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「自粛密告」と活動再開、日本の分岐点の今

人々の活動を法律ではなく、自粛要請という形で縛る日本独自の方法が今後の長期戦でどこまで有効なのか、キチンと評価しなければならないのではないか。

新型コロナについてはいろいろと情報がとびかっているが、わかっている事はそれほど多くはない。

そのなかでもほぼ確実とみられるのが、この感染症は短期間では終息しない、1回終息して終了とはならない、という事である。
自然感染による集団免疫やワクチンの話などはいろいろと言われてはいるが、すべて憶測であり、今のところ確実な終点は見えていない。

抗体検査は新型キットの開発により、今後精度の向上が見込まれる(参考)が、PCR検査の精度に関しては、今のところ主に人材リソースの問題であり、早期での解決はなかなか難しい(参考)。

抗体陽性者数や感染者数といった数字を扱う場合、その前提となる検査の精度を考慮する必要がある。

結局のところ、この感染症への対応としては、飛沫・接触感染の機会を低減させる、という方法しかない。
都市封鎖、検査と隔離、活動自粛要請などの方法論のどれを選択するかは、状況や国の持つリソース、お国柄によって変わってくるが、日本は活動自粛要請というやり方を採用・維持している。

長期継続が不可避の状況で、この方法の継続は様々な問題を噴出させている。

問題の主たる症状は、経済環境の悪化だが、ここでは活動自粛要請という日本独自の方法に固有な問題に絞って考えてみる。

活動自粛要請が機能するためには、国民意識がある程度統一されていなければならない。
自粛の要請に応じない人が一定数以上いると、当初の目的は達成されない。
従って、自粛の要請は、自粛の均一な浸透でなければならないため、これを可能にするための方策が(意識的/無意識的に)多方面で施されることになる。

街頭アナウンス、CM、ポスター掲示など地方自治体単位のキャンペーンから「自粛警察」と呼ばれる民間人による自警団的活動まで、幅広い活動がみられるが、地方によっては「自粛密告」を推進するところも出てきており、一部で先鋭化の兆しがみられる。
(筆者の現在住んでいる和歌山県では、「休業要請等に関するお問い合わせ窓口について」と題する文書が県から配布されている。そのなかで、県外から来た人の近所に住む人は、登録を勧めたうえ、できない場合は直接県の連絡ダイアルに通知するように、との指示が出されてある。)

自粛要請期間が長くなればなるほど、人々の抑制されていた活動欲求が自粛意識を食い破っていく確率が高くなっていく。
そういった事態を回避するためにとれる対策は2種類しかない。
自粛要請の範囲を緩和するか、自粛意識浸透レベルを維持するためのキャンペーンをより先鋭化させるか、だ。

専門家会議が「感染状況の厳しい地域」と「新規感染者数が限定的になった地域」で分けて対策すべき、という答申を出している(参考)ことから、今後、日本国内ではこの2つのタイプ(自粛緩和と自粛維持)の対策が混在することになる。
そうなった場合、各地域で自粛緩和と自粛維持の綱引きが行われることになるが、客観的データに沿って自粛のレベルが適切に運用できるかどうか、という難題が出てくるだろう。

自粛は飽くまで要請なので、人々の心理面の動きやメディアのコミュニケーション戦略によって大きく影響される。

ニーチェが言うように、「民衆が喜ぶのは自分の姿を明るく照らしだす光ではなく、自分を幻惑し、熱狂させてくれる俳優なのである」(「ツァラトストラ」市場の蠅の章より)

メディアには教授、政治家、元政治家、タレント、コメンテーターなど多くの「俳優」が登場するが、一般論的には強い言葉で受け手を幻惑し、熱くさせてくれる発信者が影響力を大きくする。

自粛要請、という日本独自のシステムは心理戦の要素を色濃く残してしまうため、長期間続いた場合、発信者の影響により、締め付けと緩和どちらかのサイドに大きく振れやすくなる。

「みんなで頑張っていきましょう」という標語だけでは長期間はもたない。
無理やりもたせようとすれば、「自粛警察」や「自粛密告」などの装置が自然発生的に働き始める。
逆にもたない空気が濃厚になってくると、自粛緩和支持の情報発信者が増え、活動レベルが一気に跳ね上がりかねない。

これまでの経緯で、市中でクラスターの発生しやすい場所はある程度判明しているのだから、重点的に営業の休止を縛るゾーンとそうでないゾーンを区分けして、人々の心理面が影響する範囲を狭くしていく方法をとらないと、この感染症を長期にわたって安定的に制御することはできない。

日本の自粛要請政策は事実上、欧米のロックダウン政策と同程度の効果をみせていると考えられる(参考)が、「欲しがりません勝つまでは」的な精神運動をアテにした政策の効果は長続きしない。

むしろ、あいまいでメリハリのない自粛要請政策は、長期になればなるほど様々な問題を露呈していくだろう。

今こそ国や地方自治体の強い決断力が必要だと思う。

今後もうまく活動休止のレベルを調整できれば、日本のやり方は大成功だったという結果(=人口当たりの死亡者数)に終えることもまだ可能な段階にあるのだから。

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