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検察庁法改正案の問題は何か 〜 民主的統制である情報公開の視点から

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ちょっと長いのですが、今般の検察官の定年延長に関する検察庁法改正案についての考えをまとめましたので、読んでいただければ幸いです。

【行政の一部であり“準司法的”機関でもある検察官】

実は、検察トップの人事をどうするかは実は難しい問題です。確かに検察官も行政組織の一部だし、“検察の暴走“も否定できないので、限定のない独立性や自律性を与えるのも怖いなぁと感じている人もいるでしょう。なので、内閣の統制を受けることも必要ですし、実際、検事総長らの任命権者は内閣となっています。(検察庁法15条)

*なお、最高裁長官も内閣が指名するので、任命という人事の「入口」に内閣(行政)が関与するからといって、三権分立が必ずしも害されているとは言えません。三権分立が厳格に運用されているとされるアメリカでも、最高裁判所の裁判官は大統領が任命します。

一方、行政官である検察官には、その行政のトップである内閣総理大臣さえ逮捕できる強大な権限が与えられています。憲法77条には「検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。」と「準司法的」機関としての定めもあり、行政組織の一部でありながら、その中立性や独立性を担保する絶妙の配慮が、これまでも制度上なされてきました。例えば、検察庁法23条では、検察官は検察官適格審査会の議決を経なければクビにならないこととされています。

また、各省庁の幹部人事を一元管理する仕組みとして創設され、「忖度役人」の温床だと批判される「内閣人事局」も、検察官の人事については内閣総理大臣や官房長官への協議の対象外です国家公務員法第61条の8第1項)。もし、定年の延長と同様、検察官が人事において他の公務員と全く同じ扱いにすべきと言うなら、この規定も改正すべきではないでしょうか。しかし、今回の検察庁法改正案には入っていません。法案の中に矛盾があるとも言えます。

【判断の前提は民主的統制の原点、情報公開】

いずれにしても、検察官は行政組織の一部でありながら「準司法的」機関なので、

  • 「定年延長」反対派からすれば「三権分立を侵すから問題だ」
  • 「定年延長」賛成派からすれば「行政なんだから他の公務員と同じで当たり前だ」

という論争が必然的に出てきます。

では、どちらが正しいのか。

私は、これまで歴史的経緯や現行法の体系を踏まえれば、検察官の独立性、中立性を尊重する立場です。ただ、行政による法解釈の変更やそれに基づく法改正を頭から否定するものでもありません。

しかし、それは条件次第です。

では、その条件とは何か。

それは立法理由とプロセスの徹底した情報公開が適切に行われることです。

時に、法令の解釈は変更されます。ただし、長年にわたって維持されてきた解釈を変更するには、合理的理由があり、そのプロセスが広く国民に公開されなくてはなりません。

黒川検事長の定年延長は、現行法の「解釈変更」によって認められたもので、今審議中の検察庁法改正案によって新たに認められるわけではありません。

にもかかわらず、「黒川さんのための法改正」とか「違法な解釈変更を後付けで正当化する法改正」との疑念が消えないのは、政府が以下のシンプルな問いに答えていないからです。

【解釈変更や検察庁法改正の理由が非公開】

①なぜ、検察官に定年延長と役職定年を新たに導入しなければならないのか

昨年10月に法務省がまとめた検察庁法改正案には、検察官の定年延長と役職定年を認める規定がなかったのに(退職年齢の引き上げ規定のみ)、今年になって出てきた法案に突然入った理由は何か。武田大臣の「時間があったから追加した」旨の答弁には到底納得できません。法務大臣自身も、黒川さんのケース以外に定年延長を認める理由はないと国会で認めています。理由が分からないというか、ないのです。

②なぜ、黒川氏の定年延長を決めた1月31日以前に、法解釈を変更したことを裏付ける物的証拠がないのか

今年1月末に政府部内で「解釈変更」を行ったとされていますが、人事院から法務省に対して「(解釈変更に)異論がない旨」回答したとされる文書には作成日付がなく、黒川氏の定年延長を閣議決定した1月31日よりも前に作成されたことを証明できる文書や電子データがいまだに出てこないのはなぜか。

2月10日に、山尾志桜里議員が「検察官は国家公務員法の定年延長制の対象外」という過去の国会答弁の存在を指摘してから、後付けで解釈を変更したのではないかとの疑念は消えません。人事院の松尾局長は私の国会での質問に対し、直接手渡したので日付は入れなかったと答弁しましたが、理由になっていません。

この2つのシンプルな問いかけに対して、政府から納得できる説明や資料は、国会にも国民にも全く示されていません。つまり、今回の検察庁法改正や、その前段の黒川氏の解釈変更による定年延長には、合理的な理由もなければ適正なプロセスもないのです。よって、今回の法改正は、政権が恣意的に検察権を行使することを可能とするための改正と言われても仕方がないのです。

なお、政府は、黒川氏の定年延長に関する情報公開請求に対して、その法的根拠を検討した文書は「不存在」と回答しています。(5月16日毎日新聞報道)これでは、誰も納得できないでしょう。

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