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コロナショックが苦境の新聞業界にトドメを刺す恐れ 新興メディアにも撤退の動き

[ロンドン発]新型コロナウイルスでニュースメディアの淘汰が加速しています。米新興メディアのBuzzFeed(バズフィード)がイギリスとオーストラリアでのニュース事業を停止。さらに、300年に1度とも言われるコロナ不況はインターネットの台頭に苦しめられてきた紙媒体にトドメを刺す恐れがあります。

Pixabay

バズフィードUK(イギリス)は2013年にロンドン・オフィスを開設。イギリスで起きたロシアに関連する14人の不審死をスクープし、17年のピューリッツァー賞の候補になりました。今回のパンデミックでも都市封鎖の解除に向けた7つのイギリス政府原案を特ダネで報じたばかり。

それだけにニュース事業停止はイギリスメディア業界に衝撃を与えました。

バズフィードの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のジョナ・ペレッティ氏は2014年に(1)革新的なテクノロジーによる強力な出版プラットフォームの構築(2)リーチできる読者が10倍にも100倍にも拡大(3)人材の多様化を挙げ、こう宣言しました。

「私たちはメディアの新しい黄金時代のスタート地点に立っている」。中華街の小さな事務所でウェブ上のコンテンツをまとめていたのが、わずか数年のうちにシリアやウクライナの最前線からセキュリティーガードを伴って胴体防護具・ヘルメットを着け、衛星電話でニュースを伝えるまでに急成長しました。

Getty Images

2006年にバイラルメディアとしてスタートしたバズフィードにとってニュースはクリックを稼ぎ出す次のステップになるはずでした。しかし、ニュースを取材して伝えるにはおカネと時間がかかります。さらに悪いことに本格派のニュースほど、なぜかクリックを稼げるネコの写真のようにはバズってはくれません。

コロナ不況で収入源の広告出稿が激減すれば真っ先に切られるのは金食い虫の取材(ニュース)部門、特におカネのかかる海外拠点です。バズフィードは本拠地アメリカでもスタッフ68人を一時帰休しました。

バズフィードは競争相手が増えて成長が鈍り、投資家にとって魅力が薄れてしまいました。さらに読者層の18~34歳は広告に見向きもせず、親世代に比べてあまり消費しません。広告主にとってもバズフィードに広告を載せるメリットがあまり感じられなくなっていたのです。

ニュースでおカネを儲けるのは難しいのが現実です。バズフィードUKのアレックス・ウィッカム政治部長は5月13日「私たちの仲間を誇りに思う。体力以上の健闘をし、本当に素晴らしいジャーナリズムを実践した。彼らは燦然(さんぜん)と輝いている」とツイート。同業他社からも閉鎖を惜しむ声が相次ぎました。

コロナ禍が20年間苦境だった新聞業界にトドメを刺すか

もっと厳しいのは既存メディア、特に地方紙です。英紙ガーディアンのコラムニスト、ロイ・グリーンズレイド氏は「過去20年間苦しんできた新聞の多くに、今回のパンデミックはトドメを刺すだろう」と指摘しています。

イギリスでは3月23日に外出禁止令が出され、都市封鎖に入り、人の移動は制限されました。多くの人が自宅でインターネットかテレビの前で過ごすようになりました。

Getty Images

イギリスの新聞の売り上げは売店の即売が中心で、日本のような戸別宅配制度はほとんどありません。売り上げは都市封鎖から最初の1週間だけでも最大30%ダウン。同国は過去300年で最悪の不況に突入する恐れがあり、新聞社は大幅な人員削減を強いられています。

すでに一時的に紙の新聞発行を取り止めたり、発行部数を劇的に減らしたりする地方紙が相次いでいます。紙の新聞が正確な情報を入手する唯一の手段という地方のお年寄りたちはコロナ禍の最中だというのに、”情報砂漠”に取り残される恐れが指摘されています。

フリーランスのジャーナリストらでつくるイギリス全国ジャーナリスト組合(NUJ、the National Union of Journalists)が4月24日から5月10日にかけメンバーの1200人以上を対象に調査したところ、3分の2がパンデミックによって財政的に苦しんでいると回答しました。収入の80~100%を失ったのは全体の18%にものぼりました。

NUJによると、スポーツ、芸術、旅行、他のイベントや活動が都市封鎖で完全に中止されているため、担当記者は仕事を失ってしまいました。45%は「雇用主が編集スタッフを一時帰休させている」と言い、84%が人員整理にともなって解雇されることを恐れていました。

NUJのミシェル・スタニストリート書記長はこう述べています。

「重要な公共サービスの一部をなしているわれわれ業界とジャーナリスト、メディアワーカーを支援する緊急の支援が確保されない限り、より深刻な影響が出るのは避けられない。この危機は質の高いジャーナリズムとニュースの果たす私たちの役割を改めて強調している」

このため、イギリスのオックスフォード大学に設置されているロイター研究所は「世界中の多くのニュースメディアが壊滅的な収入の減少に直面する恐れがあり、大幅なコスト削減と最悪の場合は閉鎖を検討している」として、編集の独立性を保ちながら財政的な支援を行う枠組みを立ち上げました。

広告激減で日経新聞のページ数2割減という惨状

アメリカでも新聞発行を取り止めたり、発行部数を減らしたりする地方紙が続出しています。日本でも、河野太郎防衛相が自らのブログ「ごまめの歯ぎしりで」で「新型コロナウイルスと新聞広告」と題して気になる指摘をしています。

写真AC

「新型コロナウイルスが経済に大きな影響を与えています。その影響の大きさがわかるひとつの例が新聞広告です」

(河野太郎『ごまめの歯ぎしり』2020年5月3日より)
https://www.taro.org/2020/05/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A8%E6%96%B0%E8%81%9E%E5%BA%83%E5%91%8A.php

 

それによると、日経新聞はページ数が40ページから32ページに減り、広告出稿が激減していることがうかがえます。書籍広告以外は自社関係の広告だけと言っていいほどの惨状です。他の大手全国紙も同じような状況だそうです。

業界では超優良企業の日経新聞がこれでは、パンデミック以前から経営が苦しい産経新聞、毎日新聞がどうなるのか心配です。

パンデミックでいくら電子版の記事を読む人が急増して有料購読者が増えても、コロナ不況で広告出稿が途絶えれば新聞社のビジネスモデルは成り立ちません。「生命も大事だが、経済を死なせるわけにはいかない」という論調は当然、強まってくるでしょう。

新聞社を早期退職して独立、インターネットにジャーナリスト活動の軸足を移した筆者は、インターネットはグローバルに人をつなぐ反面、人々の関心や興味を収斂させていくパラドックス(逆説)が働いているように感じています。

世界が広がれば広がるほど、人々の関心はより内向きになり、自分たちの伝統や文化に一層こだわるようになります。一つ例を挙げると欧州連合(EU)の統合と深化がいくら進んでも、欧州を代表するようなメディアは現れません。バズフィードのイギリスやオーストラリアのニュース事業停止はその証左かもしれません。

ニュースメディアは読者とのつながりを大切にし、読者の知る権利に応えることでお代を頂戴するという原点に立ち戻ることでしか生き残れないと痛感します。しかし、ここにも無料で無尽蔵の情報が収集できるのがインターネットだというパラドックスが働きます。

新型コロナウイルスは旧態依然としたビジネスモデルを一掃してしまう恐れがあります。紙の新聞の宅配読者が圧倒的に多い日本の新聞社は果たして、どこまで生き残ることができるのでしょうか。

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