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コロナ報道とメディアの課題

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トップ写真:パチンコ店(イメージ) 出典:Tischbeinahe

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・千葉市の熊谷俊人市長、「安易な報道から距離を」と投稿。

・市民はSNSなどでメディアを厳しくチェックしている。

・これを機に「建設的ジャーナリズム」への転換を。

千葉県千葉市の熊谷俊人市長が市の公式ホームページで発信した内容(新型コロナウイルスに関するメッセージ:5月1日付)がウェブ上で絶賛されている。「安易な報道から距離を置き、正しい現状理解を」と題したこの小文はメディアにとって重要な示唆に富んでいる。

報道の価値をどこに置くか

新型コロナウイルスの報道に関し、熊谷氏が指摘しているのは行き過ぎた「ネガティブ」報道の蔓延だ。若者の行動や、自粛要請に従わない若者の行動や、パチンコ店とそこに通う人たちを批判する報道が多い。

日本の緊急事態宣言は法的拘束力がほぼないが、だからこそ我々は、欧米諸国のように外出禁止を強いられることなく、普通に買い物にも行けるし、公園で遊ぶこともできる。一定の制約の元、飲食店に出かけることもできる。自由を享受しながら、ウイルスと戦うという世界でもまれな戦略をとっている。

この、いわば「日本モデル」の素晴らしさにも焦点を当てるべきだろう。国民の自発的な自粛と、徹底的なクラスターつぶし対策で、新型コロナウイルス感染者・死亡者を、他国に比べ圧倒的に低水準に抑え込んでいることをなぜ評価しないのか。

そういう視点の報道がほとんどない。自粛破り批判報道ばかりだと、社会が「自粛警察」化し、「自粛をまもらない人間は罰せよ!」との極論がまかり通ることになる。

山梨県に帰省した女性についても、その行動は確かに軽率だったにしろ、名前や住所、勤務先まで晒す、「ネットリンチ(私刑)」は明らかに行き過ぎだ。そこまでいかなくても、企業が自社の感染者情報を逐一ウェブで公開するなど、果たして本当に必要なのか、冷静に考える時期だと思う。

熊谷氏は言う。

「この緊急時に「罰則を!」「自粛要請ではなく禁止してしまえばいい!」など、強権発動を期待する声が高まっています。私たちの国はあの太平洋戦争の苦い経験から、政治権力による強権発動には慎重を期したいとの国民の切なる願いを受けて様々な法制度を構築してきました。その歴史を忘れてはいけません。ただし、本当に爆発的感染となった時はそうは言っていられません。そうした究極の状況時に発動する法制度については十分議論することは当然だと思います。しかし、現状の感染状況、日本の国民性などを考えれば、この緊急事態宣言程度の制限行為が適切だったと言えます。」

たしかに、感染していると知りながら他人と濃厚接触していたことは問題だが、その人間をバッシングするだけでは何も解決しない。同じような行動をとる人はまた出てくるだろう。目に見えない恐怖は社会を混乱に陥れる。不要な対立や差別、分断などを生む。それを防ぐためには、正しい知識を広めるしかない。メディアはその役割を担っている。

安易な報道

本来、ジャーナリズムにセンセーショナリズムの側面があることは否定しない。読んで(もしくは見て)くれなけば、そもそも商業的ジャーナリズムは成立しない。人目を引く見出しが当たり前のように付けられているのはもちろんその為だ。

権力の監視」がジャーナリズムの重要な役割であることは論をまたない。しかし、反対の為の反対では、もはや一般市民の支持を得ることは難しくなっている。

その最大の理由が、SNSの普及だろう。60歳以上の新聞購読者層は別にして、それ以下の年齢層では情報をSNSで知る方が早い。テレビも即時性と映像が持つ臨場感で活字に対して優位性があったが、即時性ではSNSに勝てず、ネット接続スピードの高速化により、誰もが中継や動画配信が可能になったせいで、映像における優位性も消えた。

なにより、市民が多様な意見をSNSで知ることができるようになったことが大きい。かつ、彼らは自分の意見を発信する術も手にした。市民一人一人がメディア化したのだ。

▲写真 イメージ 出典:pixabay

その結果、人々が既存のメディアを見る目は厳しくなった。報道の内容をうのみにせず、市民がチェックするようになったのだ。

これは既存メディアにとって本来、良い事であり、彼ら自身が変革するチャンスだったのだが、この10数年、それに気づかず、変化に対応できなかった。その結果、既存メディアは、熊谷氏が指摘したように「安易な報道」をつづけている、と市民・社会から見られてしまっている。

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