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中国の台頭を見据え、21世紀をどう生き抜くか

このところ日本を取り巻く周辺各国からの領土をめぐる攻勢が目立つ。このままいくと、戦争しかないとの発言も散見される。あながち、極論として放置出来ない雰囲気も漂う。そんな時に岡崎久彦『二十一世紀をいかに生き抜くか』を読み終えた。キッシンジャーの名著『外交』上下巻からの引用を駆使しながらの記述は、さながら国際政治原論といった感じで読み応え十分である。民主党、自民党の若手政治家の要請に応えて行った講義が下地になっているという。

 この人は、かつての日本と英国の間の同盟のように日米同盟を根幹に据えていけば、日本の未来は安泰だとしたうえで、集団的自衛権の行使を直ちに認めるようにすべきとの持論を説いてやまない。この本でもその基軸はいささかも揺るがず、むしろこれまでの主張の集大成ともいえよう。遅れてきたる後輩たちへの遺言のような趣きもあるかのごとくに思われる。

 「全編を通じて近代政治史のすべての事象を今後の対中国政策を意識しながら書いてきた」と言われるだけあって、随所に中国の勃興についての見解がみられるが、中国の将来についての5つの仮説の提示は興味深い。

 1)1990年代の日本のケース 2)1980年代後半のロシアのケース 3)1930年代日本のケース 4)20世紀初めのドイツのケースと18世紀初めのフランスのケース 5)19世紀末の英米関係のケース

 岡崎氏は、この5つのうちのどれか、あるいはその混合が、今後20年間に日本が直面する東アジアの情勢だと予測しつつ、それ以上に踏み込んでいない。ここは、具体的に見通しを述べて欲しいところだ。

 そのうえで、日本が生き延びるために、1)情報システムの改善 2)集団的自衛権の行使―を挙げている。あくまで情報を的確に入手したうえで、日米同盟の基軸を盤石なものにすることが根本だとしていて分かり易い。

 唯一難点を指摘させていただくと、キッシンジャー氏の引用が多いのはいいが、その訳がいささか分かりにくいように思われる。訳者は岡崎氏自身。残念ながらストンと落ちず、かなりギクシャクする印象は避け難い。もっと意訳して欲しいとの思いがする。こちらの知識不足を棚上げして、“天をも恐れぬ物言い”と指弾されそうだが、率直な願望だ。

 前回取り上げた『戦後史の正体』で孫崎享氏は、キッシンジャー氏自身がいかに日本嫌いであるかを指摘していたが、そのあたりの背景も岡崎氏に語ってもらいたいとの思いがしきりに募ってくる。

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