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ブンデスバンクがECBの国債買入に反対する理由

ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。

ドイツ連銀でウェーバー総裁のあとを継いだバイトマン総裁も、メルケル首相の経済顧問を退いて以降は、国債買い入れに強く反対するようになった。

また、2011年9月には、ユルゲン・シュタルクECB専任理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。辞意の理由についてはユーロ圏諸国の国債買い入れに反対したものではないかとの観測が流れた。

シュタルク氏はドイツの財務次官やドイツ連銀副総裁を経て、2006年6月からECB理事に就任した。ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際に、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。

シュタルク専任理事の辞意を受けて、ドイツ政府は後任にヨルグ・アスムセン財務次官を指名した。アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の教え子だそうである。

今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。

そもそも何故これほどまでに、ドイツ連銀がECBによる国債買入に反対するのか。それは言うまでもなく、ライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)の亡霊がつきまとっているためであろう。

第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。

7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明した。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。

ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた。さらにイギリスのデーリー・テレグラフ紙もこのシュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じている。

これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言した。これは、当然の発言である。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

ただし、火のないところに煙は立たぬ。今回のシュピーゲルやデーリー・テレグラフの報道は意図的なリークではなかったかとの観測すら出ていた。ドラギ総裁のこれまでの発言内容からは、9月6日の政策理事会でECBが利回りスプレッド目標を設定して国債を買い上げるという手段をとってくる可能性はまだ完全に否定もできない。

しかし、単純な国債買入に対してもドイツ連銀は反対の意向を示し、過去にはドイツ連銀総裁や専任理事の辞任まで招いている。今回、もし報じられたような方式での国債買入が検討されるようなことになれば、ドイツ連銀は国債買入に対してはさらに強行に反対姿勢を示すことが考えられる。これにより再びECB内に大きな亀裂が生じる懸念がある。

それでもイタリア出身のマリオ・ドラギ総裁は強行突破をはかってくるのかもしれない。その際には、ドイツ出身のアスムセン理事の対応も気になるが、アスムセン理事はインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定していた。

ECBはブンデスバンクの影響を強く受けていると言われていたが、その影響下からむしろ脱しようとしているかに思える。ブンデスバンクが神経質すぎるのか、それともドラギ総裁一派が足下の危機回避を優先するあまり、国債買入の弊害を甘く見過ぎているのか。その結果が出るのはまだ先のことである。

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