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韓国国債格付け引上げ「Aa3」~スワップ協定見直しへのプレゼント?

「米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは27日、韓国のソブリン債格付けを1段階引き上げ、日本と同じ『Aa3』とした。悪影響に対する韓国経済の弾力性と北朝鮮崩壊リスクが後退したことを格上げの理由に挙げた。格付け見通し(アウトルック)は『ステーブル(安定的)』」

竹島の領有権問題から、スワップ協定(実質的な日本による韓国への流動性保証)の見直し論議が高まるなかで、ムーディーズは韓国の国債の格付けに踏み切った。これにより韓国国債の格付けは日本と同等となった。

ムーディーズは、その理由について「韓国の力強い財政的なファンダメンタルズ(基礎的諸条件)が国内の偶発的なリスクと外的ショックに対応する比較的大きな政策余地につながっている」と説明している。しかし、日本の実質的な金融支援を受けている国の国債格付けが日本と同等という評価には、違和感を禁じ得ない。しかも、日本が韓国と同等の「Aa3・ステーブル」格付けを維持出来たのも、消費増税を含む一体改革関連法案が8月10日成立したからであり、それまでは「ネガティブ」であった。つまり、民意を反映して消費増税法案が成立しなければ、日本国債の格付けは韓国に抜かれていたということ。

ムーディーズが韓国国債の格付けを日本と同等に引上げたのは、格付け会社が「公的債務残高の対GDP比」を金科玉条の如く扱っているからである。日本の公的債務残高の対GDP比は229.77%(IMF統計)と世界でダントツのトップであるのに対して、韓国のそれは34.14%で世界の108位(169ヶ国中)と「「力強い財政的なファンダメンタルズ」を誇っている。

しかし、韓国10年国債利回りは足元3%強であり、0.8%近辺にある日本の10年債利回りと比較すると、金融市場での評価は同等ではない。

また、韓国の国債の外国人保有比率は、2008年の7.0%から2011年9月時点で14.9%に拡大して来ている。外国人保有比率の上昇は、韓国経済への信頼の証であるとも言えるが、一方では国内の資金では賄いきれないとも言える。

「多くの先進国で消費者債務はこの4年間に減少しているのに対し、韓国の家計債務は増加の一途をたどり、昨年には可処分所得の164%に達した。これは、サブプライム危機発生時の米国の数字をはるかに上回る」

日本経済新聞は、8月22日付英フィナンシャル・タイムズ紙が掲載した「韓国、消費者債務が危機的水準に増加」という記事を紹介している。この記事の中では「家計債務はすでに持続不可能なほど高い水準に迫っている」というエコノミストの警告も紹介されている。

ムーディーズは格上の理由として、「世界経済の回復に伴い輸出業界の競争力が景気減速からの持ち直しを支える見込み」としているが、FTの記事の中では「同国は輸出市場の不振に悩まされており、経済をこれ以上弱めることなく消費者債務の増加に歯止めをかけようとしているが、道は険しいようだ」と、やや違った見方をしている。

客観的に見てみると、今回のこのタイミングでのムーディーズによる韓国国債格上は、必ずしも説得力のあるものではない。むしろ、欧州債務危機によって世界の投機資金が相対的に安全な韓国国債にも流れ込み、韓国国債の利回りは低下する(価格は上昇)という「相場観」で格付けを行っているという格付け会社の実情が透けて見えるようである。

日本の消費増税原理主義者達は、格付け会社の格下げによる国債市場の混乱消を費増税の必要性を訴える際に挙げるが、「相場観」で格付けを変更するような会社の格付けを消費増税の理由に挙げるなど愚の骨頂である。少なくとも10年以上、格付け会社の日本国債に対する「相場観」はことごとく外れて来ているのだから。

ムーディーズによる韓国国債の格上は、格付け会社の格付け手法の曖昧さを露呈すると同時に、日本が韓国に対して提供している実質的な流動性保証であるスワップ協定を見直す口実を日本に提供してくれたものだとも言えそうである。

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