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【インスタカート】、2度の神風で圧倒的勝者!いつかのアマゾンのようにデータを利用?


企業にとって向かい風となるような出来事は沢山あっても、追い風となる環境変化で急成長できる企業はめったにない。

新規の事業に取り組むベンチャー企業なら外部的な要因で発展を押し上げられるような恩恵を受けることはめったにない。

しかし短い期間に一度ならずも二度も強力な追い風がふきあれたことで、急成長しているスタートアップがある。オンデマンド買物代行&宅配サービスのインスタカートだ。

インスタカートはスーパーマーケットでの買い物を「パーソナルショッパー」と呼ばれるスタッフが代行して買い物をし、生鮮品あどを自宅に送り届けるサービスを展開する企業だ。

サンフランシスコで2012年に創業したインスタカートはクローガーやアルバートソンズ、コストコ、サムズクラブ、アホールド、パブリクスなど北米で展開する大手食品スーパー10社以上と契約。

ウェグマンズやプライスチョッパーなど中堅食品スーパーとの提携も増え中小の食品スーパー350社以上と契約を結んでいる。

直近でも18州に2,400店以上を展開するドラッグストアチェーンのライト・エイドと提携して処方箋等のデリバリーを開始することを発表した。

インスタカートは現在、北米市場の5,500ヵ所以上の地域で営業し、アメリカ国内では2万店以上で展開し国内世帯85%をカバーしている。

 インスタカートに最初の神風が吹いたのは3年前の6月だ。ネット通販最大手のアマゾンが自然食品スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを137億ドルで買収することを発表したときだ。

IT企業がスーパーマーケットチェーンを約1.5兆円で買収したことで世界中から注目を集めたニュースとなった。世界最尖端のIT企業がアナログ運営となるスーパーマーケットを買収したことでスーパーマーケット業界に激震が走ったのだ。

競合スーパーにとっては大きな脅威になりえる競合が生まれることを意味する。最も考えられる脅威はネットスーパー市場の拡大だろう。多くのスーパーにとってネットスーパーは未知な分野だった。

これでインスタカートに神風が吹いた。インスタカートの創業者でCEOのアポルボ・メタ氏は、アマゾンによるホールフーズの買収が発表された途端に「全米中の大手食品スーパーから問い合わせの連絡がきた」と話した。

これ以降、多くのスーパーがインスタカートと提携を開始したのだ。また最近では宅配サービスに加えてウェグマンズやパブリクス、アルディ、スプラウツ・ファーマーズ・マーケットなどとカーブサイド・ピックアップの展開も拡大している。

 2度目の神風は新型コロナウイルス感染拡大だ。世界的な感染爆発となるパンデミックは人々の生活をまったく変えてしまうチカラがある。

アメリカは3月、国家非常事態宣言を発動し4月になると40州以上で外出禁止令が発動された。3億人以上が自宅待機での生活となり、極めて限定された外出のみが許されるだけとなった。食料品の買い出しは許されているものの、人が集まるスーパーを敬遠して多くの世帯が宅配サービスに頼ったのだ。

インスタカートは3月初め、過去72時間で注文件数が通常の10倍に膨らんだことを明らかにした。感染者が確認されたカリフォルニア州やワシントン州、オレゴン州、ニューヨーク州では通常の20倍に注文数が膨らんだというのだ。全体でも受注件数は前年比150%増加しており、平均注文額となる客単価も15%増加した。

インスタカートによると4月の第1週と第2週で利用者はそれぞれ約7億ドルの買い物をしたという。昨年12月との比較では、売上の増加率が約450%に達したのだ。ニュースサイトのザ・インフォメーション(The Information)によるとインスタカートは昨年3億ドルの損失を計上したが、4月の収益は約1,000万ドルの黒字となる見通しだ。

 宅配サービスの需要が急増するなか、インスタカートは3月末、北米市場で向こう3ヶ月間で新たに30万人を採用することを発表した。30万人の増員は当初、3ヶ月間の計画だったが全米の飲食店が休業し失業者が急増していることですぐに数ヶ月もかけずに計画を達成した。

そして4月末には新たに25万人の追加採用を発表したのだ。未曾有の需要急増に対応して1時間宅配をサービスオプションに戻すのだ。追加採用でインスタカートのショッパーは75万人に膨れることになる。

 神風に踊らされるだけでなくインスタカートはサービスも重視しており利用者向けの宅配オプションも拡大。

コントクトレス宅配オプションの「リーブ・アット・マイ・ドア・デリバリー(Leave at My Door Delivery)」や受け取りから2週間前に注文できる「オーダー・アヘッド(Order Ahead)」、配達希望日時を指定せずに最短で商品を届けてもらう「ファスト&フレキシブル(Fast & Flexible)」などを始めている。

急増するショッパーにも新型コロナウイルスの疾病手当の拡大やパートタイムとフルタイム・ショッパーへのボーナス、安全対策としてセーフティキットの配布、ショッパー専用で健康をチェックするアプリ機能の追加など、新しいポリシーも実施しているのだ。

 アメリカ国内のクレジットカードやデビットカードのトランザクションをモニターしている調査会社のアーネスト・リサーチによると、アマゾンやウォルマート、ターゲットなどの強力なプレイヤーがひしめく中、圧倒的勝者はインスタカートとしている。

インスタカートの強みは様々なチェーンと提携しているところだ。大手や地域の食品スーパーだけでなくメンバーシップ・ホールセール・クラブやドラッグストア、ペットストアなどからの宅配を依頼できることに優位性を保っている。

コロナ禍が収まれば宅配特需も落ち着くと予想されるが、定着した宅配サービスがすぐに以前のように戻るとは考えられない。

2度も吹いた追い風でインスタカートは膨大な提携先データや顧客データを蓄えている。提携先の強みや弱みに彼らの顧客の買い物パターンもデータから理解している。

神風が止んだ後、トイザらスと提携したアマゾンのように棚ぼたデータを利用してインスタカートは新たなマーケティングの風を吹かせるのだ。

トップ画像:ニューヨーク・ブルックリンにあるウェグマンズ新店のインスタカート専用スペースでネット注文品を決済するスタッフ。今は猫の手を借りたいほど忙しいのだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤が執筆したオンラインメディア向け記事で、編集者から訪問回数が高くなったとの評価を頂きました。紙媒体と異なり、オンラインメディアはビジター数などで記事の評価を計測できるのです。後藤はコンサルタントですが、3年前には1,300人以上のブロガーから選出されるブロゴス・アワード(BLOGS AWARD 2017)で銀賞を頂いたりと文章力も評価されるようになりました。15年以上に渡って毎日ブログを更新しているから、表現力も磨かれているのかもしれません。先月には8,000文字の執筆依頼も結局、1.2万字を執筆。「当初想定していた4ページでは入りきらないため6ページにまとめましたが、それでもだいぶ縮めざるを得ませんでした」との返信に原稿料増額という、ありがたいお言葉が添えられていました(笑)。昨日送った原稿も9,000字弱の依頼に1.4万字を超えました。決して褒められることではありません。(メディアにより読者層は異なるため)編集者は読者に合わせてズバッと編集してもらえたらと思っています。
 毎日1~2ページ分もアウトプットしていれば、インプットとなるアンテナも随分と高くなります。これはもう職業病かもしれませんね。

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