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過酷なコロナ禍でも医療従事者が「逃げない」ワケ

「自粛」という名の大型連休が終わりつつある。感染患者を受け入れている、わたしが勤める病院では、医師や看護師だけでなく、技師や事務など彼らを支える何倍もの数の人が今も働いている。(弦巻 星之介)


感染リスクを負いながら最前線で働く医療従事者

それらすべての人が、濃淡はあっても、高い感染リスクに晒されている。もちろん様々な理由で辞めていく人もいる。

でもわたしの周囲で働く人の大部分は自分で選んで働いている以上、そのリスクを受け入れている。これは称賛に値することだと思う。

一刻も早く不安から逃れたいと思うのはみな一緒だ。だが、わたしたちは逃げ出さない。

それはおそらく、わたしたちのうちの多くは、誰もが一人で生きているのではなく、社会の中で生かされている存在なのだと、今こそ強く感じているに違いないからだ。

かく言うわたしもその一人だ。わたしは医者や看護師ではない。でも、だからこそ、最前線の現場を支えるために冷静でいなければならないと思っている。

さまざまな職種の人の努力とチームワークによって、医療現場は保たれているのだから、自分の持ち場で最前線の現場を支えるために冷静でいなければならないと思っている。

きっとスーパーで働く人や運送業者などの人たちの中にも、わたしと同じようなことを考えている人は多いだろう。

家族にリスクがある人や、配慮が必要な人には決して無理はしてほしくないのだが、不安や不満があっても、自分たちの仕事を保つべくやれるだけやろうと冷静に考えているに違いない。

そして、一人で生きているのではなく、社会の中で生かされているのは、政治家も、コメンテイターも、普通の人たちも同じだ。

「一刻も早く経済活動を再開するべきだ」
「公務員や生活保護者は十万円を貰うべきではない」
「これを機会に9月入学制にすればいい」

様々な立場から様々な意見が語られている。困っていることは大いに表明するべきだ。それが議論になることもいい。

一刻も早く自分が置かれている不安から逃れたいと思うのはみな一緒だ。

でも、誰もがWIN-WINとなる方策などどこにもない。皆を出し抜いても、誰かに割を押し付けても、議論は建設的なものにはなりにくい。

宇宙飛行士の野口聡一さんが、ある船長にかけられたという金言をテレビで語っていた。
「全員が満足することではなく、全員の不満にばらつきがないことを目指す」

これは、宇宙空間という極限状態で、皆が生き残るためにたどり着いた知恵だろう。

社会を分断させずに、皆でこの苦境から脱する必要に迫られている今、肝に銘じるには、これほどピッタリな言葉はないかもしれない。

その主張や行動は社会の分断を招くような表現になっていないか?
声高に表明する前に、ちょっとよく考えて見てほしい。

かねてからの自分の欲求を満たすために、ましてや当事者を無視した目先の効率性のためだけに、いたずらに自分の声だけを大きくするのはやめよう。

もっと上手く話し合おう。この議論に失敗した場合、大いに割を食うのは、議論に参加できない次世代なのだから。

わたしたち医療従事者のほとんどが現場から逃げないのは、社会を分断したくないからだ。

社会が壊れてしまったら、生きていける人はもっと減る。誰もが誰かによって生かされている。だからわたしも、自分の持ち場でまだまだ冷静でいなければならないと思っている。

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