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ライセンス藤原一裕の絵本のテーマは「いじめ」。体験をもとにした『ゲロはいちゃったよ』の真意

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小説家や役者としての顔も持つライセンス藤原一裕さんが、クラウドファンディングを通じて絵本 『ゲロはいちゃったよ』を自費出版しました。自身が子ども時代に体験したいじめをテーマにした自伝とも言える内容で、集まった資金は目標金額100万円に対し、支援総額144万600円。支援者は206人に。そんな藤原さんに、自身が体験した“いじめ”の話、本を自費出版した背景、今いじめを受けている子ども達に伝えたいことなどを、笑下村塾のたかまつなながインタビューしました。

中1でいじめの標的になった

ーー藤原さんが出された絵本に、ご自身のいじめの体験を書かれているということで、びっくりしました。

藤原:俺は身体がでかいしさ、Wikipediaには空手でインターハイに出たとか書いてあるから、いじめられていたイメージないと思うの。

ーーめちゃくちゃ意外でした。

藤原:俺の親が転勤族で、いじめを受けてたのは新潟にいた中1、中2ぐらいの時。中1で148センチしかなくて、身体がちっちゃかったし、シャイだったの。だからか、俺ともう一人の子が目つけられて、毎日休み時間になると同学年のヤンキーが来るんだよね。いきなり後ろから蹴られたりとか、腹殴られたりとかして。

それが1年くらい続いたころに、もう一人の目をつけられていたA君と、次にどっちかがやられたら助け合おうと約束をしたの。

その約束の次に標的になったのが俺だったんだけど、やられているときにA君をパって見たら、A君は笑ったのね。

ーー助けてくれなかったんですか?

藤原:助けてくれなかった。

ーーものすごい裏切られた気分になると思うんですけど……。

藤原:なる、なったよ。そのときはなった。

ーー許せました?

藤原:許せてないな。一緒に帰るのやめて、一人で帰るようになったな。でも今思うと、A君は怖かったんやと思うねん。もしA君がやられてたら俺は助けに行けているか分からない。止めに行ったら、今度は自分が標的になるかもしれない。

家族には「いじめられている」と言えなかった

藤原:俺、いじめられていることを親に言ってないの。あれって、言ったら仕返しが怖いとかで言えないわけじゃないねん。

ーー違うんですか?

藤原:俺の場合はそうじゃなかった。俺の家族はみんな仲がいい。だから、この大好きな家族に、俺がいじめられてるって思ってほしくなかったの。学校で、そんな扱い受けてるって知ってほしくなかった。

ーー恥ずかしいから?

藤原:親が辛いやろなと思ったの。自分の息子がいじめられてるなんて。

ーーなんで学校に行き続けられたんですか?

藤原:親に心配かけたくなかったっていうのはある。あとは中3になるときには引っ越すのが決まってたから、耐えられた。いじめられていた時は、楽しいことなんか何もなかった。好きなものもなかったし。中3で奈良に引越してお笑いと空手に出会って、人生が好転したの。

“いじめ”と“いじり”の違いとは

ーー“いじめ”と“いじり”はどう違うと思います?

藤原:我々からすると体を張る“いじり”と“いじめ”は全く違うんだけど、世間からは「いじめを助長している」って言われがちやん。俺は、テレビとかで“いじり”はどんどんやったほうがいいと思ってるのね。

ーー何故ですか?

藤原:皆さんに違いが分かるまでやるんです。“いじり”がなかったら、バラエティにおける面白いことのかなり大きな部分がなくなっちゃうわけよ。例えば、出川哲朗さんってどうなの?って話にもなる。いわゆるそのジャンルを極めた人やんか。

ーーとはいえ”いじめ”と”いじり”の境界線がつかないからこそ、批判をされると思うんです。

藤原:「笑かす」「笑われる」の差ってあるやんか。でもこれって両方、笑わしてるのよね。俺はそこやと思うねん。

ーー笑われている人が傷付いてるかどうかって、外から見ると分からないじゃないですか。無理やり頑張っている人がいるかもしれない。

藤原:それはあるやろな。「俺は“いじられキャラ”じゃないのに」みたいなね。悩んでる人もおるから。

ーーそれはよく聞きますね。

藤原:ほんまに嫌がってたら芸人も顔とかに出るやん。マジのマジの場合はやらない。そこまでしてその子を使って笑い取ろうとは思わない。

あくまで、こっちはプロでプロレスやってんねん。プロレス技を友達同士でやったらあかんやん。怪我すんでって。それと一緒。そんなんやったら、心を傷付けるよ、ってことよ。

だからテレビでやっていることは真似しないでほしい。

ーー私は、いじられることで救われることもあるんです。自分だけ浮いているときに「お前浮いてるじゃん!」って笑いにしてもらう方が。そういうのがなくなっちゃうのも怖いな。

藤原:“いじられてることをおいしいと思える人かどうか”やからね。いじった後ってウケるやんか。それがあかん人もおるけど、俺は番組が終わった後に「おもろかったな!」とは絶対に伝える。

ーー“いじられておいしい”って、なかなか子どもだと思えないかもしれないですね。

藤原:思えない。それって、心の強さやからね。

ーー私も芸人になってから芽生えた感情かもしれないです。「いじってもらってありがとうございます」って心から思って、あとで楽屋挨拶にいくのとか。

いじめの経験が、ネタづくりにも影響を与えた

ーー自分がいじめにあわなかったらやらなかったネタもありますか?

藤原:あるある。キャラクターの悲しさとかを表現できてなかったと思う。

ーー具体的には、どういうものですか?

藤原:俺が演じるバカなチンピラが、目上のアニキにはずっと蹴られてるんだけど、弟分の前ではええかっこするっていうネタがあんねん。下にはええかっこしたい、上には弱いみたいな、そういうひどい目にあってることを、どう面白く返すかっていう。

ーー経験に裏打ちされてるんですね。

藤原:傷つけられる側の気持ちが分かるから、どこか不遇なキャラクターが出てくるネタを書くときにも活きてる。不遇なキャラクターって、笑えたりするやんか。そういう点では、経験していてよかったと思うよ。

自費出版でも、絵本を出したかった理由

ーーどうして絵本を出そうと思ったんですか?

藤原:知り合いと食事してるときに、「藤原は絵本のイメージないから、描いてみたら?」って言われたの。それで、自分の人生を振り返ってテーマを探した時に、いじめの経験があって。当時、俺が逃げられずにいじめられたままやったら、どうなってたやろって思ったの。

この絵本は、いじめられてる子、いじめてる子、それにまつわる人たちに一番響くタイミング、8月末、9月頭に出したいと思って、出版社を通すと出版タイミングが決められてしまうから、クラウドファンディングで出すことにしたの。最悪、本という形にならなくてもいいやと思ってた。Web上にストーリーを全文書いたから、これさえ読んでもらえればいい、って。

ーーこの本では何を伝えたかったんですか?

藤原:「逃げてもいいけど負けたらあかん」ということ。俺は、“逃げる”ことはいいと思う。いじめられたらすぐ逃げてほしいし、親に言って環境変えてもらったほうがいい。だけど、いじめに“逃げっぱなし”でいたらあかんよ、負けたらあかんよって。どこかで立ち上がる人生じゃないといけないよってことを、一番伝えたかった。

“ゲロを吐く”で大爆笑

ーー『ゲロはいちゃったよ』っていうタイトルは独特ですよね。ゲロをはいちゃうシーンがいっぱい出てくる。私が想像する絵本と全然違いました。

藤原:言うても芸人やから、笑えないと嫌やなと思って、いじめられたときのリアクションで、ゲロを吐くっていうのを入れたのね。子どもってそういうので笑うからさ。1000人おる小学校で読み聞かせをしたとき、3年生まで大爆笑やねん、ゲロ吐くくだり。めちゃくちゃ笑うねん。

4年生から6年生は、笑わずに静かに聞いてた。本の軸となっているいじめについて考えてみてくれている。はじめは分からずに笑ってた1年生から3年生も、最後はシーンとなっとった。いいのを描けたと思ってる、自分でも。

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