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"自宅待機"が危険をもたらすーロックダウンによる家庭内暴力の増加と各国の対策

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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、終わりの見えない自宅待機が続くーー米国各地で大勢の人々がトイレットペーパーや缶詰を求めて店に押し寄せる様子が報じられる一方、また別の大きな不安を感じている人々が数百万人規模でいると考えられている。家庭内暴力(DV)から逃れられない人たちだ。

SeaReedsによるPixabayからの画像

次のような事態が考えられる:
  • 米国にはすでに DVにより自宅が“安全な場所”ではない人が数百万人規模でいる。
    というのに今は、連邦政府・州政府・地方自治体がすべての人に自宅待機を命じている。それが自分たちの安全のためだとー。

  • 家庭内での精神的虐待から逃れられる唯一の手段が「仕事に行く」ことだった人たちが、今はテレワークを強制され、自宅から出られないでいる。

  • 家庭で虐待を受けている子どもたちにとっては学校だけが安全な場所だったのが、今は学校は休校、自宅で勉強せざるを得ない。

  • DV被害者はいつか逃げ出せるようにと、こっそり貯金をしている可能性がある。しかし新型コロナウイルス危機で雇用が不安定になっている今、その貯金を取り崩して生活費にまわさざるを得ない。

  • DV被害のホットラインに相談できるのが、暴力を振るう家族が仕事に行っている間だけだったのに、今はその人と四六時中同じ空間で過ごさなければならないとなったら? ロックダウン(都市封鎖)の発令以来、DV研究の専門家や援助関係者らは、こうした問題に直面するであろう大勢の人々のことを懸念している。

    災害時に明らかに増え、激しさを増すDVの実態

    パンデミック以前から米国では、平均すると毎分20人が家庭内でパートナーからの身体的暴力を経験しているとのデータがある。生涯で身近なパートナーから過激な暴力 ー 硬い物で殴られる、蹴られる・たたかれる、火傷を負わされるー を振るわれる人は成人女性の4人に1人、成人男性の7人に1人という調査結果もある*1

    *1 Domestic Violence Fact Sheets(NCADV)


    ロックダウン下では、多くの家庭がいつもより危険な場所になりうる
    Kittisak Jirasittichai/EyeEm/Getty


    今回のようなパンデミックだけでなく、ハリケーンや地震などの災害時には大勢の人が社会的・物理的環境の混乱に陥るため、そうした変化によりDV発生率が高まるとされている。

    2005年のハリケーン・カトリーナの際は、女性が経験する精神的虐待が約3割増、身体的暴力がほぼ倍増したことを研究者らは明らかにした。2017年のハリケーン・ハーヴェイの時は、危機的状況がすすむにつれてDVホットラインへの相談件数が急増。とりわけ、首を絞められる/蹴られる/殴られる/ナイフで刺される/凶器で怪我を負わされる、といった激しい暴力が著しく増加したことが分かっている(テキサス州家庭内暴力評議会の調査より)。

    研究者たちはすでに、ロックダウンの実施タイミングとDV相談件数の増加には相関関係があると見ている。先にロックダウン状態になった中国・湖北省では、1月および2月の家庭内暴力の通報件数が前年度より3倍増だったとの報告があるし、欧州各国でも通報の数が急増している*2

    *2 フランスでは36%増、スペイン・カタロニア州では20%増。オーストラリアではDVサポートに関するGoogle検索数が75%増と首相が発表、対策費として3億2800万ドルの拠出を決めた。
    Prime Minister Scott Morrison pledges $328 million to combat domestic violence


    米国でも同様の傾向が見られ、とりわけ最初に感染爆発が起きた都市シアトルでは3月のDVの相談件数が21%増(シアトル警察)、テキサス州では35%増だった(モンゴメリー郡地方検事)。全米各地の警察は「DV対応計画」を適用、移動の制約がある中でも被害者がサポートを得られるよう準備に追われている。

    生活の不自由さがより強い支配力の誇示につながる

    米国だけでなく世界中の人々が、“生活が制限されている” と痛感している昨今の状況。仕事、教育、運動、娯楽、人づきあい、あらゆる日常が中断されている。失業した人、労働時間が短縮された人、減給された人たちが数百万人はいるだろう。基礎疾患のある人たちはより感染リスクが高い上に、必要な治療すらも受けにくい。

    人というのは日常生活のある分野で無力感を味わうと、他でより強い力を示そうとしがちである。これはDVが起きている状況では特に危険な要素となりうる。DVの中心にあるのは、片方のパートナーが別のパートナーを心理的、感情的、身体的、性的に支配してやろうとの考えがあるからだ。

    自粛生活はいつまで続くのか、いつになったら日常生活に戻れるのかがはっきりしない今回の危機的状況は、他の自然災害などよりもはるかに悲惨かもしれない。円満ではなかったものの暴力にまでは至っていなかった家庭が虐待に発展する、常習的に虐待があった家庭ではさらにその度合いがエスカレートする恐れも出てくる。



    Nino CarèによるPixabayからの画像

    長期間に及ぶ自宅待機生活は健康な人にとっても堪えるものなのだから、DV加害者となるような人の多くは、自分の感情をコントロールできず、精神的プレッシャーをうまくやり過ごすことがより難しくなるだろう。たとえDV治療に通っているとしても、「カウンセリングに通う」「セラピストと話す」「友人と会う」「運動する」といったことができにくい今、また困難に陥るかもしれない。

    「外出すると感染するぞと言って外出させてくれない」「外出したら、家から締め出すからな」と加害者から脅迫された、との通報がDVホットラインに寄せられている。DVの状況をさらに悪化させる感染症ならではの側面でもある。

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