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  • 2012年08月26日 02:02

手軽な資金調達サイトと若者たちの挑戦

今日は、アメリカを中心に、近年凄まじい人気を誇っている、気軽な資金調達(「クラウド・ファンディング(Crowd Funding)」)サイトの1つ、「Indiegogo」というウェブサイトサービスを紹介したい。

アメリカのエンターテイメントといえば、音楽、映画、ミュージカル、演劇、オペラなど様々な一大産業のイメージが思い浮かぶ。ただ、我々は既に有名になった俳優や女優に注目することが多い。

しかし、世界をリードするアメリカの映画業界の原動力、アメリカのエンターテイメント産業を支えているのは、志の高いアメリカの若者たちである。

今や、イギリスウエストエンド、アメリカブロードウェイの巨匠であるアンドリュー・ロイド・ウェバーも、17,8歳の頃からミュージカルの作曲をしていたが、若いころは資金問題をクリアーするのは容易でなかった。現に、アンドリュー・ロイドウェバーの出世作となった「Joseph and Amazing Technicolor Coat」という作品は、Colet Courtという私立小学校の演目として15分程度の作品だったがそれが後に世界的な大ヒットとなる作品へと変貌していくのである。世界的なミュージカルの巨匠も私立小学校の演目がいわばデビュー作だったのである。

スピルバーグ監督も、21,2歳の頃に、無給の研修生として映画会社で働き、そこで成功を収めていったという話は知っている人も多いだろう。

つまり、アメリカのアメリカのエンターテイメントは、常に、20代から30代の若い原動力が支えてきたという側面があるのである。

そのアメリカの若き俳優やスタッフたちにとって最も大きな悩みのタネはやはり資金調達である。どんなに素晴らしい映画や演劇、ミュージカルも、資金調達ができなければ、日の目を見ることはできない。

しかし、アンドリュー・ロイド・ウェバーやスティーブン・スピルバーグ監督の若手時代には存在しなかった効率的な資金調達手段が、今のアメリカには存在するのである。

先日、アメリカのエンターテイメント業界では、気軽に使える資金調達サイト、Indiegogoというものが良く使われているという話を聞いた。

このウェブサイト、元々は、ウォールストリートのアナリストが本業のDanae Ringelmannが、アーサー・ミラーの演劇をプロデュースしたところ、演劇は人気だったにもかかわらず、資金難となってしまったため、それを解決するために立ち上げたもののようであるが、今やこのウェブサイトはアメリカだけにとどまらず、世界中のエンターテイメント業界の人々にとって欠かせないものとなっている(立ち上げの経緯については、本人が説明している動画がある。)

このウェブサイトが人気なのは、この記事のタイトルにも書いたように、気軽に資金調達ができるという点である。

例えば、アメリカの映像学や演劇学を専攻するアメリカの大学生にとって本格的な映画を制作したいと思ってもそう簡単には作れるものではない。

「先立つものは金」という話ではないが、ある程度本格的な映画を制作するためには資金調達という最大の問題を解決しなければならない。

そこで、映画の製作費を調達するため、このサイトが利用されているのである。

日本でも、NHKのロシア語講座に出演していたドミトリー・ディムシェンコさんは、現在、アメリカの大学で映画製作の勉強をしながら、ハリウッドの俳優として成功することを目指しているが、彼もこのウェブサイトで、「Sector(セクター)」という映画製作のための資金調達をしているという。

この「Sector(セクター)」という映画、ウェブサイトによると、サイエンスフィクションで、2051年、ウィルスが広まり滅亡しかけている地球は、いくつかの「セクター」に分けられて統治されていたところ、その内の「Sector 8(8番セクター)」において、ワクチンが開発され、このワクチンを2人の兵士が取りに行く最中に、想像を超える恐ろしい出来事が起こるという話のようで、構想それ自体も学生制作の映画という枠を超えており、なかなか面白そうな印象である。さすが、本場、ハリウッドで学ぶ学生は違うといったところであろうか。

この映画の資金調達を参考にみると、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル、300ドル、500ドル、1000ドル、5000ドルという区分で、募金ができるようになっており、それぞれの金額区分に応じて募金をした人には、特典がもらえるという仕組みになっている。

この金額設定も、「Indiegogo」が利用しやすい理由であろう。

募金をする側にとっても、比較的、少額から募金が可能であるため、募金をすることにさほど抵抗感がない。

また、特典をもらえるというよりは、むしろ、募金する側は、自分が製作者たちとともにその映画やプロジェクトを育てているという感覚を持つことができる点が重要で、この「Indiegogo」で募金する人々の最大の理由が、この点にあるといってもいいだろう。

つまり、その活動に賛同して一緒にその活動を行いたいという感情が募金する側の一番の動機付けとなっているのである。

募金金額の設定は、資金調達する側が任意に設定できるため、その資金調達プロジェクトの内容に応じて柔軟な資金調達キャンペーンを展開できるのである。

また、「Contribute Now」というボタンをクリックし、クレジットカード決裁が可能であるから、募金する側も気軽にできると言う点も、多くの人が募金をする理由であろう。

ところで、ドミトリーさんは、日本でNHKのロシア語講座(現在もNHKで再放送として放送中のようである)の他にも、関東のローカルテレビ局、東京MXが放送する番組、「五時に夢中」という番組にも出演していたことがあり、日本語もかなり堪能のようであるから、将来、日本語の上手なハリウッド俳優又はハリウッド監督として来日するかもしれない。その時、エンターテイメント業界へのデビューがNHKや東京MXであったということであれば、NHKや東京MXは、「なかなか目の付けどころが良かった」との評価を受けるのではないだろうか。いずれにしても、親日家のハリウッド俳優やスタッフが誕生することは日本にとって良いことであり、彼の成功を祈りたい。

さて、アメリカには、ドミトリーさんのようにエンターテイメント業界で成功しようとする若者が数多くいる。

そして、アメリカのエンターテイメント産業が世界一の座に留まり続け、ハリウッドやブロードウェイでの成功がその一例に挙げられる「アメリカンドリーム」という観念が、何百年も、アメリカの不朽の価値として続いているのは、彼らのような若い俳優やスタッフの若いエネルギーが、淀みを排除し、常に良い循環をアメリカ社会にもたらしているからであろう。

そして、アメリカの強みは、ドミトリーさんのように、アメリカだけでなく世界中から、志の高い若者がアメリカエンターテイメント業界での成功を目指して集まってくるところにある。

こうした彼ら若い俳優やスタッフにとって、資金調達という最大の難問を解決してくれる「Indiegogo」は、いわば、「成功を掴むための黄金のかけ橋」となるのではないだろうか。

ドミトリーさんの映画製作を応援したいという人は、上記リンク先にあるウェブサイトが実際にどういうものであるのか見てみると良いだろう。

さて、これだけ簡単にできるということだとすると、この「Indiegogo」が詐欺などの違法な資金獲得手段に利用される恐れはないのであろうか。

この点について、「Indiegogo」は、すべての資金調達キャンペーンは詐欺や違法な目的で行われていないかを判別する審査を経ることとなっていることや、詐欺の可能性があると判断された段階で、募金活動のウェブページが閉鎖されること、さらには集まった資金が実際に配給される前に、資金凍結をするなどの手段をとることとしているという。そして、違法行為を防止するため、法的措置がとれるように約款等への同意を資金調達を行う代表者に義務づけており、これが法廷に証拠として提出されることも想定している旨説明をしている。

また、「Indiegogo」は、あくまで募金という性質であることを認識して利用するように呼びかけている。すなわち、募金をする側は、あくまでそのプロジェクトについて賛同して募金をするのであって、物を購入する目的で利用するものではないから、そのプロジェクトが成功しないという場合のリスクは自覚して利用するようにと注意を促しているのである。

したがって、審査をするなどして利便性から生じる悪用による負の面は手当てされているようで、私が調べた限り、「クラウド・ファンディング(Crowd Funding)」という新しい資金調達方法としてその可能性に対しての注目がかなり高いようである。

この「Indiegogo」は、ドミトリーさんのように映画制作等のエンターテイメント産業に関わる資金調達だけというわけではない。

確かに、元々そういう趣旨で始めたというだけあって、エンターテイメントの製作費調達という資金調達プロジェクトが多いが、例えば、父親を火災で失った家族への支援とか、動物の保護など様々な分野で募金活動が行われている。

今回、この「Indiegogo」のアメリカでの人気について知ったが、こうした、「Indiegogo」のような「クラウド・ファンディング(Crowd Funding)」が日本でも、もっと活用されるようになれば、良いアイデアを持つ若者がもっと活躍して、若いエネルギーが日本をより元気にしてくれたり、様々な社会問題を解決する良い契機になるのではないだろうか。

なお、この「クラウド・ファンディング(Crowd Funding)」のウェブサイトは、「Indiegogo」の他、「Kickstarter」というものがあり、こちらも同様に、資金調達サイトとして人気を集めている。規模としては、この「Kickstarter」の方が大きいようで、アメリカではこの二大クラウド・ファンディング・サイトが志の高い若者たちにとって、「成功のための黄金のかけ橋」となっているようである

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