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日Pの「9月入学慎重」要望書を考える

 大塚玲子のこの記事。

 「9月入学は慎重に」という要望書をPTA全国協議会(日P)が出したが、これは全国の「PTA会員に意見をたずねたことがあるのでしょうか」という問題、「意見が割れている話ですから、もしある程度意見を聞いていたら、このような要望は出せなかったのではないか」という問題だ。

 これは難しい問題だ。

 二つ大きなテーマがある。

どこで決めたのか

 一つは、どこで決めたのか、という問題だ。

 日Pは、事業計画を総会で決定しており、中心的な活動である「公益目的事業」の一つに「広報事業」があり、その中に、「また、適宜、関係府省庁・機関等に対して協力要請、要望活動等を行う」という項目が入っている。

http://www.nippon-pta.or.jp/about/rkra7f0000000f8z-att/2a9af891f630413a674969a70bd0e548.pdf

  上記は2014年度の事業計画だ。要望の中身は具体的に書いていない。

 2018年度は具体的な記述がある。しかし「等」が入っていて、どうとでも受け取れるものだろう。

http://www.nippon-pta.or.jp/about/rkra7f0000000f8z-att/apleht0000000vwe.pdf

 日Pはこれにもとづいて毎年度いろんな要望を行なっている。

 例えば、2014年2月(2013年度)には「大雪災害に対する緊急要望について」という要望書を提出しているが、これなどはたぶん突発的なものだったに違いない。

 2019(令和2)年度と2020(令和2)年度の事業計画はどこでも見られないが、おそらくこのような「適宜、関係府省庁・機関等に対して協力要請、要望活動等を行う」的な、内容を特に限定しない要望活動が定めてあるのだろう。どこで決めたのか。すなわち事業計画にそって、理事会が決めたのであろう。

 したがって、いわゆる定款や総会決定に違反しているという角度での問題は生じていないとぼくは思う。

 その上で問題となるのは、「適宜、関係府省庁・機関等に対して協力要請、要望活動等を行う」のように要望の中身を明らかにせず理事会にゆだねるようなやり方は正しいのかという点だ。

 要望書そのものを具体的に定め、総会で議決に付すのが一番いいのだろうが、そうでなくても「事業計画」にあるような「基本方針」(および「綱領」)に沿ったもので、理事会の権限で要望書をつくる、ということであればそれ自体は無理があるとは言えない。

http://www.nippon-pta.or.jp/about/rkra7f0000000f8z-att/apleht0000000vwe.pdf

  しかし、「9月入学は慎重に」というような要望が例えば「子どもたちの心身ともに健全な成長を図るため、社会の変化に対応した教育改革等に主体的に取り組」むという「基本方針」に沿ったものだ、ということは、まあ言えるには言えると思うが、それって広すぎない? という疑問は起きる。

 しかし、言わせてもらえば「こんなガバガバな広い基本方針で承認されているんだから、『「9月入学は慎重に」は基本方針の範囲だ』という主張には逆らいにくい」という気がする。*1

決め方は

 もう一つは、決め方だ。

 日PはPTAの全国の連合体なのだから、構成している単Pの構成員(つまり一人ひとりの保護者・教員)の意思を確認すべきではないのか? ということだ

 日Pは定款第5条で各都道府県・政令市のPTA協議会・連合会を「正会員」としている

http://www.nippon-pta.or.jp/about/rkra7f0000000f8z-att/6d5ee3711f65eb3c38fe2a416177e48d.pdf

 概念的に言えば、日Pのもとに全てのPTA会員を束ねている全国単一の組織ではなく、日Pは各地方P協の合議体でしかない。だからその方針を決めるのに、いちいち全国の各学校にいるPTA会員にいちいち意思を確認する必要はないということになる。*2

 決め方はどうだったかという問いに対する答えは、「定款に従って事業計画を正会員に諮って(総会で)決めた」ということになるのではなかろうか。

 逆に言えば日Pの意思表示は「全国のPTA会員の総意」ではない、ということである。

いい要望活動をしているとは思うが…

 日Pの要望活動は、すべてを肯定できないけども、いいなと思うものも少なくない。例えば、「教職員定数削減に反対する緊急要望書」のようなものである。

 実は、個人的な感情を言えば、「9月入学は慎重に」というのはぼく個人の気持ちではある。だからそれを支持したいという感情がないとは言えないのだ。それは公平のためにここであらかじめ言っておこう。

 しかし「いいことをやっているんだから、民主主義的手続きはいい加減でいいだろ」というのは、まさにPTAの任意加入をめぐって起きている問題なのだから、ぼくがそういう論理に与するわけにはいかない。

 じゃあ厳密に手続き上不備があるかと言えば、上記で見てきたように非常に杓子定規に言えば、ルール的な(定款上の)問題があるとまでは言えないのである。

このモヤモヤした気持ちをどう解決すべきか

 だが…どうにもモヤモヤした気持ちが残る!

 「全国のPTAの代表のような名前をつけておいて、私たち会員には一言も確認しないで『要望』というのはいかがなものか!?」という気持ちだ。

 そこで解決策・反省点として次の2つを提案しておきたい。

  • 「慎重にせよ」という要望は、相当に意見が割れているテーマだということを配慮して、問題点を列挙する形、つまり事実上「弱い反対」として表現するのではなく、問題点にはまったく触れずに「賛成も反対も会員(保護者と教員)の中にあるので、今拙速に決めないで」というロジックのみを使うべきであった。*3

  • 実際に簡易な調査をやるべきであった。何しろ日Pの定款第4条に日Pがやるべき事業が列挙されているがそのトップが「社会教育、家庭教育…に資する…調査研究」なのだから。すでに意見が割れていることは予想できそうなものだったのであり、それくらいの調査をしてから要望書を出した方がいい。

*1:例えば労働組合の議案書はものすごく「詳細」である。 

https://www.jichiroren.jp/archive/wp-content/uploads/2019/07/h-06.pdf

*2:各会員=地方P協が代議員として自由委任なのか命令委任なのかという問題は残る。

*3:これも程度問題だ。あくまで「配慮」程度の問題である。なぜなら、全国の保護者・教員の意見が一人残らず「同じ」になるような問題はどこにも存在せず、子どもたちの根本利害に関わるような緊急におきた問題について少数意見に配慮した上で執行部=理事会が定款や事業方針(総会決定)の条文・項目・精神に従って何かを決断し行動するのは止むを得ないし、決定執行を委ねられた執行部の当然の権限であるから。

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