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コロナ禍で鉄道の減便・運休が続発 京成電鉄の苦肉の策は

2010年に登場した新型スカイライナー

1991年、成田空港ターミナルの地下に成田空港駅が完成。成田エクスプレス」が乗り入れ開業(時事通信フォト)

3代目「スカイライナー」利用者3000万人を達成した記念車両(時事通信フォト)

1978年5月開港当時の成田空港管制室(時事通信フォト)

 つい3ヶ月ほど前までは、成田空港行きの特急指定席乗車券を買うには列に並ばないとならなかった。ところが今では、空港へのアクセスは鉄道もリムジンバスも、がらんと空席ばかりだ。鉄道各社はこの苦境を、どのような工夫で乗り切ろうとしているのか。特に影響が大きい成田空港への路線を例に、どのような策で乗り切ろうとしているのかについてライターの小川裕夫氏が考察した。

【写真】成田空港地下駅開業と成田エクスプレス

 * * *
 新型コロナウイルスの猛威が止まらない。

 3月半ばから呼びかけられた外出自粛はGWにもおよんでいる。最盛期ともいえるGWの外出自粛は、当然ながら鉄道各社の業績を直撃した。

 特に減収が顕著に表れているのは、空港へのアクセスを担う鉄道路線だ。訪日外国人観光客が年間4000万人に達すると試算されていた矢先、政府は新型コロナウイルスの拡大を防止するためにまず、訪日外国人観光客では圧倒的なシェアを占める中国・韓国からの入国を制限した。

 その後も世界各国でコロナウイルス禍が報告され、政府は入国規制の範囲を拡大。国籍を問わず、海外からの入国は厳しい制限が課せられている。規制強化により、実質的に空港は機能を停止した。

 空港が機能を停止すれば、それに伴って利用者も激減する。当然ながら、空港にアクセスする電車の需要も消滅する。これまで空港アクセスを担っていた鉄道各社は、減便・運休を余儀させられている。

 JR東日本は、これまで空港への足として特急列車「成田エクスプレス」を運行してきた。成田エクスプレスの多くは運休し、一部の便は成田まで運行しないダイヤが組まれた。「成田まで行かない、成田エクスプレス」が爆誕したわけだが、運転区間を短縮や減便をしたからといって、鉄道各社が収支を好転させることは難しい。

 外出自粛によって、東京・大阪などの都市圏は大幅に利用者が減少した。鉄道各社は赤字を少しでも抑える工夫として、あの手この手で経費削減に努めている。しかし、それにも限界がある。

 なにより鉄道会社の経費は車両・駅・線路といった施設の維持に費やされる。鉄道会社はこれらの維持費が多くを占めるので、運行本数を減らしても経費削減効果は薄い。そうしたことから、鉄道各社は新型コロナウイルスで困窮を極める。

 JR東日本と同様に、成田空港へのアクセスを担う京成電鉄は他社とは異なった動きを見せている。

 京成は東京都の東側と千葉県に路線網を有する大手私鉄のひとつだが、京成の稼ぎ頭は何と言っても京成上野駅と成田空港とを結ぶ特急列車「スカイライナー」だ。

 2010年、京成はスカイライナー用に新型特急列車のAE形を導入。新型のスカイライナーは最高時速160キロメートルで走行するため、京成は東京都心部と成田空港間を最速36分で結ぶことを実現した。所要時間が短いことをウリにして、京成は利用者の拡大を図った。

 スカイライナーは起点となる京成上野駅を出発すると、山手線と接続する日暮里駅に停車するだけで、あとは空港第2ビル駅までノンストップで運行する。途中の駅には見向きもしない停車駅設定からも、スカイライナーが成田空港利用者に特化していることが窺える。

 訪日外国人観光客が増加を続ける潮流に乗ったスカイライナーは、多くの乗客で溢れることになった。

 しかし、新型コロナウイルスにより状況は暗転。空港利用者・訪日外国人観光客が姿を消した。3月半ば以降、スカイライナーの乗車率は激減。空港関係者の専用鉄道という趣を強くしている。

 成田空港が日本を代表する国際空港といっても、空港職員や関係者だけでスカイライナー全便を満席にすることはできない。空港関係者が多く乗車しても、昨今の状況ではスカイライナーは空席だらけになってしまう。

 スカイライナーが危機に直面する中、京成は急遽として4月11日にダイヤを改正。同改正により、朝夕のスカイライナー6本が青砥駅に停車するダイヤに変更された。

 通常、鉄道会社が4月11日という中途半端なタイミングでダイヤを改正することはあり得ない。そのため、スカイライナーの青砥駅停車という措置は、新型コロナウイルスへの対応と考えるのが自然だ。しかし、京成電鉄経営統括部広報・CSR担当者は、

「スカイライナーを青砥駅に停車させるようにダイヤ改正を実施した理由は、浅草方面から押上線を経て成田空港に向かう乗客が多かったからです。そうした利用状況を踏まえ、成田空港へのアクセス向上と、さらなる利用促進を図る目的で青砥駅にスカイライナーを停車させることにしました。今回のダイヤ改正は、新型コロナウイルスの影響を考慮したものではありません」

 と説明。新型コロナウイルスの影響による緊急対応であることを否定した。

 特急の停車駅を増やせば、途中駅から乗車する利用者もいる。そのため、利用者増に寄与する。スカイライナーの青砥駅停車にも、そうした思惑が透けて見える。

 しかし、鉄道会社が、それを大々的に表明することも難しい。なぜなら、今般、鉄道各社にも密集・密着・密閉の3密を避けるような取り組みが求められているからだ。

 鉄道会社も「感染拡大の防止に協力すべきだ!」「いくら経営が苦しいからといって、3密をつくる気なのか!?」と非難される可能性がある。そんな心配から、京成担当者が慎重な物言いになることは理解できなくもない。

 スカイライナーが青砥駅に停車するようになっても、密集・密着は生じない。今般の状況を鑑みると、スカイライナーの利用者が劇的に増えることはない。

 京成にとってエース特急ともいえるスカイライナーが金食い虫ともいえる存在になっている今、密にならない程度に乗車率を上げようと苦肉の策を講じるのは仕方がない話といえる。

「スカイライナーの青砥駅停車はあくまでも臨時的な措置であり、いつまで実施するのかは決まっていません。また、現行ダイヤは朝夕6本のスカイライナーが青砥駅に停車することになっていますが、青砥駅に停車のスカイライナーをこれ以上増やすことは検討していません。また、青砥駅以外に停車駅を増やすことも検討していません」(同)

 鉄道会社は公共交通という社会的な使命を課されている。赤字だからといって、簡単には路線を廃止できない。列車の運行を完全に停止することも許されない。新型コロナウイルスで乗車率が限りなく0パーセントに近づき、空気輸送と揶揄されても列車を止めることはできないのだ。

 緊急事態宣言は、5月6日までの予定だったが、延長が決まった。鉄道会社にとって逆境が続くことを意味する。それだけに、今後の経営はさらに厳しさを増すだろう。

 これまで、鉄道各社は減便・運休といった方法でなんとか凌いできた。それは、京成も同じだ。しかし、新たな方策を検討せざるを得ない段階にきている。

 難局に立たされた鉄道各社は、どんな取り組みで試練を乗り越えるのだろうか?

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