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黒川検事長の定年延長は本当に大問題なのか

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 そして、上記の朝日記事が言う「1981年政府答弁」は、同月28日の内閣委員会でなされた。
 民社党の神田厚議員と斧誠之助・人事院事務総局任用局長とのやりとり。

○神田委員 次に、指定職の適用の問題について御質問申し上げます。
 指定職の適用職員は現在千五百人弱いるわけでございますが、その中で現在定年が定められている者の数、割合はどういうふうになっておりましょうか。

○斧政府委員 指定職は先生おっしゃいますとおり約千五百名でございます。そのうち定年制の定められております職員は、国立大学と国立短期大学の教官でございます。大学の学長及び教授の中に指定職の方がいらっしゃるわけですが、約六百六十名ばかりいらっしゃいます。

○神田委員 指定職の高齢化比率が非常に高いわけでありますが、五十四年現在で六十歳以上の者の占める割合は約四〇・一%。定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官、さらには教育公務員におきましては国立大学九十三大学の教員の中から何名か出ているわけでありますが、これらについてはどういうふうにお考えになりますか。

○斧政府委員 検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。


 神田議員は続いて定年と勧奨退職との関係に質問を移し、検察官の定年については何も触れていない。

 ここで斧局長が答弁したのは、検察官と大学教官については既に別の法律で定年が設けられているから、今回の国家公務員法改正による定年は適用されない、それ以外の指定職には適用されるという、それだけのことだろう。

 だが、この答弁をもって、中山長官が述べていた「特殊な官職や欠員補充が困難な官職を占める職員につきましては、六十五歳を限度として、別に特例定年を設けることとして」いること、つまり特例による定年延長をも、検察官には適用されないと解釈すべきなのだろうか。

 今年2月10日の会議録を見ると、山尾議員はこう述べている。

つまり、このときの国会議論は、当たり前ですけれども、定年制というのはパッケージなわけです。定年の年齢だけ切り出している議論はどこにもないんです。そして、政府委員がはっきり言っているのは、この国家公務員法の定年制は検察官には適用されないと言っているんです。
 しかし、「政府委員がはっきり言っている」のは、検察官には既に定年制があるから、国家公務員法改正により新設される定年制は適用されないということではないのか。
 この会議録で森雅子法相が
○森国務大臣 検察庁法を所管する立場としての解釈を申し上げますけれども、検察庁法で定められる検察官の定年の退職の特例は、定年年齢と退職時期の二点であり、検察官の勤務延長については、一般法たる国家公務員法の規定が適用されるものと解しております。
と答弁している解釈は、本当に全く成り立つ余地がないものなのだろうか。
 私にはそうとは思えない。

 冒頭で挙げた朝日記事は、人事院の給与局長も81年の政府見解は「現在まで続けている」と答弁したと言うが、特別法である検察庁法を所管するのは人事院ではなく法務省である。

 なお、朝日記事は「「国家公務員法の定年延長は検察官に適用しない」とする1981年政府答弁」と言うが、実際の答弁は、上に示したとおり、検察官には「現在すでに定年が定められております」から「今回の定年制は適用されない」というもので、定年延長は適用しないとは述べていない。

 ましてや、4月21日付社説のように「政府はかねて検察官の定年延長は認められないとの立場をとってきた。」とか、5月12日付社説のように「ことし1月、長年の法解釈をあっさり覆して、東京高検検事長の定年を延長したのは、当の安倍内閣ではないか。」などと唱えるのは、一種のフェイクニュースと言えるのではないか。

 私は会議録を読んでそう思った。関心のある方には自ら確認することを勧めたい。

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