記事

「学費減額」に慎重な検討が必要な理由と、今後求められる学生への支援

1/2

学費減額より学びの充実を

周知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大が学生にも大きな影響を与えている。

そうした中、学生による大学の学費減額要求運動が盛り上がっている。

大学キャンパスが閉鎖され、4月は授業がほとんど実施されていない、図書館など大学の施設も利用できず、満額の学費(授業料+施設利用料等)はおかしいのではないか、と。

筆者も大学院に通う学生であり、感情的にはとてもよくわかる。

が、全体として見た時には、やや正当性に欠ける要求である。

まず、授業に関して言えば、基本的には学期単位、もっと言えば4年単位(大学院だと2年や3年)の授業等を等分しているものであり、今学期も当然多くの大学が休日や土曜日に補講を実施する。

オンライン授業の質に関しては、主観的なものであり、人によっても満足度が異なるため評価することが難しいが(オンライン授業の方が移動時間がかからない、気軽に質問できる等メリットも当然ある)、基本的にはその授業を充実させるために、Wi-Fi環境やデバイス支援、教員とのQ&A充実(そのためのTA費用の追加)等、政府や大学に費用を捻出してもらう方が建設的であろう。

また、図書館の利用なども、本の購入代やジャーナルの契約料は学生の利用有無に関わらず費用が発生するものであり、すぐに減らせるものではない。

第一、最近では多くの大学が電子ジャーナル、電子書籍を充実させており、キャンパスに行かなくても利用できる。

ただし、全ての本や論文が電子で読める訳ではなく、理系の実験、美大や音大の実習などキャンパスに行かなければならないものも多い。

そうした点は、後述するように、徐々に一部開放を大学側にして頂きたい。

(そもそも授業料が高い、国の教育予算が少ない、というのは全くもってその通りだが、今年に限った話ではないため、緊急対策と分けて議論する必要がある)

学習・研究への支障&経済的損失&精神的疲弊

今回、学生に様々な影響を及ぼしているが、大きく分けると、学習・研究への支障、経済的損失、精神的疲弊という3つに分類することができる(3つ目の精神的疲弊へのケアについては対応策が思い浮かばないためこの記事では「学習・研究への支障」と「経済的損失」について言及する)。

そして、これまでの政府の対応を見ると、学生も含めた国民一人あたり一律10万円給付が実現したことによって、アルバイトの減少やWi-Fiの通信料、プリントアウト代等の負担軽減に繋がるため、一定の評価はできるが(逆に言うと、これが実現しなければ相当ヤバかったのだが)、それぞれで足りない点がまだ存在する。

下記のほとんどの内容は既に3月時点で、筆者が代表理事を務める日本若者協議会から与党に提言しており、動いて頂いているが、すみやかな第二次補正予算の策定、実現をお願いしたい(緊急提言で、時間がなかったため与党に優先的に提言したが、もちろん野党側にも検討頂きたいものである)。

まず、一つ目の「学習・研究への支障」に関しては、先述した通り、一部電子ジャーナル、電子書籍が利用できるが、大学間にも差があり、利用できる書籍も限られるため、オンライン環境の拡充が求められる。

また、既に予算措置はとられているが、Wi-Fi環境やデバイス(自分のPC)などが揃っていない学生もいるため、そこへの支援を急ぐべきである。

その際、学生にばかり目が向けられているが、講義を配信する教員側の負担も増えており、特に給料の低い非常勤講師に対してはすみやかな支援をお願いしたい。

そして、なぜか最近は外出自体が悪かのように言われているが、大学図書館や国立図書館、実験室など、こうした教育機関は研究に欠かせないものであり、一定の条件(「三密」を避ける)を満たした形での、教育機関の一部開放をすべきである。

実際、研究者らの有志でつくるグループ「図書館休館対策プロジェクト」の調査によると、大学や自治体が運営する図書館の休館やサービス縮小が続く中、約6割の学生や研究者らが自らの研究に影響があると回答しており、一部の大学は9月末までの図書館を含めた大学構内への立ち入り禁止を既に発表しているが、再考してもらいたい。

「図書館休館による研究への影響に関する緊急アンケート」

その上で、基本的にはこの環境下で可能な限り学習環境を充実させるべきだが、海外への渡航が制限される中で、どうしても留学に行きたい、現地調査などが終わらない、といった学生のために、休学費用の負担軽減も考えるべきではないだろうか。

「学習への支障」に関して、今後求められる学生への支援をまとめると、下記のような内容になる。

・オンラインデータベース・電子ジャーナル、電子書籍の拡充

・図書館や実験施設の一部開放、非来館型の貸出サービス

・Wi-Fi環境、デバイス等への金銭的支援(学生だけではなく、非常勤講師にも)

・留学生への単位認定の要件緩和

・卒業/修了要件の一部緩和(学会発表の回数等)

・国家試験の受験資格取得のために必要な実習等の規制緩和

・休学費用の負担軽減(原則無料)

・科研費及び学振等の研究費への柔軟な対応(次年度への繰り越し等)

・アカデミックポストの確保

・大学費運営交付金、私立大学等経常費補助金の拡充

こうした緊急時には、どうしても声の大きい(人数の多い)方に目が向けられがちであるが、少人数授業や実験、留学等、学習面で実質的に最も大きな影響を受けているのは、研究がメインの大学院生の方であり、政府には学部生に限らず、大学院生、ひいてはポスドク等の若手研究者にも目を向けてもらいたい。

既にアメリカでは、留学生の減少等により、研究者の解雇や給料削減をする大学も出ており、将来的な日本の研究力を低下させないために、大学側の収入減に併せてアカデミックポストを減らさないよう、予算措置をして頂きたい。

そして、後述の経済的損失(困窮学生への金銭的支援)も含め、大学によって状況も異なるため、細かく紐付きの予算を講じるよりも、一定額まとめて予算を講じた方が適切な施策を実施できるのではないだろうか(例えば、大学費運営交付金、私立大学等経常費補助金を10%分上乗せする等)。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。