記事

PCR検査増やせば感染者減る?

2/2

■ 市中感染報道

また最近ではPCR検査から抗体検査に関心が移り、その上で市中感染について報道されることが多くなってきた。

まず、4月24日、慶応大学病院(東京都新宿区)が、新型コロナウイルス感染症以外の病気治療で入院した患者67人に対し、PCR検査を行ったところ、5.97%の4人が陽性だったと発表した。

次に、4月30日、久住英二医師が理事長を務めるナビスタ・クリニック(東京都新宿区・立川市)が4月21日~28日に抗体検査を実施、対象はホームページで募った20歳から80歳の男性123人、女性79人の計202人。(内訳:一般市民147人、医療関係者55人)結果、202人の5.9%の12人が陽性だったことが報じられた。内訳は、一般市民147人中7人が陽性(4.8%)、医療従事者55人中5人(9.1%)が陽性だった。

[画像をブログで見る]

どちらもメディアの報道ぶりは「市中感染」が拡がっていることを示唆していた。

しかし、この2つのニュースに対し、名古屋市立大学大学院医学研究科の鈴木貞夫教授(公衆衛生学)は、「代表性のなさ」「数の少なさ」を指摘する。鈴木教授は、HPVワクチンと有害事象として報告された症状との因果関係がなかったとした、HPVワクチンの安全性に関する調査研究(いわゆる「名古屋スタディ」)を監修したことで有名である。

私の目を引いたのは、慶應大学病院の発表時に、鈴木教授が寄せたコメントだ。

偶然性の可能性排除できず」と題して、鈴木教授は、「PCR検査で正しく陽性と判定できる割合は五~七割程度と低い。約6%が陽性であれば、実際には患者の10%程度は感染者と考えるべきだ。これは公表されている感染者数から考えられる割合と比べ一千倍近く高く驚くべき数字だ。一方で、67人は都民からの無作為抽出ではなく、この結果をもって都民の10%程度が感染者ということにはならない。また数も少なく、偶然の影響も排除できない。」と報道した東京新聞にコメントを寄せた。(引用:東京新聞ウェブ版4月23日夕刊)

同時に、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、「にわかに信じ難い衝撃的な数字だが、米国では発熱した人の検査で5%が陽性という報告があるので、海外よりも深刻だ。院内感染対策を早急に見直す必要がある。感染がまん延している可能性が高くなった今、市民の行動制限よりも、感染リスクの高い高齢者施設と病院でのPCR検査の徹底に切り替えるべきだ。」(引用同上)とコメントを寄せている。

抗体検査を行ったナビタスクリニックの久住英二医師は、希望者202名に対する調査は、都の状況にあてはめられるかと聞かれ、「都民を代表するような集団なんてものはないんですよ。われわれにできることは何かというと、いろんな集団で検査してみて、だいたい数値が一致したら、それぐらいなんじゃない? と推定するしかないんですよ」と取材に答えている。(引用:FNNプライムONLINE

いずれにしても、「市中感染」が拡がっていると断定するには、母数が少ないし、なにより、都民を代表している集団とはいえない。そういう意味において、この数字だけをもって「市中感染」の可能性を論じるにはかなり無理がある。

一方、4月21日、千葉大学も「十分なPCR検査の実施国では新型コロナの死亡率が低いー死亡者数からは、西洋とアジアでは感染の広がりは100倍違うー 」とのニュースリリースを出した。結論として、「新型コロナ感染症で死亡者数を減らすためには PCR検査の陽性率を低下させることが必要であり、そのためには PCR検査数を濃厚接触者などで症状が見られていない者にまで幅広く拡充させることが 急務である」と結論付けている。

これも「PCR検査を増やす派」の根拠になっているが、これも私にはしっくりこない。検査を増やすことが何故、感染爆発を防ぐことにつながるのか、がわからないのだ。番組として、そこが理論的に説明できないのなら、簡単に検査を増やせとはいえないはずだ。

繰り返しになるが、メディア、特にワイドショーは視聴者にとって影響力が強いがゆえに、より慎重に情報を検証することが求められる。

普段テレビを見ない人もテレワークなどで視聴時間が伸びていよう。報道に携わる者は、専門家がしっかり番組を検証していることを忘れてはならない。彼らはウェブ上で新聞・テレビの報道ぶりを詳細に検証し、問題点を指摘している。ある意味ありがたいことだが、果たしてどれだけの番組制作者や記者がそれをみているだろうか?番組制作者は常に謙虚に、専門家の意見によく耳を傾け、その上で、国民をミスリードしない報道を心がけるべきであろう。もとより、大切なことはこの未知のウイルスの感染拡大を一刻も早く止め、一人でも亡くなる人を減らすことなのだから。

注1)PCR検査

Polymerase Chain Reaction法(PCR法)という、遺伝子を増幅する方法を使い、ウイルスの遺伝子を増殖して検出しています。

<PCR法の原理>

まず一本のDNAをもとに、DNAを複製します。さらに、複製された2本のDNAをそれぞれ複製します。これを繰り返すことで、2本が4本、4本が8本、、、と倍々にDNAが増幅されます。患者さんの検体に含まれるウイルスの遺伝子量では検出できませんが、このPCR法で増幅することにより検出できるようになります。(出典:大阪大学微生物病研究所

注2)PCR検査の正確さ

新型コロナウイルスに既に感染していると考えられるのに、早い段階では、60~70%くらいしかPCR検査が陽性にでない可能性が報告されています。(引用:一般社団法人日本疫学会

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    時代遅れの感が否めないほど低画質なサブチャンネル放送 NHKの五輪中継に苦言

    諌山裕

    07月31日 15:52

  2. 2

    バッハ高笑い!?東京五輪「やってよかった」が77%も!

    女性自身

    08月01日 08:42

  3. 3

    コロナはインフルエンザ程度?インフルエンザで死ぬかと思った24歳の時の話

    かさこ

    08月01日 09:14

  4. 4

    資格と能力は違う?資格や履歴書が充実していても使えない人材多い日本

    ヒロ

    08月01日 11:28

  5. 5

    新型コロナ感染者数が過去最多も 病院のひっ迫状況を強調するだけの尾身茂会長に苦言

    深谷隆司

    08月01日 17:19

  6. 6

    次の総選挙結果は「与野党伯仲」ー〝真夏の白昼夢〟を見た/8-1

    赤松正雄

    08月01日 08:31

  7. 7

    感染者4000人超に マスコミは五輪報道からコロナによる医療崩壊報道に切り替えるべき

    早川忠孝

    07月31日 17:57

  8. 8

    五輪の「祝賀モード」は選挙で政権に有利になるのか?減り続ける菅総理のポスターと自民党の焦り

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    08月01日 11:04

  9. 9

    どうして日本から敢えて海外移住するのか?

    内藤忍

    07月31日 11:03

  10. 10

    「日本人の給料はなぜ30年間上がっていないのか」すべての責任は日本銀行にある

    PRESIDENT Online

    08月01日 16:13

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。