半数近くが命を落としたことを記憶している。

同居留区へと続く道は封鎖され、医療従事者を除けば、外部の人間は入域を許されない。

コロンビア国内、エクアドルと国境を接するナリノ州では、先住民パスト族のコミュニティが隔離ルールを厳格に施行しており、違反者には身体的な刑罰が科せられている。

地元メディアで紹介された、4月以降に携帯電話で撮影された映像では、コミュニティ指導者により隔離ルールに違反したとされる若い男性が、牛革製のむちで3回打たれて苦しむ姿が映っている。パスト族の指導者であるパブロ・タイマル氏は、この映像が事実であることを認めている。

タイマル氏は、「先住民コミュニティの警備員は、私たちのコミュニティの健康と品位を守るために必要な仕事をするよう命じられている」と言う。同氏によれば、心配なのは、新型コロナウイルスによって医療システムが限界に達しているエクアドルから越境してくる人々だという。

先住民の人々は、コミュニティ内の長老たちは、何世紀も前から伝わる伝統医療の知識を持っている場合が多いという。抗酸化作用のあるヤーコンという植物の根もその一例だ。

「マプチェ族の人間としては、よく知られた薬草を摂れば病気は治る」と語るのは、チリ南部ビオビオ地域で暮らすマプチェ族の女性、エステラ・アストーガさん(77)。

先住民の伝統医療が新型コロナウイルス感染症などの治療に有効かどうかはまだ証明されていない。

先住民コミュニティのメンバーによれば、何かを決める際に若い世代が長老の家を訪れて助言を求めるというのも、一般的に見られる伝統だという。だがそうした慣例も、今では感染を警戒して中断されている。

アルゼンチン南部チュブト州に住むマプチェ族の女性ローザ・ニャンクチェオさん(61)は、「祖母たちはコミュニティにおける相談役だった。長老たちは、祖先から受け継いだ智恵を伝える存在であり、私たちをまとめ、指示を出し、精神面でのアドバイスを与えてくれる」と語る。

「だが最近では、顔を合わせる機会が減っている」

(翻訳:エァクレレーン)

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