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山本美香さんの死を悼む それでもジャーナリストは危ない現場に向かう

 タリバン支配下のアフガニスタンやイラク戦争など数多くの紛争地帯を取材してきたジャーナリストの山本美香氏が20日、内戦状態にあるシリアのアレッポで銃撃戦に巻き込まれて死亡した。反体制派武装組織「自由シリア軍」に同行しながらの取材中だった。

 紛争地でジャーナリストが犠牲になると、その死を悼む声と同時に、「なぜ、そんな危ないところに行く必要があったのか」という声があがる。しかし、果たしてそこが危ない場所かどうかは、ジャーナリストが現地に赴き取材をすることで、初めて明らかになる。その意味で、その場所が危ないかどうか、あるいはどの程度危ないかがわからない状態でも、それを知るためにも現場に入らなければならないのは、ジャーナリストの宿命とも言える。

 ジャーナリストが一人もいない戦場には武装した紛争の当事者と市民しかいない。国際社会の監視の目が不在な状態になる。そのような場所で敵国や敵国民に対する憎しみに満ちた軍隊が、どのような行動をとるか。そこにジャーナリストが一人もいなければ、そこでどのような非人道的な行為が行われようとも、国際社会はそれを知ることができない。故に、自国の政府に対して、事態に対応するよう求めることもできない。

 同じような文脈で、尖閣諸島や竹島問題に揺れる領土問題についても、気になることがある。  それは、通常は中立性が求められるはずの報道メディアでも、ことテーマが領土問題となると、どの報道機関も自国の言い分のみが正しいという前提に立った報道しかできていないように見えることだ。

 報道といえども日本の報道機関であれば日本の国益に資するような報道をすべきである、あるいはこと領土問題については日本側に立った報道をすべきであるという意見は一見当然のことのようにも聞こえる。

 しかし、ここでの曲者は「国益」だ。

 言うまでもないが民主国家にとって、何が国益かを決めるのは国民である。誰か偉い人が何が国益かを決めて、国民やメディアがその範疇で行動するという話ではない。では、その国のメディアが状況を正確かつ中立的に伝えずして、その国民は何が真の国益かを正しく判断できるだろうか。中国の国内事情に詳しい東海大学の葉千栄教授はビデオニュース・ドットコムの番組の中で、日中双方のメディアが、自国政府の主張が絶対的に正しいとの前提に立って報道していることが、両国の世論を先鋭化させ、尖閣問題を必要以上にエスカレートさせているように見えると指摘している。

 日本の大手メディアは記者クラブによる拘束があるため、領土問題について報じる際は事実上政府の公式見解に縛られている。それを逸脱した報道をした場合、外務省の記者クラブである霞クラブからの制裁などを受ける危険を覚悟しなければならない。以前に日本政府の自粛要請を無視してソ連のビザを取得して北方領土を取材した日本の放送局が、外務省の記者会見から閉め出された前例もある。

 しかし、そもそも報道自体が中立性を欠いてしまっている時、「日本の国益に資する報道」が本当に国益に資するものかどうかを、われわれはどうやって判断できるのか。

 一見、国益に資する報道をしているつもりでも、それが大変な国損を招いてしまう危険性はないだろうか。その時に、国益に資するとされる情報しか得られないわれわれは、その事実を正確に知ることができるのか。

 今更ながら、なぜ中立な報道が必要なのか、真に国益に資する判断をするために必要な報道とはどういうものなのか、デリケートな問題だからこそ思考停止をせずに、冷静に他者性を踏まえた議論をする必要性について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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