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9月入学の是非 世論調査は賛成多数だが課題が多く「労多くして功少なし」

5.1自民党教育再生実効本部役員会での議論の様子(自民党本部で)

日々勉強!結果に責任!」「国づくり、地域づくりは、人づくりから」を信条とする参議院議員赤池まさあき(自民党・比例代表全国区)です。

 我が国を繋ぎ、護り、発展させるために、中共武漢発の新型コロナウイルス感染症対策の強化はまったなしです。

 新型コロナウイルス感染症が国内外で蔓延する中、一部首長や評論家が、子供たちの学びを保障するために、9月入学・始業にすべきだと言い出しています。それを受けて、政府は選択肢の一つとして、論点や課題を整理するとしています。私が所属する自民党内でも、勉強会を開催し、今後も議論をする予定となっています。

 私も、9月入学・始業について、多くの方から質問されることがあります。既に、4月29日のブログに「現場が混乱するだけ」と慎重論を表明していますが、改めて利点と課題を整理しておきたいと思います。

 ・赤池ブログ https://ameblo.jp/akaike-masaaki/entry-12593170711.html 

利点と課題は後述しますが、結論を先に言うと、世論調査の結果は賛成多数ですが、一言で言うと「労多くして功少なし」どころか、「労あって功なし」と言わざるを得ません。学校現場が混乱するだけで、肝心の子供たちの学びが保障は十分できるとは思えません。今回の感染症の影響による子供たちの学びを保障したいという目的を最優先とするのであれば、9月入学・始業に移行するのではなく、順次学校が再開されるに当たり、教師の加配や学習支援員の増員、学習内容の精選、数年間かけての学習活動の充実、「一人一台」端末の配備等の学校の情報化の強化等で対応していくべきだと考えます。

今は、9月入学の議論をする余裕があるのであれば、目の前の感染症対策、具体的な子供たちの学びの保障に全力を傾注すべきだと思います。

●世論調査の結果は賛成多数だが・・・

 読売新聞社が5月8日から10日に実施した全国世論調査の結果によると、新型コロナウイルスの感染拡大による学校休校の長期化を受け、政府が検討している9月入学・始業に「賛成」は54%と半数を超え、「反対」は34%。東京や大阪など13の特定警戒都道府県に限ると、平均は「賛成」59%、「反対」32%。それ以外の34県の平均は「賛成」47%、「反対」37%と差がみられています。他の世論調査結果も、賛成が上回っているようです。

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200510-00050135-yom-pol 

●利点は3点・・・

 9月入学・始業の利点は、概ね以下3点あると言われています。

 ①子供たちの学びの保障。

第一の利点は、何と言っても子供たちの学びの保障です。上記の読売新聞社の世論調査でも、学校の休校長期化で、児童や生徒の学力が低下する不安を「感じる」と答えた人は全体で81%に達したとのことです。全国の小中高校では、学校再開する地域も出ている反面、東京・大阪はじめ13の特定警戒地域では、休校が長引いています。学校の情報化が導入できている学校は5%に止まっている中、全国で9月から半年遅れで一斉に学校を再開することで、子供たちの学ぶを確保しようというものです。

 ②国際化の対応。

 第二の利点は、国際化への対応です。我が国を除いて、世界各国はほとんど9月入学、始業となっています。国際化が進展する中で、留学生を交換するに当たって、9月入学・始業の方が円滑にいくということです。この論点は、昭和60年代から議論されてきたことであり、特に、外国人を多数入社させている大企業は、強い要望があります。また、東京大学は、国際化に対応するために、以前9月入学・始業を実施することを表明したことがありましたが、結局一部だけの導入に止まっています。

 ③学校運営上の夏休みの有効活用

 第三の利点は、学校運営上の夏休みの有効活用です。我が国の夏は高温多湿であり、以前から長期休暇としていました。昨今は温暖化の傾向の中で、尚更です。1学期と2学期の間での夏季休暇は、学業を分断してしまい、宿題だけでは十分ではなく、卒業や入学、進級を行い、夏休みという長い休みを有効に活用できるのではないかとの意見があります。

●一方、課題は山積・・・

 その一方、入学、進級、卒業を半年遅らせることによる課題が多数出てきます。

 ①幼稚園、認定こども園、保育園の措置

 第一は、入口の課題として、幼稚園、認定こども園、保育園をどうするかがあります。毎年半年間小学校の入学が遅れることになると、半年分の子供を受入れのため、財源や人員や施設設備の整備等をしなければなりません。保護者の負担も出てきます。

 ②卒業後の就職の対応

 第二は、出口の課題として、高卒や大卒、大学院卒の就職活動の対応があります。感染症の影響によって、新卒入社数を凍結する企業が出てきている中で、就職活動が混乱することが予想されます。大企業は前述したように、基本的には国際化対応や新卒一括採用を見直して通年採用を実施したいので、賛成しています。しかしながら、大学や学生側は、就職協定に基づく新卒一括採用を企業側に求めているわけで、ズレがあります。

 ③国際化と言っても1年遅れ

 第三は、国際化の対応と言っても、実は1年遅れになる課題が出てきます。従来の国際化対応の9月入学は、半年前倒しして対応しようとしていました。今回は、半年遅らせて対応しようということですから、世界の学生から見ると我が国の学生は年齢が1年遅れることになります。さらに、それに対応すべく「飛び級」を認めることまでするのでしょうか。

 ④各種学校行事や部活動の大会は

 第四は、外部と関連する学校行事や部活動の大会をどうするかの課題です。9月入学・始業するとなると、既に予定していた準備がなされている修学旅行をはじめとした外部が絡む学校行事や、部活動の大会等、大幅な見直しが迫られることになります。そのための準備は、今年9月からでは間に合いません。

 ⑤会計年度をどうするのか

 第五は、会計年度とのズレをどうするのかです。我が国が4月入学なのは、4月から会計年度が始まることと密接な繋がりがあります。学校教育は、国や地方からの人員や施設設備等の財政措置が多くを占めているからです。会計年度は、人事制度とも密接に絡んできます。

 ⑥法改正や条例改正が必要

 第六は、9月入学への変更には法改正や条例改正の必要が出てきます。当初は学校教育法の執行規則だけ改正すればよいとのことで、文部科学省だけでできると言われていましたが、学校教育法本体はじめ他の法例も変更する必要があることが分かってきました。また、国の法改正にともない、地方自治体の条例変更の必要もあるとのことで、国会や地方議会での対応が求められてきます。そうなると、今年の9月には間に合いません。

 ⑦体制整備と時期は

 第七は、9月入学以降への実施体制の課題です。移行への実施体制は、文科省や各地の教育委員会だけの業務にとどまらず、私立学校を所管する首長部局、認定こども園や保育園や所管する内閣府や厚生労働省と地方自治体、就職に関連して全ての企業となると経財産業省等、会計年度の変更となると財務省等々、政府全体での移行体制を組まなければとても実行できるものではありません。それを今年9月までには実施できませんし、来年9月となると1年延期して課題山積の東京オリパラ大会があります。移行を現実的に考えるのであれば、2年後以降となります。ただそうなると、子供たちの学びを保障したいという目的を達成することはできません。

9月入学・始業の提案は、社会全体の問題となるわけで、当然大前提として国民の理解と支持が必要です。世論調査では、賛成多数ですが、以上のような課題を知った上で、それでも実施したいと思うか、今後も慎重な議論が求められます。

以上、課題は山積であり、「労多くして功少なし」どころか、「労あって功なし」と言わざるを得ません。学校現場が混乱だけして、肝心の子供たちの学びが保障は十分できるとは思えません。今回の感染症の影響による子供たちの学びを保障したいという目的を最優先とするのであれば、9月入学・始業に移行するのではなく、順次学校が再開されるに当たり、教師の加配や学習支援員の増員、学習内容の精選、数年間かけての学習活動の充実、学校の情報化等で対応していくべきだと考えます。

今は、9月入学の議論をする余裕があるのであれば、目の前の感染症対策、具体的な子供たちの学びの保障に全力を傾注すべきだと思います。

 以上、皆様方のご意見はいかがでしょうか。

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