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「延期」か「継続会」か、それとも「予定どおり」か? 6月定時株主総会をめぐる瀬戸際の攻防。

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GWが明けて、止まっていた時計の針が一気に動き出したような気がする。

街に繰り出す人の数は確実に増えた。

「緩んでいる」という見方をする人はいるだろうが、暫しの「接触8割減」の時を経て街中での現実的な感染リスクが下がっているのも間違いないところで、「大人数で飲み会をして騒いでいる」といったような愚挙を冒さなければ、もはや非難されるようなことではない、ということもできるだろう。

そして、今週に入ってからは、決算発表延期のリリースが出る一方で、「遅れてきた決算発表」も続々と行われている。

今開示されている決算は、あくまで「今年の3月まで」の数字でしかないから、それだけで”新型コロナウイルス禍”全体のインパクトを推し量るのは難しいし、僅かに手掛かりになりそうな「今期の業績予想」も多くの会社は「未定」となっているから、メディアも市場もおそるおそる雰囲気を探っている感じなのだが、そこで数字をドカンを出してきたトヨタ自動車はさすがというほかない*1

営業収益約20%減、と聞けばそんなもの?という感じだが、その数字は約6兆円。日本のほとんどの会社の年間売上高を優に上回る。

逆に営業利益△79.5%と聞くと一大事だが、それでも残っている数字は5,000億円。対前年比で利益を倍増させても到底届かない、という会社は山ほどある。

まだこの先が何も見えていない状況、すごく悪くなる可能性もあるけど、V字反転する可能性もある、という今の段階であえて予想を立てる背景には様々な思惑もうかがえるわけで、取引先や系列企業といったところから、社内各部門や労働組合、さらにはお上に対してもプレッシャーをかける強烈な武器として使えるだろうな・・・という邪推もどうしても出てきてしまったりもするのだが、ベストシナリオであれ、ワーストシナリオであれ、「思い切って今予想を示す」ことの大胆さは、素直に評価されるべきことではないのかな、と思って眺めたところであった。

法務省が踏み切った「英断」

さて、そんな状況の中、まだ決算の数字が固まらない、とか、社内的には固まったけど監査法人のレビューが・・・といったところでやきもきしている関係者には極めて朗報、と思われるお知らせが法務省から発出された。

www.moj.go.jp

このページ自体は2月末から開かれていたのだが、今日付けで更新された以下の内容が、あまりに画期的だったのだ

「6 今般のコロナウイルス感染症の拡大により,株式会社の決算,監査業務に遅延が生じることが懸念されていることを踏まえ,緊急的かつ時限的な措置として,会社法施行規則及び会社計算規則を改正することとしました。具体的には,従来,定時株主総会の招集の通知に際して書面により株主に提供することが求められていた貸借対照表や損益計算書などについても,一定の条件の下,所定の期間,継続してインターネット上のウェブサイトに掲載し,そのURLを株主に通知すれば,株主に提供されたものとみなすこととします。改正省令は,今週末を目途に公布し,即日施行することを予定しております(令和2年5月12日現在)」(強調筆者、以下同じ)

リンク先のPDF(http://www.moj.go.jp/content/001319738.pdf)には、予定されている省令改正の内容がより丁寧に書かれているのだが、「改正によりウェブ開示によるみなし提供制度の対象となる事項」の記載がふるっている。

⑴ 株式会社が事業年度の末日に公開会社である場合において事業報告に表示すべき事項のうち「当該事業年度における事業の経過及びその成果」(会社法施行規則第120条第1項第4号)及び「対処すべき課題」(同項第8号)
貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項

従来認められているインターネット開示事項との関係で、「事業報告に載せなければならないものとして何が残ったのか」ということを条文を引きながらもれなく丁寧に説明しようとすると、朝までかかってしまいそうなので、どなたかがきれいにまとめて下さることを期待してあえて書かないが、ざっくり言えば、印刷して送付する事業報告には、「あらかじめ準備できる定性的な事項」だけ書けばよい、ということになるのは間違いない。

別にコロナなんてなくても、カレンダー上の「校了期限」の日付を見つめながら、「早くこのブランクになっている数字のところ埋まらんかな」とイライラさせられた記憶のある総会担当者は多いはずで、そのイライラを「印刷スケジュール」から切り離せる、というだけで、総会準備のスケジュールは劇的に変わる。

おそらく、各所の要望等も踏まえて、法務省が切ってきた「ジョーカー」のようなこの改正。

恩恵を受けられるのは「施行の日*2から6か月以内に招集の手続が開始される定時株主総会」だから、頑張って今週前半に決算発表を間に合わせ、合わせて総会の日程や提出議案まで取締役会で決議してしまった会社は、逆に「紙の招集通知のスリム化」の恩恵にあずかれないことになるのだが、今回の省令改正はあくまで非常手段。今の段階で決算が事実上確定している会社であれば、これまでどおりきちんと招集通知に事業成績を掲載し、計算書類も載せて送る方が、株主の利益には資すだろう、という話なわけで*3、そこはさすがにやむを得ないのかな、と思うところはある。

ただ、繰り返しにはなってしまうが、今まさに、監査の進捗状況をハラハラしながら見つめている会社、もしかしたら、デッドロック下にある海外拠点での決算整理をまだ待っているかもしれない会社にとっては、計算書類、監査結果報告まで含めて当初のスケジュール通りに定時株主総会を行える可能性が上がった、という点で、この省令改正は間違いなく福音なわけで、タイムリーにことを運ばれた関係者に対しては、心から称賛の意を表したいと思っている。

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