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科学者に寄りかかった政治――安倍政権「緊急事態宣言延長」の曖昧さ

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  • すでにロックダウンを段階的に緩和し始めている各国では「再生産数1以下」といった分かりやすい基準を設けている
  • しかし、こうした「分かりやすさ」は「科学的な厳密さ」とイコールとはいえない
  • 「科学的に誤りのない決定」に縛られた日本政府は、緊急事態宣言の延長と5月末で解除されるかについて、明確な基準を示せていない

 政府が緊急事態宣言の延長を決定したことは、状況が変化するなかで流れに身を任せがちな日本的リーダーシップの典型といえる。

どうなれば解除されるのか

 安倍首相は5月4日、緊急事態宣言を5月31日まで延長すると正式に発表した。

 事前告知があったこともあり、その意味では驚きもないが、安倍首相の演説を聞いていて分からなかったのは、「どうなれば次回は延長しないのか(あるいはどうなればまた延長するのか)」だった。

 演説のなかで安倍首相は延長の理由として

・「感染者の減り方が十分でない」、

・「まだ1万人以上の重症患者が治療中」、

・「重症患者の治療に力を入れるために新規感染者を減らす必要がある」、

・「毎日100人以上が退院・回復しているがそれを下回るまで新規感染者を減らす必要がある」、

と述べ、一段の協力を国民に求めた。

 しかし、それでは1日あたりの退院・回復者が新規感染者を上回れば、あるいは1日当たりの新規感染者が100人を下回れば、危機が(終息とはいわなくとも)一段落就いたとみなして緊急事態宣言を終わらせるのか? そこについては何も明言しなかった。

 日本の場合、欧米とは異なる、いわばソフト・ロックダウンともいうべき自粛だが、政府の支援の遅さと手薄さも手伝って、それでも経済状況は加速度的に悪化しており、例えば東京商工リサーチによると「新型コロナ経営破綻」は4月24日までに全国で93件にものぼっている。

 この状況のなか、感染拡大を防ぐ必要があることは勿論だが、緊急事態宣言終了の基準が示されず、ゴール設定が分からないまま「協力をお願いします」といわれても、先行きへの不安は払しょくされない。

海外でのロックダウン緩和基準

 すでにロックダウンを段階的に解除し始めた国はいくつもあるが、このうち例えば物理学の学位をもつメルケル首相が率いるドイツの場合、「再生産数1以下」を基準にした。1人の患者がウイルスを感染させる人数を1以下にすれば、感染は収束に向かうというのだ。

 「再生産数1以下」は国際的なトレンドとして認知されつつあり、メルケル首相の方針は「科学的」との評価も高い。

 一方、経済再開に前のめりのトランプ大統領のやり方は、もっとラフなものだ。4月16日、トランプ大統領は再生産数などにはほとんど触れず、「新規感染者の減少」だけをほぼ唯一の理由として「ピークは過ぎた」と断言。経済再開に向けたガイドラインの策定に着手した。

 こうしてみると、メルケル首相とトランプ大統領の方針は、トーンは全く別物だが、「状況がどうなれば緊急事態宣言に区切りをつけるか」に関して、国民に分かりやすい基準を提示した点ではほぼ共通する

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