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伊藤忠商事の定時株主「出席禁止」総会に関する素朴な疑問

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そして最後に会社法319条との関係です。株式会社では、実際に株主総会を開催しなくても、取締役会で決定した議案を株主に送付して、すべての株主が会社議案に賛成の意思を表明していれば、株主総会における決議があったものと「みなす」という規定です。つまり株主に対して「書面決議」を行うことについてあらかじめ同意を得ていなくても、事実上の書面決議が認められるからこそ「総会での決議があったものと」みなすわけです。

どうして書面による(株主間での)持ち回り決議をもって「総会が開催されたものとみなすのか」という趣旨ですが、それは全株主の会社議案に対する書面による賛成があるならば、会社運営の効率性の見地からは(たとえ株主が「書面決議はけしからん」と主張しても)会議体としての株主総会を省略してもよい、という判断です(前も申し上げましたが、株式会社法は、株主の権利の制限根拠として、全体の運営における効率性はかなり重視されています)。逆にいうと、全株主の会社議案に対する賛成が期待できない場合には、会議体としての株主総会は省略できないわけです。

伊藤忠さんの事例でいえば、あらかじめ会社議案に反対票を投じる株主さんも(少数かもしれませんが)いらっしゃるので、当然のことながら会議体としての株主総会を開催する必要があります。では、この「会議体」が現実の株主出席を禁じるものでもよいのか、という疑問です。

いままで説明した319条の趣旨からすると、事前に書面もしくはインターネットで議決権を行使した株主が定足数のうえで出席株主として扱われるからよいのではないか、という理屈は成り立たないと思うのです(事前の書面行使、インターネット行使の有無は「会議体」が必要かどうか、という法律要件の問題であり、「会議体」といえるかどうか、という判断の要件にはなりえない)。

私は6月総会は完全延期すべき、との意見です。会計監査、監査役監査への十分な資源の確保、株主の安全を確保したうえでの総会出席の必要性、機関投資家の要請(具体的には国際コーポレートガバナンスネットワークの4月23日付け書簡)、法務省、金融庁、経産省による指針の公表、国税庁の指針等、7月以降に総会を延期することの障碍は取り除かれました。

それでも6月総会を実施することが経営判断として必要であるならば、簡素化したうえでの6月総会もやむをえないのかもしれません。しかし、簡素化にも限度があると考えます。株主への当日出席自粛を要請するところまではわかりますが、どうしても出席禁止とインターネット参加の省略はリスクが高い。コロナ禍において、6月しか総会を実施できないという事情があれば別ですが、7月以降に延期するという選択肢がある以上、その選択肢を無視してまで株主締め出し総会を実施することについては、「例外的な措置をとることを正当化するやむをえない理由」が見当たらないと考えます。

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