記事

4月の自殺者数が前年比で約20%減も楽観できず 経済的困窮者への支援が急務

1/2

厚生労働省は5月12日、「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」を発表した。4月の自殺者数は、昨年より359人少ない1455人で、前年比約19.8%減少したと報告している。また、今年1月~4月の累計でみると自殺者数は6260人で、前年比約10.2%の減少となった。


年明けから、国内で新型コロナウイルスの感染拡大がはじまり、1月下旬には自宅勤務を開始する企業が現れた。2月に入ってからも感染拡大が続き、休業要請や休校措置、自宅勤務の実施が呼びかけられたこともあり、自宅で過ごす時間が大幅に増えた。

外出をする機会が減り、例年に比べると人の動きに大きな変化が起きている。こういった生活環境の変化が、自殺者数の減少につながったのではないかとの見方もある。

中退・不登校者向けの学習塾「キズキ共育塾」を運営し、新宿区自殺総合対策会議の委員を務める株式会社キズキ代表の安田祐輔さんは、「『経済死んでも、自殺者減ってる』と思うのは短絡的」だとして、Twitterで警鐘を鳴らす。

4月の自殺者数減少はどのような要因が考えられるか、また新型コロナウイルス感染拡大による経済的ダメージは今後の自殺率にどのように影響してくるか安田さんに聞いた。

外出自粛によるストレスからの解放で「危機要因」は減少

――4月の自殺者数が前年比約20%減となったのは、どのような要因が考えられますか。

NPO法人ライフリンクが発行する自殺実態白書によれば、自殺に至るまでの年月は5年(中央値)、平均7.5年(平均)となっており、また人が自殺に至るまでは平均3.9個の危険要因があります。

人が自殺に至るのは、複数の要因が長い年月にわたって積み重なった結果ですので、何か一つの出来事が決定的に自殺を減らすというのは考えづらいと思います。

一方、学校や職場でストレスを抱えていた方がストレスから解放されたことで「危険要因」が減ったということは考えられると思います。

――今年は、4月だけではなく1月~3月も自殺者数が減少しています。

近年、自殺は年々減っておりました。警察庁統計によれば、令和2年の自殺者数は1月(1667人)、2月(1434人)、3月(1704人)、4月(1455人)でした。自殺者数についていえば、2月の方が4月よりも低かったことになります。

なぜ4月がとりわけ減少したかといえば、前年の平成31年4月の自殺者が多かったためです。平成31年は1月(1678人)、2月(1611人)、3月(1841人)、4月(1800人)であり、「平成31年の4月の自殺者数がほかの月と比較して多かった」ことが分かります。

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H31/R0112jisatu_sokuhou.pdf (平成31年/令和元年)
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R02/202005jisatusokuhouti.pdf(令和2年)

雇用・経済環境の悪化が自殺率を急増させる恐れも

――自殺要因の発現から亡くなるまでの年月を考えると、今回の自粛生活の影響は今後どのように及んでくると考えられますか。

日本の自殺者は1998年に前年比で35%増加して3万人を超えました。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-07-002.html

その時の京都大学の研究によれば、「98年以降の30歳代後半から60歳代前半の男性自殺率の急増に最も影響力があった要因は、失業あるいは失業率の増加に代表される雇用・経済環境の悪化である可能性が高い」とされています。
http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou018/hou018.html

コロナ自粛によって雇用・経済環境が悪化すれば、1998年の頃のような自殺率の急増はあり得るかもしれませんし、それを防がなければなりません。

また、この研究によれば「都道府県別年齢階層別データの統計分析は、近所づきあいの頻度が高い地域で自殺率が低い傾向にあったことを不完全ながらも示している」と記載があります。

外出自粛によって人間関係が希薄化することは、マイナスの影響も考えられると思います。

あわせて読みたい

「自殺」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    中国ダム決壊危機 世界的影響も

    郷原信郎

  2. 2

    減税よりGoTo政策「利権の典型」

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    「GoTo中止を」SNSで批判が殺到

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    トヨタ超え テスラCEOの不気味さ

    片山 修

  5. 5

    司法が医療破壊 逆転有罪に苦言

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    「東京差別」で社会構造変わるか

    にしゃんた

  7. 7

    政府は医療従事者を守る気あるか

    畠山和也

  8. 8

    米政権が感染拡大で医師に怒り

    飯田香織

  9. 9

    修学旅行中止でGoTo推奨する矛盾

    原田 謙介

  10. 10

    GoToでは救えない宿泊業界の淘汰

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。