記事

「ファンの生活が守られてこそのプロスポーツ」元Jリーガー社長・鈴木啓太氏が語る「ポストコロナ」の世界 外出自粛中の「健康のバロメーター」は? - 矢内 由美子

 在宅ワークや外出自粛など、新型コロナウイルスは今、ライフスタイルを急激に変化させている。

 サッカー日本代表時代は労を惜しまないプレーで名を馳せ、Jリーグ浦和レッズで数々のタイトル獲得に貢献してきた鈴木啓太氏は、16年1月の現役引退を機に実業家へ転身。腸内細菌を研究する「AuB株式会社」の代表取締役として多忙な毎日を過ごしている。

 そんな中で直面することになった新型コロナウイルスの感染拡大問題。38歳の元Jリーガー社長の目に、世の中の変化はどう映っているのだろうか。

※この取材はオンライン上で行われました。

鈴木啓太氏 ©AuB Inc.

「いざとなったら子供たちに食事を作ってあげられるように」

「今は可能な限りリモートワークで仕事をしています」

 取材もオンライン。パソコンの画面を通して鈴木氏が語る。一日中家にいることも多くなっている今、鈴木氏が心身の健康維持のために意識しているのは、時間に区切りをつけて24時間を過ごすことだ。

 朝は早起きをして家の中でトレーニング。体を目覚めさせることから始め、その後は仕事だ。今はリモートワークなので通勤に時間を取られることがない分、仕事にかけられる時間は多くなっている。ただ、そこには落とし穴もあると言う。

「ヘルスケアに関する事業を行なっているので、今の状況下では自然と情報過多になってしまいます。正しい情報を正しく得るのは大事なのですが、あまりにも多くの情報を採り入れてしまうと押しつぶされてしまう。いろいろな情報をインプットしなければいけないのだけど、それを整理する前にいろいろなことを進めてしまうと、行き詰まってしまうのです」

 そこで気づいたのが、頭を無にする時間の必要性だという。鈴木氏が選んだのはジグソーパズル。

「家族みんなで“ワンピース”を探すことに集中して、無心にやっていますよ」

 楽しみながらリフレッシュができるそうだ。

 家族との時間が増えたことによってやり始めたもう一つは、料理だ。これには「コロナへの備え」も含まれている。

「例えば妻がコロナウイルスに感染しないとも限りません。そうなった場合に、子供たちに食事を作ってあげられるように、料理もやるようになりました」

調理師だった母の教え

 そんな鈴木氏には子供の頃から心掛けていた習慣がある。毎朝の便をチェックすることだ。

「調理師だった母から常日頃言われていたのは、『腸が大事』ということでした。子供の頃からよく食べていたのはキノコや梅干し。それに、お腹を冷やさないように夏でも温かい緑茶を飲んでいました。でも、何より大事なのはバランス良く食べることです。母の教えでそれをつねに意識していました」

 鈴木氏は静岡の高校を卒業した00年にJリーグの浦和レッズに入団し、プロサッカー選手生活をスタートさせた。当時はまだ「腸活」という言葉がない時代。だが、毎朝の便の状態を自身の体調の評価軸とし、同時にバランスの良い食事を心掛けていた。

 すると、その習慣が功を奏したと感じる出来事が起きた。04年3月にUAEで開催されたアテネ五輪アジア予選でのことだ。

 代表チーム23人中18人が下痢の症状を訴える非常事態。試合直前までトイレにこもる選手がいる大変な状況で、腹を壊すことなく万全な状態で試合に臨めたのは鈴木氏を含めてわずか5人しかいなかったという。

「あのときは、普段から健康な腸を意識する毎日を過ごしていたのが良かったのだろうと思いましたね」と、しみじみ語る。

鈴木氏の健康のバロメーターは?

 08年に扁桃炎でシーズンの序盤戦を棒に振ったことも、日頃の健康意識をさらに高めることにつながった。便のチェックもより周到になった。

「便にはプロセスがあります。ですから、毎日の変化を見て、その前に何をしたのかを思い返すようになったのです。どういう精神状態だったのか、どういう負荷がかかっていたのか、何を食べたのか」

 現役を退いた今は、疲労回復のために多くのカロリーを摂ることに意識を割いていた現役時代と異なる視点を持つ。

「以前は栄養をどれだけ取るかにフォーカスしていたのですが、今は栄養をどれだけ吸収しているかに意識が向いています」と言う。

 そんな鈴木氏の健康のバロメーターは、40センチにも及ぶ特大うんちだ。

「トイレに入って、40センチくらいスルスルスルっと出たとする。そういうときって、ああ、調子がいいんだなと思うんですよ。下痢になったら誰でも調子が悪いのは分かると思うのですが、どういうときが調子が良いのかを知るには、これがいい」

Jリーガーたちをサポートする中で気づいた変化

 16年1月の引退後は、自身が立ち上げた会社でJリーガーをはじめ、28競技のアスリートのサポートを行なっている。その中でここ数年は、アスリートの意識が少しずつ変化していることを感じているという。

 寮生活で出された食事であっても、料理の内容を見て足りないものがあれば、それを補うことのできる選手が増えているそうだ。

「例えば、カツ丼と味噌汁だけではなく、そこに野菜をプラスして、副菜を用意して、フルーツを添える。そういうことをできる選手が増えています」

 鈴木氏は、コロナ後、またはwithコロナの時代はどのように人々の志向が変わると予測しているだろうか。

「まず言えるのは、人は健康でなければ人生を楽しむことはできません。ですから、健康であろうとする意識が確実に高まることが予測できます。そうなると食生活にも変化が起きますよね。毎日好きなものを食べるだけではなく、数日間のトータルで足し算引き算をしてバランスを整える人が増えていくと思います」

 健康志向へのシフトと相まって、経済の大幅な落ち込みが人々の人生観を変えていくことも予想している。

「社会が止まってしまえば、生きるための仕事も脅かされていきます。それが分かった今、経済が右肩上がりに上がっていくことだけが幸せなのか、という疑問も出てくるでしょう。働き方改革という流れに加えて、今回のことでリモートワークが進みましたから、今後は地方に住んでリモートで仕事をして、人生を楽しもうとする人が増えていくのではないでしょうか」

サッカー界に対する複雑な思い

 一方で、サッカー界に対しては複雑な思いを抱かざるを得ないという。

「私はJリーグのOBですから、サッカー界には貢献したいですし、絶対につぶしてはいけないと思うのですが、今はそこに力を割くことは難しい。しかもコロナは日本だけの問題ではありません。

 世界では工場の操業がストップしたことで空気が綺麗になっているところがあると聞きます。そういうことを見聞きすると、やはり地球には自浄作用があるのだなとあらためて感じます。経済を膨らませば膨らますほど問題が出てくるという摂理が見えた中では、やはり、いろいろと考えさせられます。ただ、地球を汚さない方向に進むよう、持続可能な取り組みができるのが日本だという思いもあります」

 今、鈴木氏が喫緊の課題だと強調するのは、安心・安全な社会を回復していくことだ。

「プロスポーツやエンタテインメントの興行が成り立つのは、それを応援してくれる皆さんの生活基盤がしっかりしていることが前提です。議論の先に何があるかを設定してから議論をし、まずは各地域の経済活動、社会活動を正常に戻すべきです」

 アスリートが第一に望むのも社会の安定回復なのだ。

(矢内 由美子)

あわせて読みたい

「Jリーグ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    竹中平蔵氏を叩く情報弱者に呆れ

    城繁幸

  2. 2

    感染拡大を放置 安倍政権に怒り

    鈴木しんじ

  3. 3

    コロナの誤解指摘 辛坊氏に反響

    女性自身

  4. 4

    橋下氏「熊本知事の後悔分かる」

    PRESIDENT Online

  5. 5

    人はなぜ不倫しないか 識者疑問

    PRESIDENT Online

  6. 6

    行政の現場丸投げに尾身氏が怒り

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    ソウル市長が失踪 娘に遺言か

    ABEMA TIMES

  8. 8

    大学のオンライン授業移行が波紋

    ヒロ

  9. 9

    真実より視聴率重視するマスコミ

    菊地直子

  10. 10

    河井事件めぐる検察の悪辣な策略

    郷原信郎

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。