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黒田日銀総裁の決意

あまり皆さんは意識されないかもしれないが、今回の超大型のコロナ対策補正予算、その原資は丸々赤字国債。

約26兆円は全額赤字国債で賄われる。その引き受け手は実質的には日銀。

今回のパンデミックにおいては、世界中の国が同じような緊急経済対策をとり、それを国債発行で賄っているので、円だけが突出して信任を失う≒円安となる心配もないため、それはやむを得ない措置だし、むしろ適切。

しかし、今後はまた別の話。これが癖となれば、円がペーパーマネー化(2012年のロイター記事「量的緩和は江戸時代の藩札制度か」参照)して、確実に中南米でよくみられる惨憺たる将来がやってくるだろう。

 その辺りを昨日の財務金融委員会で、黒田日銀総裁に問い質した。そして、黒田総裁は思わぬほど強い言葉で決意を示された。

国債を無制限に買い入れてインフレをもたらすということには絶対にならないふうにするということはお約束できます。」と明確に約束されたのだ。

 自民党の一部議員(60人もいるそうなので一部ではないかもしれないが)からは、消費税を0%にする、という大変なポピュリズ的提言がなされているが、黒田日銀総裁はこれを否定に等しい。

 なお、質疑の全文を以下にご紹介する。なお、内容が変わらない範囲でごく一部若干の省略をした。

○青山

 政府が今回のコロナウイルスの大変な流行に対して、例外的な手段である赤字国債に100%依存して巨額の補正予算を組んだ、それを日銀が支えていく、これ自体はやむを得ないと思っております。

なぜならば、あのドイツ、憲法上のルールで財政均衡が義務づけられているドイツでさえも、憲法上の特例として、政府のコントロールできない緊急事態が生じたということで同じような規模の予算を組んで対処している、世界中がやっているわけですから、これは日本も当然やるべきことということになってくると思います。

ただし、心配なのは、今回はこれでもちろんいいわけですけれども、これが、例えば将来、落ちついた後にもいわゆMMT、(これを)非常に声高に叫ぶポピュリズム的な、中南米的な政治勢力、こういったものに今回のことが前例としてあるいは使われるかもしれない、そういうおそれは十分にあると思っているんです。そういう観点でお伺いいたします。

 4月27日に黒田総裁が記者会見をなされて、議事録を見ますと、今までになかったことだと思いますけれども、財政ファイナンスではないのかという質問が三社からあるわけですね。

 これに対して黒田総裁は、「日銀は主観的というか、目的としてはイールドカーブコントロールのためにやっている、だから問題はないんだ」というようなお答えをされているわけです。

 しかし、日銀の主観とは別に、客観的にはどう見ても財政ファイナンスへの道を更に踏み出した、こう見える、これはもう疑いようのない事実だと思うんです。世の中というのは、主観が問題とされるというよりは客観的にどう見られるのかということが重視される、これは往々にしてあることです。

 今までは日銀が、異次元緩和にしろ黒田バズーカと言われた量的緩和にしろ、主観としてどういう目的で行っているかという建前を各マスコミも尊重してきましたし、当委員会でも黒田総裁がおっしゃったデフレマインどの払拭ということを前提とした質疑が行われてきた、そういう流れもあったと思います。

 当然、中央銀行総裁として、財政ファイナンスをやっているなんて、そんなことは口が裂けても認められるわけはないわけであって、それはそれとして、そういうお立場であったことも理解しています。

 しかしながら、今回の記者会見の中で、非常に気になったのは、

「国債の買入れ額を無制限としたことで今後政府は金利上昇リスクを気にせずに財政出動しやすくなるか」

という質問が出されたのに対して、総裁が

「あくまで財政規律にどういう影響があるかというのは財政政策を主体的に決める政府、国会の役割」、

こう答えられているわけです。

 これはもちろんそのとおりなんですけれども、しかし、加藤厚労相が先日、私もブログでたたかせていただいたんですけれども、受診の目安を示しただけで基準を言ったわけではない、あの非常に無責任な答弁とある意味重なって見えるわけです。

 なぜならば、ドイツには先ほど言ったような財政上のルールがある、だからこれは異例の事態であるし、これが広がるおそれも余りないわけですね。だけれども、日本には事実上ないわけですよ。

 そんな中で、例えば、政治的な役割として、財政規律に目配りした物を言われている麻生財務大臣がけちだ何だと総スカンの状況にあるわけです。こういう中で日銀総裁がああいう物の言われ方をされると、さすがに日本の将来が心配になるというか、政治的にもたなくなってくるのではないかと思うんですよ。

 黒田総裁が異次元緩和を始められたころ、これが財政ファイナンスだと言っているのは海外メディア、たしかフィナンシャル・タイムズあたりが言っていたと思うんですけれども、それから7年たって、日本の記者でさえも正面から、(今までは)どうもデスクから禁じられていたようですけれども、財政ファイナンスというような質問が出るようになった。

 次は市場、特に為替市場から私はその指摘を受ける番じゃないのかなということを非常に危惧しているわけです。

 そこでお伺いしたいんですが、今までの異次元緩和もそうですし、今回の措置も非常に例外的な ものであって、日銀がこういう、国債を買い入れて、買い支えていくような、客観的に見るとですよ、そういう姿は例外的なものであって、いつまでも続けるものでないというメッセージを発するべき時期が来ているんじゃないかと思うんですけれども、その点について御見解をお伺いしたい。

○黒田日銀総裁

 従来から申し上げておりますとおり、国債の買入れにつきましてはあくまでも金融 政策の観点から行っているわけでございまして、 四月の決定会合でさらなる積極的な国債買入れを行うというふうにしましたのは、債券市場の流動性が低下しているもとで債券市場の安定を維持するとともに、現在の調節方針に定める長短金利操作を実現する観点から、イールドカーブ全体を低位で安定させることを目的とするものであります。

 公表文におきましても、いわゆるイールドカーブコントロールを含む長短金利操作つき量的・質的金融緩和については2%の物価安定目標にひもづけた形で示しておりまして、こういったイールドカーブコントロールというものを現時点で行うために必要なだけ国債を買い入れますということで、あくまでも日本銀行の行っている金融緩和措置、具体的には長短金利操作付き、いわゆるイールドカーブコントロールつきの量的・質的金融緩和というのは2%の物価安定の目標を実現するために行っているわけですから、当然そういったものが実現された暁に長短金利操作つき量的・質的金融緩和も修正されていきますし、国債を無制限に買い入れてインフレをもたらすということには絶対にならないふうにするということはお約束できます

○青山

 今、最後におっしゃった点、 国債を無制限に買い入れてインフレにならないようにする、それは絶対にする、その言葉は非常に大事なことだと思います。ぜひそのメッセージを今後も明確に発信をしてください。

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