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福島市長に問う。なぜ記者クラブとフリーランスを区別するのですか?

なぜ為政者は「記者クラブ」と「フリーランス」を区別したがるのか。改めて考えさせられる出来事があった。福島市保健所で14日午前に行われたPCR専門外来(ドライブスルー方式)のデモンストレーション。自身の近くに移動して来た筆者に福島市の木幡浩市長が「そこは邪魔」、「記者クラブ優先だから」と声をかけたのだ。仮に迷惑をかけたとしても、それと記者の属性は関係ない。取材現場で当局が記者クラブを優先するなど言語道断。報道の自由にかかわる。問題提起の意味もこめて、木幡市長とのやり取りを報じたい。


【「記者クラブ優先ですから」】

 「鈴木さん、そこ邪魔だから」
 しゃがんでカメラを構えたところで突然、声をかけられて驚いた。
 14日午前に福島市保健所で行われたPCR専門外来(ドライブスルー方式)のデモンストレーション。福島県内初のドライブスルー方式導入とあって、多くの地元記者やカメラマンが取材に来ていた。筆者は他の撮影の邪魔にならないように気を付けながら、テントの中に入って撮影を試みたのだった。
 声の主は福島市長・木幡浩氏。確かに他のカメラマンより踏み込んだ位置だが、取材陣からは特に声はあがらなかった。保健所職員からも注意を受けなかった。テントの隅でデモンストレーションの様子を腕組みしながら見ていた自身の前を横切られた事で腹が立ったのだろうか。「ここで撮影しては駄目ですか?」と言った筆者に、木幡市長は驚くべき言葉を放った。
 「この場は記者クラブ優先ですから」
 仮に筆者が撮影を試みた場所がまずかったとしても、それと「記者クラブ」は関係ない。そもそも「記者クラブ優先」とはどういう意味なのか。取材現場で当局が記者クラブを「優先」するなど言語道断。報道の自由にかかわる問題だ。その場で質したかったがデモンストレーションは進行してしまっている。やむなく木幡市長の言葉を受け入れて元の撮影場所に戻った。

腕組みをしながらデモンストレーションの様子を見る木幡浩市長(左)。筆者が木幡市長の前を横切って市長の左側にしゃがんだところで「記者クラブ優先発言」が飛び出した=福島市保健所

【「記者クラブにご案内」】

 ドライブスルー方式でのPCR検査が2回、実演されると、木幡市長は満足したのか駐車場の一角に止めてあった公用車に向かって足早に歩き始めた。先ほどの発言の真意を木幡市長に確かめなければならない。後を追いかけて「さっきの件ですが、記者クラブ優先というのは本当ですか?」と声をかけた。

 市長「記者クラブに案内してるんですよ」

 筆者「それは『優先』では無いですよね?」

 市長「ご案内してますから『優先』という言葉を使うんです」

 筆者「何で区別するんですか?」

 市長「まずはあなたが、こちらの中に入ろうとしたから…」

 筆者「場所と属性は関係ないですよね?」

 市長「まずはマナーを守ってください」

 筆者「マナーと記者クラブ云々は関係ありませんよ」

 市長「記者クラブにご案内してるんです」

 筆者「そこは区別なさるんですね?」

 市長「区別じゃないです。報道機関にお願いしてるんです。ご案内してるんです」

 筆者「だとしたら、私は『報道機関』では無いという事ですか?」

 市長「登録された報道機関という意味です」

 筆者「登録ってどこにですか?」

 市長「それは…記者クラブに登録…ご案内してるんです」

 筆者「つまり、市長は記者クラブ以外は『報道機関』と認めないわけですね?」

 市長「別にあなたを拒否してないですよ」

 筆者「なぜ区別するんですか?」

 市長「まずは邪魔しないでください」

 筆者「邪魔なんかしていませんよ」

 木幡市長はここで、スモークが貼られた公用車のパワーウインドウを閉めた。運転手が公用車を走らせた。

囲み取材に応じる福島市保健所の中川昭生所長。中川所長も含めて、保健所職員の中で「記者クラブ加盟の有無」を筆者に尋ねた人はいなかった。そこにこだわっていたのは木幡市長ただ1人だった

【日頃の取材姿勢に不満?】

 木幡市長以外からは声をかけられなかったとはいえ、立ち入りすぎたのかもしれない。そこは筆者の落ち度であり、反省しなければならない。しかし、問題はなぜ、木幡市長が「記者クラブ優先」という表現を使ったのか、だ。取材現場でマナーを守らなければいけないという事と、記者クラブに所属しているか否かという「属性」は全く関係ないはずだ。だが、木幡市長は「記者クラブ」を持ち出して注意した。そこには、「悪い事ばかり発信する物書きにうろちょろされるのは目障り」という日頃の感情があるのではないか。
 2017年11月の市長選挙で初当選して以来、筆者は一貫して木幡市長に批判的な記事を書き続けている。
 岡山県副知事や消防大学校長、復興庁の福島復興局長を経て市長選挙に立候補した木幡氏は、告示前にホテルで開かれた集会で取材に応じ、「被曝リスクですか?もはや福島市内には健康に影響を及ぼすほどの被曝リスクは無いと私は思う」と答えていた。
 これを「放射線の事を気にしなくなったわけではありませんよ。今回は待機児童問題を解消して欲しくて木幡さんに投票しますが、汚染や被曝リスクが全然語られない選挙というのもおかしいですよね」、「復興、復興ばかり。もちろん復興は大切です。でも、間違えないで欲しいのは、汚染や被曝リスクへの懸念を口にする事は、決して復興を否定する事では無いのです。私は被曝リスクがまだ心配だけれど、だからといってこの街が嫌いなわけでもありません」という市民の声を添えて報じた。
 ほかにも、モニタリングポスト撤去問題や巨大モニュメント「サン・チャイルド」設置問題でも、「風評払拭」ばかりにまい進する木幡市政を厳しく報じた。それらが気に入らないのだろうか。
 批判されれば腹も立つだろう。しかし、それを受け止めるのもまた、政治家であり首長。批判的な記事を書く記者を排除して〝お気に入り〟の記者ばかりをかわいがるのであれば、裸の王様になってしまう。ましてや、記者を属性で区別するなど論外だ。
 筆者は改めて木幡市長に問いたい。
 「なぜ記者クラブとフリーランスを区別するのですか?」

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