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中国国内の政争の具と化した尖閣問題と日本の対応

香港の活動家らによる尖閣諸島の魚釣島への上陸に続き、日本の地方議員らが同島に上陸したことで、日中間の領土問題が再燃し、中国各地に反日デモが広がっていることが報じられているが、活動家の上陸についてもまたデモについても、どうも中国側の事情は日本のメディアが報じているような単純な愛国主義的動機に駆られたものとは言い切れないようだ。

 中国の国内事情に詳しい東海大学の葉千栄教授は、香港の活動家らの一連の動きをただの反日活動と見誤れば、日本は外交上の大きな間違いを犯すと警鐘を鳴らす。

 葉氏は、魚釣島に上陸した活動家らが、実は反中国政府の立場にある中国民主化運動の活動家として有名な人物たちであることや、各地で行われた反日デモの中で、毛沢東の肖像画が掲げられていたことなどを指摘した上で、中国国内では尖閣問題は反日の衣を借りた中国・胡錦涛体制批判の色合いが強いと解説する。

 中国の活動家が尖閣に上陸すれば、日本の警察はこれを逮捕する。中国では大半の中国人が尖閣の主権は紛れもなく中国にあると信じているため、中国の世論は日本の警察の「暴挙」を非難すると同時に、その「暴挙」を黙認している胡錦涛政権を「弱腰」と批判することができるというわけだ。

 胡錦涛体制は日本との東シナ海ガス田の共同開発に代表されるように、周恩来以来の日中間の「領土問題棚上げ合意」を継承しながら、日本との経済的な関係強化を重視する傾向が強い。しかし、反胡錦涛勢力にとっては、中国国内の反日的な感情を煽れば煽るほど、胡錦涛体制の弱腰を批判することが可能になる。日本、とりわけ尖閣問題は、中国国内の権力闘争の材料になっている面があると、葉氏は言うのだ。

 言うまでもないが、中国は今秋開かれる共産党大会において、中国共産党一党支配の頂点に君臨する中央委員会政治局常務委員が大幅に入れ替わる激しい権力闘争のただ中にある。以前にも葉氏は胡錦涛体制に楯を突く反対勢力の象徴的な存在として中国直轄市重慶のトップを解任された薄熙来氏の存在を指摘していたが、薄熙来氏は胡錦涛体制の番頭格の温家宝首相から「文化大革命のような歴史的悲劇が繰り返される可能性がまだ存在する」とまで批判され、失脚状態にある。妻の谷開来被告もまさに今週、執行猶予付の死刑判決を受けたばかりだ。しかし、薄熙来氏が失脚しても、まだまだ中国国内には胡錦涛体制に反旗を翻す勢力は多いと葉氏は言う。

 日本では尖閣も竹島もいずれも、純粋な領土問題として国やメディアをあげての熱い議論が交わされている。それはそれで重要なことかもしれないが、そうしている間にも、今秋には中国がアメリカ海軍と共同演習を予定するなど、米中の軍事的な関係はますます接近していると葉氏は言う。中国の国内事情や米中関係などを踏まえた上で、日本は尖閣問題をより複眼的に見るべきとの葉氏の言葉は重い。

 したたかに米国との軍事的距離を縮めながら、日本を材料に国内の壮大な権力闘争を繰り広げる中国に対し、日本のわれわれがどう対応すべきなのか、屈指の中国エキスパートである葉氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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